カフェで楽しむ源氏物語-Genji Monogatari #22

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源氏物語㉒大人の世界ってほろ苦い…夕霧の恋【少女の巻】

こんにちは。国語教師の常田です。
思春期の頃の甘酸っぱい恋、懐かしく思い出される方もあるでしょう。若いが故の障壁もあり、実ることは少ないですが…。今回は光源氏の息子・夕霧の心に注目してください(⌒‐⌒)

雲居雁

光源氏と亡き正妻・葵の上の一人息子、夕霧は12歳になりました。
元服(成人)して官位に就きましたが、本人も落胆するほどの低い地位からの出発でした。

さらにはこれも父・源氏の意向により、大学で学問をさせられることに。いずれも、光源氏のような大貴族の子弟としては異例のことでした。

“高い家柄に安住していると、没落の憂き目に遭うこともある。若いうちに実力をつけてほしい”の親心からなのですが、それが分からない夕霧は、
「父上はつらい仕打ちをなさる」
と恨みます。

しかし、早くこの状況を打破したいと勉学に励んだので、瞬く間に進級していきました。

そんな夕霧が心の明かりにしていたのは、2歳年上の女性・雲居雁(くもいのかり)です。
夕霧の母、故葵の上と、雲居雁の父、頭中将(とうのちゅうじょう)がきょうだいという従姉弟同士の2人は、そろって祖母・大宮のもとで育てられました。

一族の命運

夕霧と雲居雁は、幼い頃からとても仲良しでした。
やがて、成長して部屋が別々になると、どちらも心が落ち着かなくなります。
いつしか互いに恋心を抱いていたのですね。

周囲も感づいてはいましたが、引き離すのはかわいそう、と知らないふりをしていたのです。

ところがある日、雲居雁の父・頭中将が、女房たちのうわさ話を立ち聞きしてしまいます。
2人の仲が、大人の恋愛にまで深まっている事実に衝撃を受けました。

実は頭中将、今は雲居雁に一族の命運を託そうと考えていました。
娘が中宮(帝の妃のトップ)になり、生んだ男子が次の帝になれば、祖父として権力を握ることができます。
そのため頭中将は、雲居雁の姉を現在の帝に嫁がせたのですが、中宮の座には光源氏の養女が就いたのでした。

ならば今度は雲居雁を、東宮(皇太子)に嫁がせよう…。そう思っていた矢先の熱愛発覚でした。

他の男との恋仲が発覚すれば、東宮妃にはなれません。
しかも相手が、ライバル源氏の息子とは…!

怒り心頭の頭中将は、2人を離すよう、すぐさま周囲に厳しく命じるのでした。

雁の声

事情を知った夕霧は、食事ものどを通らず、夜も眠れません。何かを考えることもできません。

皆が寝静まった頃、雲居雁に会いに行きますが、今までとは違い、彼女の部屋には錠が差してありました。

じっと耳を傾けると、
雲居の雁もわがごとや」(空飛ぶ雁も私のように悲しいのか)
と彼女の独り言が漏れてきます。

しかし、「ここを開けてください」と声を掛けても、返事はありませんでした。

夕霧は歌を詠みます。

さ夜中に 友呼びわたる 雁がねに うたて吹き添う 荻のうわ風
(真夜中に、友を呼びながら飛んでいく雁の声が聞こえる。そこへ悲しみを誘うように吹き加わる荻のうわ風が、愛する人と引き裂かれたわが身にしみることだ)

やがて、雲居雁は父の邸に引き取られることになりました。
出発の日の夕刻、祖母・大宮の計らいもあり、準備の騒ぎに紛れて2人はようやく顔を合わせることができました。

かたみにもの恥ずかしく胸つぶれて、ものも言わで泣きたまう
(2人は互いに何となく恥ずかしく、胸をドキドキさせて、何も言えずに泣くのでした)

「離れても私を恋しいと思ってくださるか?」

夕霧が尋ねると、雲居雁はかわいらしく、小さくうなずくのでした。

独りになった夕霧は、つらくて胸が張り裂けそうです。
祖母に呼ばれても、寝たふりをして応じません。
止めどもなく流れる涙をどうすることもできぬまま、夜を明かしました。

引き裂かれてもなお、雲居雁を想い続ける夕霧のほろ苦い初恋の行方は、どうなるのでしょうか?

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