新連載「ブッダの処方箋」がスタート! この連載では、HSPや心が疲れやすい方へ、毎日を心地よく生きるためのブッダの智恵をお伝えします。自分の心との向き合い方を一緒に学んでいきましょう✨
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その“疲れ”は、あなたの心のせいじゃない
こんにちは、仏教講師の國見卓人です。
皆さんは「生きてるだけで疲れるな……」「なんだか生きづらいな……」と感じることはありませんか?
その疲れの正体は、あなたの心が弱いからでも、努力が足りないからでもありません。
実は、脳の仕組みと心の扱い方を知らないだけかもしれません。
生まれ持った脳の気質「HSP」
まず知っていただきたいのが、脳の仕組みについてです。
世の中には生まれつき、刺激をキャッチするセンサーがひといちばい鋭いという方があります。
最近ではHSP(Highly Sensitive Person)と呼びますが、これは性格の問題ではなく脳の神経系の特徴。つまり、生まれ持った気質なんです。
例えば、近くに怒っている人がいると自分のことのように苦しくなる、相手のわずかな表情の変化に気づいて、つい先回りして気を使いすぎてしまう。
これは、あなたが人より多くの情報をキャッチして、それを深く処理してしまう仕組みを持っているからなんです。
心が疲れやすい人こそ仏教の教え
実は私自身がまさにそうでした。
ずっと、「自分はなぜこんなに些細なことで疲れるんだろう」と自分を責めていました。
でもこれが脳の仕組み、つまり気質だったと分かったとき、ふっと肩の荷がおりました。
この感じ方そのものは、変えようと思って変えられるものではないんですね。
では、一生このまま疲れ続けなければいけないのか、と言うとそうではありません。
ここで大事になってくるのが2つ目の心の扱い方です。
入ってくる情報や刺激をなくすことはできませんが、それをどう受け止めるか。
実は、「自分の心を深く見つめなさい」と教え進めていかれたのが仏教、お釈迦さまの教えです。
お釈迦さまの教えが必要な3つの理由
今回はなぜ今、心が疲れやすい方にこそお釈迦さまの智恵が必要なのか、3つの理由をお話しします。
- 再現性がある
- 周りではなく、自分を変える
- お釈迦さまは、人の心にとても詳しい
①再現性がある
まず、再現性があるということについてです。
お釈迦さまは、自分だけが持っている特殊な力で助けるという方法を取らない方です。
つまり、よくありがちな“奇跡”を起こして助けるのではなく、いつの時代も変わらない道理・真理を説くことで、人々を幸せに導かれました。
だから、その道理・真理を聞くことで、リアルタイムでお釈迦さまに会うことができなくても、インドではなく日本でも全く問題ありません。
※お釈迦さまはインドでお生まれになられました。(編集者注)
②周りではなく、自分を変える
次に、周りではなく、自分を変えるということですが、周囲の理解や手助けを必要とする場合、そもそもお願いできない、お願いできても相手次第という場合、実現するのが難しいことがあります。
しかし、自分自身を変える方法が示されていますので、周りの人の都合は関係ありません。
③お釈迦さまは、人の心にとても詳しい
最後に、人間の心の仕組みにとても詳しいというのは、私たちは正しいことであれば何でも受け入れられるわけではありません。
お釈迦さまは、その点、人の心の仕組みにとても詳しいので、「こんなことを言ったらこう思うだろうな」と先回りして、私たちに寄り添ったアドバイスをしてくれています。
【物語】我が子を亡くした女性ゴータミーと「ケシの実」の教え
これらのことがよくわかる例をお話しします。
お釈迦さまがおられた当時、キサーゴータミーという女性がいました。
ゴータミーの周りには不幸が続き、結婚した相手も子供が生まれる前に亡くなったのだそうです。
たった1人の肉親であるその我が子を、それはそれは大切に育てていました。
ところが、その最愛の我が子までもがある日亡くなってしまったのです。
とても現実を受け入れられないゴータミーは、もうしばらくしたらまた元気になる、薬を探さなければと子供の亡骸を抱えて村中を歩き、会う人会う人に尋ねます。
「子供が急に動かなくなったんです。どなたか治す方法を知りませんか?」
どれだけ聞いても、誰の目にももう子供が亡くなっていることは明らかでした。
中には「もうその子は死んでしまっているから無理だよ」という人もありましたが、全く聞く耳を持ちません。
そんな中、ある人が「ひょっとすると、お釈迦さまならばなんとかしてくれるんじゃないか」と言ってくれました。
そしてゴータミーはお釈迦さまのところを尋ねたのです。
お会いするや「この子を元に戻す薬を知りませんか」と尋ねます。
さて、お釈迦さまはこの時どのように答えられたでしょうか?
