遅刻しそうなのに、全然あせっている様子がない。何度も言わないと、宿題をやらない。…そしてまた忘れ物!!
子どもの言動は、毎日イライラすることばかりですよね。
親が言わなくても、自分のことは自分でできるようになってほしいと思いませんか?
アドラー心理学の「課題の分離」を取り入れることで、親のイライラが解消され、子どもも自主的に行動する姿勢が身につきます。
対人関係を一変させる、アドラー心理学の方法
「課題の分離」は、アドラー心理学から出た言葉で、
- 自分に起きる結果、自分でコントロールできる領域を自分の課題
- 他者に起きる結果、他者がコントロールする領域を他者の課題
とします。
まずは「これは誰の課題なのか?」を考えましょう。そして課題の分離をしましょう。どこまでが自分の課題で、どこからが他者の課題なのか、冷静に線引きするのです。
そして他者の課題には介入せず、自分の課題には誰ひとりとして介入させない。
これは具体的で、なおかつ対人関係の悩みを一変させる可能性を秘めた、アドラー心理学ならではの画期的な視点になります。
(岸見 一郎、古賀 史健著 『嫌われる勇気』より)
この線引きが適切にできるようになると、子育て・人間関係がとても楽になり、仕事でのコミュニケーションもスムーズになります。
遅刻しそうな長男に、課題の分離をしてみたら…
わが家の事例
義母が泊まりに来ていました。
朝食をとった後、次男はすぐに出発しましたが、長男は部屋にこもって出て来ない…。
待てども待てども出てこず、遅刻ギリギリ(もしかしたらOUT)に出て行きました。
それを見た義母から、
「長男はもっとしっかりした子だと思ってた。長男の印象が変わった」と言われました。
確かに以前に泊まりに来たときは、もっと早く準備ができていました。
けれども現在は時間配分が変わり、時に遅刻ギリギリになることもあります。
この事例について、まずは「課題の分離」をします。
- 長男の課題・・・学校の準備をし、始業前までに登校すること。
- 母である私の課題・・・時間までに朝食の準備をすること。
- 義母の課題・・・特になし。別居の息子家族の日常に何を思うのも言うのも、義母の課題。
以下は すべては長男の行為によって起き、結果も長男が受ける、長男の課題です。
- 宿題をせずに登校し、叱られるか、宿題をこなし学力をつけ、心の余裕をもって登校するかどうか。
- 忘れ物をして学校で困るか、持ち物を点検して登校し、学校で快適に過ごせるかどうか。
- 遅刻をして朝から残念な気持ちで授業に取り組むのか、時間に余裕を持って登校し、落ち着いた気持ちで授業に臨めるかどうか。
課題の分離をする前の私
- 遅刻ギリギリになりそうな長男の様子を見て、私自身は常にイライラしていた。
- そして、長男に何度も何度も声をかけて(叱りつけて)いた。
- 子どもの様子によっては車で送っていた。
- 義母にそんなことを言われようものなら、相当心が揺れて、ダメージを受けていた。
課題の分離をした後、どう変わったか
- 長男が遅刻しそうな様子でも、いちいちイライラしない。
- 様子を見て声をかけることはするが、叱りつけない。
- 車で送ってほしいそぶりを見せても送らない。
- お義母さんが私と長男をどう思うかは、お義母さんの課題。私の課題ではないので、気にならない。
総じて私は、朝とても穏やかな気持ちで過ごせるようになりました。
一見冷たいようですが、課題を分離することで、子どもも「遅刻せずに学校に行くことは自分の課題」だと認識します。
そして、自分はどうしたいのか、遅刻しないで学校に行くにはどのように段取りすればいいのか、わが事として真剣に考えるようになります。
逆に、子どもの課題を親が自分の課題としてしまうと、子どもはいつまでも自分事として取り組まなくてすむ状況になります。
結果、親はいつまでも子どもの行為にイライラさせられ、子どもも自主性が育まれにくい環境で育つことになります。
子どもを信じて干渉しない「無言の行」のすすめ
では課題が分離できたら、親は何をすればいいのでしょう?
それは、「無言の行」です。
子どもの課題には親が口を出さない。干渉しない。
ともすると、子どもの未熟でできていないところばかりが目につき、ついつい口を出したくなります。
しかし、「この子にはできる力がある」と信じて、ぐっとこらえていきます。
◆忍耐して、子どものペースに合わせよう
では、子どもの、自主性を取り戻させるにはどうすればいいでしょうか。
もし、指示、命令が多すぎたとするなら、その逆をすればいいことになります。平井信義氏は、「無言の行」と言っています。
親から、「これからは、一切、口を出したり、手を貸したりしないから、自分のことは自分でやってね」と宣言し、一切の口出し、手出しをしないようにするのです。そうすると、子どもも戸惑いますし、親も、言わないでいるのは、とてもつらいです。
そのうちに、今までちゃんとやっていたことも、やらなくなります。ますます言いたくなります。そこを、ぐっとこらえるのです。
これはたいへん苦しい、忍耐のいることなので、「行」といわれるのです。
そうしてしばらく何も言わないでいると、子どもは自分で判断してやるようになります。それでも、失敗したり、時間がかかったりします。でも、そのうちに、子どもも学習して、少しずつ、うまくやるようになります。
そのころには、子どもの表情は、以前よりずっと、生き生きとしているはずです。たとえ時々は失敗しても、自分の頭で考え、自分でやったこと以上に自信になることはないからです。これが、本当の意味での、「生きる力」だと思うのです。(明橋大二著『子育てハッピーアドバイス ようこそ初孫の巻』より)
この「無言の行」を提唱されている平井氏は、別の著書で、1カ月間ではほとんど変化が見えない、3カ月前後で自発的な行動が多くなり、6カ月で任せようという気になる、とおっしゃっています。
すぐには芽が出ない、けれども継続して続ける。まさに忍耐の行ですね。
課題の分離・無言の行を続けたことで、朝や宿題に関するイライラが解消され、子どもも自主的に動くようになった、という声もたくさん聞きます。
自分で考え、行動を変えられる「省察タイム」
課題の分離、無言の行にさらにもう一つコーチングの要素をプラスするならば、省察タイムをとることも有効です。
「省察」とは、自分のことをかえりみて考えること(大辞林)
事が起きたときではなく、子どもがゆっくり考えを巡らせられる環境で、「〇〇(名前)、朝の状況、どう思ってる?」などと聞いてみてください。
子どもだって遅刻したくないはず。この子には遅刻しないで登校できる力がある、と信じ、ゆっくり話を聞いてやる。
そうすると、親の目線からは見えていなかった本音や、今後どうしたいかなど、今までにない言葉が聞けるかもしれません。
イライラを減らしたい、子どもの自主性を育みたい親御さん、時間をかけて、ぜひ課題の分離・無言の行、そして時には省察タイムを取ってみてくださいね。
きっと3カ月後、半年後には、まったく違うお子さんの姿が見られますよ。