日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #139

  1. 人生

【イソップ物語】商売繁盛の神像を売る男〜苦しみ、不安が続く時には要注意

猛暑で熱中症のリスクも上がる中、新型コロナウイルスの第7波や、他の感染症の流行など、心配なことが続いています。
ふだんなら気にも留めないことでも、不安な時には気になり、迷い、悩みが大きくなることがありますよね。
そんな心境は昔も今も変わらないようです。
こんなイソップ物語の一話がありました。
木村耕一さんの意訳でどうぞ。

商売繁盛の神像を売る男

ある男が、ギリシャ神話に出てくる神の像を木で彫って、市場へ売りに行きました。

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ところが、朝から一つも売れません。

そこで男は、大きな声で呼びかけました。

「商売繁盛の神様はいりませんか。この神様を持っていると、必ずお金が儲かりますよ。
どんな病気が流行しても、この神様さえ持っていれば、感染することはありませんよ。
ものすごいご利益のある神様は、いりませんか」

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すると、一人の通行人が立ち止まって尋ねました。

「本当に、その神様に、すごいご利益があるのかい?」

店の男は、ここぞとばかりに答えます。

「もちろんですよ! 必ず、商売が繁盛します。お金が儲かるだけでなく、幸せがたくさんやってきますよ」

通行人は、笑い出しました。

「それほどご利益がある神様を、なぜ、他人に売るんだい?
自分がご利益にあずかればいいんじゃないの。
さっきから見ていると、おまえの店には、さっぱり客が来ないね。朝から、いくつ売れたの?
それでも、商売繁盛のご利益があるといえるのかな」

明らかな矛盾を指摘されて、神の像を売っていた男は、一言も返事ができませんでした。

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人間は、苦しいことが続いたり、不安が高まったりすると、物事を冷静に判断する力を失ってしまいます。

「これを買えば、お金が儲かりますよ」
「これを持っていれば、病気にかかりませんよ」

こんな話は、ほとんどウソだと思っていいのです。

くれぐれも注意していきましょう。

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(『月刊なぜ生きる』 令和2年7月号「イソップ物語 人生にこんな場面ありませんか?」 文 木村耕一 絵 黒澤葵 より)

苦しみ、不安が続く時には要注意

木村耕一さん、ありがとうございました。

イソップ物語が書かれた2500年前も、今も、人の心は変わらないなと思いました。

不安な時ほど、昔から読み継がれている古典に親しむと、いつもの自分に戻れそうですね。