カフェで楽しむ源氏物語-Genji Monogatari #14

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源氏物語⑭【絵合の巻、松風の巻】我が世の春、すべて思いのままだけれど…

こんにちは。国語教師の常田です。
光源氏は、持てるすべてを活かして、地位や権力を求めていきます。
でも、なぜか満たされない。望みが叶っても、不安な心はなくならなかったのです。

明石の姫

源氏が都に戻って2年。その間に、明石の地に残してきた妻・明石の君は女の子を生みました。
初めての娘に、光源氏はもう躍り上がらんばかりの喜びようです。

当時の貴族は男子よりも女子を望みました。
娘が帝の妃となって男の子を生み、その子が帝になれば、祖父として最高の権力を手に入れることができるからです。

源氏は明石の君に何度も上京を促しますが、「田舎育ちの自分が都の人々と交わっていけるのか」と彼女は悩みます。
しかし、娘をこのまま鄙の地(都から離れた土地)に埋もれさせるのも、残念でなりません。

両親の勧めもあり、明石の君は都に近い大堰(おおい)に移ることにしました。

源氏はすぐにでも会いに行きたい気持ちです。が、最も愛し信頼している紫の上に対して、出かける口実が見つかりません。

明石の君は源氏の訪れを待ちます。
都に近いだけによけい寂しく、松風に合わせて琴をかき鳴らし、心を慰めるのでした。

やがて源氏は意を決し、すぐに嘘と分かる理由を並べて大堰に出掛けます。

嫉妬に苦しむ紫の上からきつい皮肉を言われながらも、ようやく明石の君との再会を果たしました。

3歳の娘(明石の姫)は想像以上に、愛らしい。

うち笑みたる顔の何心(いずごころ)なきが、愛敬づきにおいたるを、いみじうろうたしと思(おぼ)す

(明石の姫の、にっこりほほえむ表情があどけなく、愛嬌があって色つやのよいのが、光源氏にはかわいくてかわいくてたまらない)

邸に戻った源氏を迎える紫の上は、案の定、不機嫌です。

源氏は「明石の姫を養女として育てないか」と相談を持ちかけました。

実は、紫の上は大変な子ども好きでした。
ぜひ、自分の手で育てたいと受け入れます。

光源氏は、明石の君の心中を慮ると胸が痛みますが、身分の高い紫の上の養女になることで、姫の将来は約束されるのでした。

絵合(えあわせ)

さて、亡き六条御息所の娘は、源氏の養女となり、冷泉帝の妃になりました。
梅壺女御です。

13歳の帝にとって、9歳年上の梅壺は立派なお姉さん。どちらかといえば、同じ年頃の弘徽殿女御とよく遊び、睦んでいました。
弘徽殿女御は、源氏の親友・頭中将の娘です。

しかし、絵画の好きな帝は、次第に絵の上手な梅壺に関心を寄せていきます。

頭中将は、帝の心を再びわが娘に向けさせようと、優秀な絵師に立派な物語絵を作らせます。
源氏も対抗し、秘蔵の絵を梅壺に送りました。

2人のどちらが帝の寵愛を得るか。これは一族の盛衰をかけた、父親たちの覇権争いなのです。

うららかな春の夕べ、双方の絵を持ち寄り、ついに帝の前で絵合の勝負が行われました。

いずれもいずれも優劣は判じ難いものばかりでした。

ところが最後、梅壺側から、源氏の須磨の絵日記が出され、場の雰囲気が一変したのです。
源氏の侘しい生活の様子が思い起こされ、皆の涙を誘いました。

梅壺側が勝利を収めます。

 

源氏は今、全てが思いどおりで満ち足りた気分です。

でも、
なお常なきものに世を思(おぼ)して、今すこしおとなびおわしますと見たてまつりて、なお世を背きなん
(やはり無常の世の中だと思い、もう少し帝の成長を見届けてから出家しよう)
と深く考えているようでした。

人は山の頂上に登ることはできても、そこに長くとどまることはできません。

この栄華栄耀もいつまで続くのか。
望みが叶えば叶うほど、感ぜずにいられない不安な心…。

仏道一筋求めたいと、源氏は閑静な山里に仏堂を建立しました。

しかし、まぶたに浮かぶ子どもたちの笑顔に、決意は鈍ってしまうのでした。

 

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