カフェで楽しむ源氏物語-Genji Monogatari #35

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源氏物語(35)遺されたものから、また新しいドラマが生まれる【横笛の巻、夕霧の巻】

こんにちは。国語教師の常田です。
心のすべてを語れて理解してくれる人がいたら、どんなに満足できるだろうと思いますが、人は孤独ですよね。
窮屈な生き方を強いられるのは、女性だけではなく、男性も同じ、と知らされるところです。

柏木の横笛

多くの人が、将来最も有望視されていた青年であった、柏木の死を惜しみました。

源氏自身も正妻・女三の宮と密通したことへの複雑な思いはあるものの、深く悲しまずにはおれませんでした。
一周忌には格別の志を寄せ、何の事情も知らない柏木の父から、たいそう感謝されます。

源氏が出家した女三の宮の元を訪ねると、よちよち歩きの薫が、筍をかじって食い散らかしています。その可愛らしい様を、「自分と似てなくもない」と思うのでした。

源氏の息子・夕霧は、柏木の親友でもあったため、未亡人となった落葉の宮を世話していました。

ある時、夕霧のもとへ、落葉の宮の母から、柏木遺愛の横笛が贈られてきました。
その夜、夕霧が柏木の笛をひとしきり吹いて、うたた寝していると、夢に柏木が現れるではありませんか。

「笛は子孫に伝えたい」と言うのです。
「それは誰か」と聞こうとした時、しかし夢が覚めてしまいました。

夕霧は、柏木が女三の宮に真剣な恋情を抱いていたことを知っていました。
さらに、薫の顔が柏木と似ていることを不審に思っていたので、事の真相が気になります。

翌日、夕霧は父・光源氏に夢の話をしました。
また、「柏木は臨終、父上にお詫びしなければならないと言っていましたが、何かあったのですか?」とまで問い詰めました。

源氏は「思い出せないな」とはぐらかします。そして、「横笛の件は、口実を設けて薫に譲ろう」と預かりました。
柏木の、父親としての心情が源氏には分かります。
そんな心のうちを鋭く察する夕霧の前で、源氏は顔を背けるしかありませんでした。

落葉の宮

ところで夕霧は父・光源氏と違って堅物で、長年、雲居雁を妻として、大切に守ってきました。
雲居雁は安心しきって、たくさんの子供の世話に追われながら、すっかり所帯染みています。

ところが夕霧は、柏木の亡き後、世話をしてきた未亡人の落葉の宮に恋心を抱き、俄然慕情を募らせていました。恋の経験が少ない分、一途になったのですね。

落葉の宮の元を訪ね、胸中を訴えたまま、それだけで一夜を過ごすことがありました。

ある日、夕霧の帰りを目撃した僧が、男女の逢瀬の帰りと思い込み、落葉の宮の母親に知らせました。
驚いた母親は、真意を確かめようと、震える文字で、夕霧に文を送ります。

しかし文は、嫉妬する雲居雁に奪われてしまったのです。

落葉の宮の母は、夕霧から返事がないことに大きな衝撃を受け、そのまま亡くなってしまいます。

夫の柏木に続き、母親まで失った落葉の宮は、出家を願い、夕霧に堅く心を閉ざしてしまいました。
しかし夕霧は、彼女の邸を修理し、強引に戻すのでした。

紫の上のつぶやき

雲居雁は嫉妬に狂い、派手な夫婦喧嘩になることもありました。

それでも夕霧は、何とかかんとか彼女をなだめて落葉の宮の元へ通います。
そして、やっとやっと無理やり落ち葉の宮と契りを結んだのでした。

この後、律儀な夕霧は、どちらの妻も同じように大切に世話をしていきます。

この出来事の最中、紫の上は
「女はどう生きても窮屈な生き方しかできず、憐れなものね」
と語っています。

落葉の宮や雲居雁だけではなく、自身の人生を顧みてのつぶやきなのでしょうね。

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