「あなたの気持ちはよくわかります。その子を治すにはケシの実が必要です。これから町に行って貰ってきなさい」
ちなみにケシの実というのは、当時のインドではどの家にもあるものでした。
「そんな簡単なことでいいんですか?」とゴータミーは聞き返します。
お釈迦さまは頷いて、1つだけ付け加えられました。
「ただし、今まで1人も死んだ人のなかった家から貰ってこなければなりません」
それを聞いたゴータミーは、町に向かってすぐに駆け出しました。
一軒一軒尋ねるゴータミーに、心よくケシの実を出してくれる家ばかりでしたが、念のため確認をすると、
「去年おじいさんが死にました」
「先日夫を亡くしたばかりです」
「以前に子供を亡くしました」と死者を出した家ばかりでした。
それでもゴータミーは歩き回りました。
中には「うちは代々たくさんの人が死んでいる。よく考えてみなさい。今生きている人よりもこれまで死んだ人の方が多いでしょう」という人もありました。
どれだけ歩いても、一向にケシの実が手に入らないまま夜になってしまいました。
結局、ケシの実が得られずに、お釈迦さまの元に戻ったゴータミーは
「お釈迦さま、死者のいない家はどこにもありませんでした。私の子供も死んだことがようやく知らされました」と、お釈迦さまのお弟子になり、仏道を求めるようになったと言われています。
これはあくまで、キサーゴータミーという1人の女性の身の上に起きたことでありますが、ここから分かることは実はたくさんあります。
仏教に“奇跡”はない
先ほど1つ目の特徴として、奇跡を行っていないとあげましたが、死んだ子供を生き返らせるということは最後までありませんでした。
もし生き返らせることができれば、確かにゴータミーを救うことができたでしょうが、さすがにそれはお釈迦さまでも無理です。
あるいは「自分にはできなくても、ものすごい力のある偉い方がおられるから、一緒にお祈りしたら生き返るよ、願いが叶うよ」ということもお釈迦さまはされていません。
この場合、子供が死んでしまってもうこの世にはいない。この事実をゴータミーが受け入れられていない。そこに苦しみが生じています。
受け入れていないどころか、治ると信じて治そうとしている。
その先にゴータミーの願いが叶うということはありません。
変えるのは「現実の捉え方」
2つ目の特徴で「周りではなく自分を変える」とあげたのが、この場合で言えばゴータミー自身の現実の捉え方を変えたということです。
死は避けられるものではないこと。どんな人にも苦しみがやってくること。それが今、自分に起きたこと。
これらをありのままに見つめることができたことで、ゴータミーの苦しみは和らいでいきました。
最後は自分で気づくしかない
ここで3つ目にあげた、人の心にとても詳しいというのが重要になってきます。
確かに事実をありのままに受け入れたら楽にはなれるでしょう。
しかし、私たちは事実であれば何でも受け入れられるというわけではありません。
疑う余地のない事実であっても、感情が受け付けない場合があります。
ゴータミーに「もう生き返ることはないんだよ」と、いきなり言っても無駄なことは、お釈迦さまのところに来るまでに、何人もの人がやってみて明らかです。
他人に言われても受け付けられないのであれば、自分自身で発見し、気づかせるよりありません。
だから、ゴータミーに会った最初の対応で、お釈迦さまは「治してあげよう」と言われています。
そこから一軒一軒家を回って、人の死とはどういうことかを尋ねさせたのです。
しかもそうとは言わずに、ケシの実をもらう家の条件として確認させています。
お釈迦さまのことを心理学者・カウンセラーのようだと言う人があるのはこうしたところからです。
仏教はあなた専用の処方箋——「対機説法」と「応病与薬」
改めてポイントをまとめていきます。
仏教では何でも叶えてくれる、ものすごい存在は登場しません。
1人1人に起きているトラブルは、それぞれが向き合って対処していくように勧められます。
その向き合い方と、対処の仕方を相手が受け入れられる形で示し、寄り添って、導いてくれるのがお釈迦さまでした。
仏教に「対機説法」という言葉があります。
機とは仏教で人のこと。機に対して法を説く。
「応病与薬」とも言われます。病気に応じた薬を渡すということです。
何にでも効く薬があって、とにかくこれを飲みなさいと、誰彼構わず配っていたというのではないということです。
その時に大事なのは、ちょうどお医者さんで言うと「診察」です。
お釈迦さまは、人間の心にとても詳しい方でした。
これは現代の心理学、あるいは人工知能の開発に携わっている人の中に、仏典を研究している人があるということからも分かります。
私たちは、正しいことであれば、何でも素直に理解するというわけではありません。
正しいことであるために、受け入れられないということもあります。
「こんなことを言ったら、この人はどう反応するだろうか」
そうやって、1人1人に寄り添ったアドバイスを記録していった「お経」は、本で言えば7000冊を超える膨大なものになりました。
実は、人間というものは時代が変わっても、本質の部分ではそう変わってはいません。
ですから、お経を読んでいくと、現代の私たちにも通じる、時には、そのままの苦しみをお釈迦さまが導かれた事例もあります。
とても繊細なHSPの方にはなおさら、心の専門家であるお釈迦さまの優しいアドバイスがとても合います。
まとめ
・道理(真理)が分からないことで生きづらくなります。
・お釈迦さまは奇跡を起こして人々を救うのではなく、道理を教え、それを聞くことを勧められました。
・しかも、私たちが受け取りやすいよう心が熟すまで、整えて導かれました。
これからも色々と紹介していきます。ありがとうございました。
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