カフェで楽しむ源氏物語-Genji Monogatari #15

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【源氏物語】紫の上の苦衷【須磨の巻、明石の巻、澪標の巻、松風の巻】

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こんにちは。国語教師の常田です。
明治時代、文部省が源氏物語を教科書に採用したのが【若紫の巻】でした。
「雀の子を犬君が逃がしつる」と、涙目をこすりながら走ってくる、あの場面ですね。光源氏の正妻格として添うていく理想的な女性であり、この場面も教育上問題がないと(⌒‐⌒)
今回は、そんな紫の上の、のちのちの心に寄り添ってみてください。

理想の女性・紫の上

最高の権力を握り、我が世の春を極めた光源氏を、晩年まで支えた妻が、紫の上(むらさきのうえ)です。
彼女は『源氏物語』の登場人物の中でも、特に男性に人気があります。

源氏の教育方針に添って育てられ、教養も素直さも細やかさも身に付けた、美しい女人です。
しかも会うたび、新鮮な魅力を放っているのですから、まさに“理想の女性ナンバーワン”。

しかしそんな彼女も、嫉妬にはたいそう苦しめられました。

かつて源氏がスキャンダルを起こし、謹慎のために都を離れる時、紫の上はこう詠みました。

惜しからぬ 命にかえて 目の前の別れをしばし とどめてしがな
(あなたのためなら惜しくない私の命に代えても、この目の前の別れをしばしとどめたい)

源氏の愛用した琴や、よく座ってもたれていた柱を見ては、嘆き悲しんでいたのです。

源氏もまた、「道すがら面影につとそいて胸も塞がりながら」(道中も、紫の上がぴったりと身に寄り添っているようで、胸ふさがる思いのまま)流離の地に赴きました。

紫の上とは、他の誰よりもまめに手紙のやり取りをしていました。

ところがやがて、源氏は明石の君と結ばれたのです。

信じていた夫・光源氏の心変わり

彼女の父親の熱烈な勧めがきっかけでしたが、源氏自身、明石の君の奥ゆかさに心引かれたのも事実でした。
すぐに彼は、懇ろな手紙を紫の上に書きます。

「かつて心にもない浮気で、あなたに嫌な思いをさせたことが甦っても胸が痛いのに、また、奇妙なはかない夢を見てしまいました」

源氏としては、紫の上を最も大切に思えばこその告白でした。
彼女がこの話を人伝えに聞く前に、自ら隠さず話すほうがよい、と考えたのです。
しかし、いずれにしても、紫の上がショックを受けないはずがありません。

「我はまたなくこそ悲しと思い嘆きしか、すさびにても心を分けたまいけんよ」(私は都でまたとなく悲しい日々を送っているというのに、源氏様は一時の気まぐれにせよ、他の女にも情けをかけていたなんて)

彼女は次の歌を詠みました。

うらなくも 思いけるかな 契りしを 松より浪は 越えじものぞと

(私は何の疑いもなく信じ切っていたのですよ。固い約束したのですから、末の松山を波が越えないように心変わりはないものと)

光源氏が京に戻ってきたあと、明石の君は女の子を生みました。
その子が3歳になる頃には、母娘で明石から都の近くに移り住んできます。

源氏は、ウソと丸分かりの口実で2人に会いに出掛けていき、帰っても見え透いた言い訳ばかり。
紫の上は嫉妬を表に出すまいとしますが、どうしても顔がこわばります。

紫の上のかき乱す光源氏の言葉

そんな彼女の心を、源氏の言葉がますますかき乱します。

さもおわせなんと思うあたりには心もとなくて、思いの外に口惜しくなん」(生んでもらいたい方にはその気配もなく、意外にもよそで子が生まれたとは残念なことだ)

紫の上こそ、子に恵まれない寂しさにずっと耐えてきたのに…。

さらに源氏は、「見せたてまつらん。憎みたまうなよ」(そのうち、あなたにその子をお見せしよう。憎みなさるなよ)と紫の上が相手の母娘を憎悪する、と決めてかかって言うのです。

源氏は「身分もあなたと比較にならない相手と比べて妬むものではない。私は私と自信を持ちなさい」とも言うのです。

紫の上は涙に濡れた袖で、顔をそっと隠します。

“私はあなただけを深く愛している。この気持ちに応えてほしい。それだけのことなのに…”

けれども、源氏に”嫉妬深い女”と思われたくない気持ちもあったのでしょう。
この先、光源氏の色好みの言動に、幾度となく苦しめられながらも耐え忍んでいきます。

 

源氏物語全体のあらすじはこちら

源氏物語の全体像が知りたいという方は、こちらの記事をお読みください。

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