心がきらめく仏教のことば #21

  1. 仏教

怒りはその場で消化するのが大切!知っておきたいイライラする心との向き合い方

今回のテーマは「怒り」です。
今も昔も、イライラしたり、ムカッとくる怒りの心で、穏やかに過ごせないと悩む人が多いのではないでしょうか。

そのため、書店でも「怒り」をテーマにした本を多く見かけますね。
仏教でも「怒り」の心は煩悩として教えられ、とくに私たちを苦しめる三大煩悩の1つに数えられています。

今回はそんな「怒り」にどう向き合っていったらいいのか、見ていきましょう。

いつも後悔に終わる「怒り」

昔から「怒りは無謀に始まり後悔に終わる」といわれます。
無謀とは、計画なしに、という意味です。

腹を立てるときに、前もって計画している人はいないですね。
今日は穏やかに、イライラせずに接しようと思っていても、だんだんイライラが募ってきて、強い口調や態度になってしまった経験は誰しもあるでしょう。

そして、後から「失敗した~」とか「なんであんな言い方しちゃったんだろ」と後悔で終わることが多いのではないでしょうか。

怒りに任せた言動は、後悔を生みだします。
怒りを静めて冷静になってからでないと、失敗につながることが多くなってしまうでしょう。

ですから怒りの心がおきてきたら、間をあける、その場から離れて落ち着く、などの対処をするのが理想的です。
とにかく冷静になれるよう行動するのが、応急処置として大事です。

怒りに対してグッとこらえて怒りに任せた言動をとらないようにすることを、忍辱(にんにく)といわれます。
仏教では、忍辱は善い行いの一つとして勧められるのです。
辛抱づよくこらえることは、何においても大切なことでしょう。

イライラはうまく消化するのが大切

ですが、こう思われる方も多いと思います。
「がまんしてばかりでは、つらくなってしまうのではないか?」と。

たしかにその通りです。
怒りを一時こらえるのは、とんでもない言動をして後悔するのを防ぐためにも大事なこと。
しかし、怒りが静まった後でしっかり気持ちの整理をつけらず、消化不良になると、いずれ爆発してしまいます。

時々、カッとなってケンカになったときに、昔のことをいろいろひっぱり出してくる人がいます。
今のことでケンカしているのに、「前もこうだった、あの時もこうだった」と言いたくなるのです。
それは結局、怒りがきちんと消化されていないからであり、気持ちの整理ができていないからでしょう。

それでは、いつまでも根にもち続けてずっと自分を苦しめることになります。
ですから、いったん怒りの心が静まった後にうまく消化して、気持ちの整理をすることが大事ではないでしょうか。

怒りがこみ上げる理由

なぜ怒りの心が起きてくるのかがわかると、モヤモヤを消化するのに役立つでしょう。

怒りが起きてくる原因の1つに、「自分が正しい、相手がおかしい」という考え方が挙げられます。
「絶対あの人の言い方はおかしい。もっと言い方ってものがあるでしょう」とか。
「もう最悪、なんで前もって言ってくれないのよ。そしたら、こっちもやりようがあるのにさ」などなど。

相手のやっていること言っていることが、正しいと思えない。
そういうところから怒りがこみあげてきます。

たとえ一時怒りを収めたとしても、「あの人の言動はおかしいのに」という思いが解消されない限り、またちょっとしたことで再燃してしまうでしょう。

相手の事情をよく知る

ですから冷静になったときに考えてもらいたいのは、本当に自分の思いや考えが正しいのか、ということです。

相手にも相手の事情や考えがあります。
しかも事情や思いを聞いてみると、なるほどたしかに自分もその立場や状況なら同じようになるだろうな、と思えたりします。

ダメ出しや非難をされたら、心の中で「こういう事情があったんだ」「こっちの状況も知らないのに、勝手なこといわないでよ」などと思うことはないでしょうか。
自分にもいろいろ事情があるように、相手にもいろいろ事情があるのです。

それがわかってくると、相手の気持ちに一定の理解ができ、怒りも解消されていくことでしょう。
相手の思いや状況をよく知ることで、怒りの長期化を避けるように心がけたいものです。

欲求が満たされないとイライラする

また、怒りは自分の欲求を妨げられた時に出てくるとも言えます。
自分のしたいことを邪魔されたとなれば、邪魔した相手に対して腹が立つでしょう。

たとえば、残しておいたプリンを勝手に食べられてしまったとしたらどうでしょうか。
食べたかったという欲求が妨げられたので、腹が立ちます。
とくに欲求が強ければ強いほど、妨げられた怒りも大きくなるのです。

最近、主人の帰りが遅くて、一緒に食事ができずにイライラしている奥さんがありました。
ある日もご主人が遅く帰ってきて、ついカッとなり、「こんなに遅くまで何していたのよ!」と言ってしまったそうです。
ご主人は仕事なんだから仕方ないだろうとケンカになりました。

奥さんのイライラのもとには、ご主人と一緒に食事が食べたい、一人では寂しいという欲求があったでしょう。
それが満たされずにイライラしていたのです。

怒りではなく、気持ちを伝える

ただ、ご主人にもご主人の事情があります。
思いを「怒り」という形で出してしまうと、「そんなこと言われたって仕事なんだから」という気持ちになるでしょう。

ですから、怒りという形ではなく、欲求という形で伝えられるとよかったのだと思います。
「最近あなたの帰りが遅くて、一緒に食事できなくて寂しい」という気持ちを伝えられれば、ケンカにならなかったかもしれません。
ご主人もなるべく早く帰れるようにしようと具体的な行動に移しやすいでしょう。

もし仮に怒りを出してしまい、ケンカになったとしても、冷静になってから伝えればいいのです。
ご主人に謝ったうえで、「一緒に食事ができなくて寂しかったんだ」と気持ちを伝えれば、怒りの長期化を避けられるのではないでしょうか。

まとめ:怒りはため込まないようにしよう

怒りは煩悩の一つですから、イライラを完全に無くして生きていくことはできません。

しかし、納得のいかないまま怒りをため込んでしまうのは危険です。
本当に取り返しのつかない言動をとってしまうこともあり得るからです。

腹が立ったり、イライラしたときは、ため込まないように心がけましょう。
うまくイライラする気持ちと付き合って、良好な人間関係を築けるといいですね。

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