Dr.明橋のHSP大全 #21

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生きづらさを抱える人へ。HSPだからこそ変えていけること

HSP(ひといちばい敏感な人)の基本的な知識から、最新の議論までをご紹介する、精神科医・明橋大二先生の「HSP大全」第21回(最終回)です。
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コミュニケーションに不安を感じたときこそチャンス

愛着スタイルが不安定型な人にとって、何よりも大切なことは、これから安定型に変えることです。カウンセラーは大抵、こうアドバイスします。

「とりあえず、相手を信じてみる。それが難しければ信じたフリから始めましょう」。

しかし、これはHSPには難しいです。相手の感情に敏感で受け止めの深いHSPは、相手が不機嫌だと自分が悪いと思ったり、嫌われていると思い込みがちだったりします

長い間、そう想定しておくことで、裏切られても傷つかないように危険を回避してきたのですから、無理もありません。

それなのに、今、また危険を察知している(予感している)のを無視して、相手を信じた「フリ」をしなさいと言われても難しいのです。

「自分はどんな人間か」「他者は自分をどう思うか」。無意識にまで浸透している自己否定のパターンがあるなら、意識してひとつずつ打ち消して変えていかなければなりません。

相手とのコミュニケーションで、不安を感じる瞬間がそのチャンスです。チャンスは毎日たくさんあります。

最近、相手とのコミュニケーションで不安を感じたのはどんなときですか?まずは、ひとつ考えてみましょう。

あなたの例:(       )

挨拶を返されないだけで、悪い想像がふくらみませんか?

例えば不安を感じたのが、「今朝、あいさつをしたときに相手が目を合わせてくれなかった」だったとしましょう。

あなたはとっさに、「嫌われたかな?」「もしかしたら、これから毎日、無視されるようになるかも」「あの人だけでない、他の人もきっと同じように私を避けるようになる」「(恋人なら)近々別れるのかな」「(雇用主なら)そのうち解雇/冷遇される」と心の中で想像します。

すると、次にその相手と顔を会わせるだけで緊張したり、なんとか好かれようと愛嬌を振りまいたり、案外優しくされて胸を撫でおろしたりして、相手の態度に一喜一憂し疲れてきたのではないでしょうか。

これからは、不安定な心が感じとったものを鵜呑みにせず、こう立ち止まって考えてみましょう

生きづらさを抱える人へ。HSPだからこそ変えていけることの画像1

相手が微妙な表情をした原因は、本当に自分にありますか?

そう思う根拠は具体的に何でしょうか?

誰にでも「たまたま」不機嫌な日はあります。

優しいあなたとは違って「体調が悪い」「お腹が空いている」だけで負のオーラを露骨に出す人だっているのです。

仮に嫌われたとして、だから一体何だというのでしょう。

あなたの身にどのような現実的な問題が生じますか?

本当に不都合ですか?

そこまで気遣って好かれたいと思うのはなぜですか?

仮にあなたが悪かった(相手に迷惑をかけていた)としたら、それは具体的に何ですか?

改善できそうですか?

思い切って謝ってみると「それは全然問題なかった」ことを教えてもらえるかもしれません。

腹を割った会話ができて、相手もあなたを理解してくれるようになります。

愛着の問題がその不安を引き起こしていたり、大きく見せたりしていませんか?

こう捉え直すと、少しずつ安心できるのではないでしょうか。

不安を感じたときにこそ、他人を信じる習慣を少しずつ身につけましょう。

次のように、それぞれの愛着スタイルに応じた方法もあります。

【とらわれ型】相手との距離を置き「自分」にフォーカスする

とらわれ型なら、相手を信じたら少し距離をとってみるといいと言われます。

相手の顔色をうかがうのをやめて、自分の好きなことをして過ごしたらいいでしょう。

休日ぐらい、家族のために部屋の掃除をして過ごすのではなく、外に遊びに行くとすっきりします。

たまには自分の欲しいものを買ったり、夕食を作るのをサボったりしてもいいのです。優雅に外食するのも悪くはないでしょう。

あなたが幸せそうなほうが、家族も嬉しいはずです

美味しいものを食べさせてもらったほうが、また美味しい食事を作れるようになります。

職場の昼休みは、同僚に合わせようと神経をすり減らして過ごしたり、責任を感じて仕事を続けてしまったりするのではなく、たっぷり1時間、「自分のため」に本でも読んでリラックスしたらいいでしょう。

近くの喫茶店に行き、仕事と関係のない店主やお客さんたちと話したりしても視野が広がるかもしれません。

そんなことをしている間に「大変な事態になる」「それは自分のせいだ」「怒られてしまう」と心配するかもしれませんが、それは普通にはないことです。

あるいは、「誰かが代わりに対応してくれた」とか、「着信履歴が残っている」「再送のメールが届いている」「どこに行ってたの?」と聞かれるような事件(あなたにとっては)が勃発したとしても、仕事中には当然ありうることです。

それで取り返しがつかないようなことには、大抵なりません。あなたが戻ってから対応すれば、何とでもなるはずです。

「こうしておけば大丈夫」「他人を頼ってもよかった」と安心できる経験を少しずつ増やしていきましょう

LINEの既読は気にしない。仕事の返信は催促していい。

メールやLINEでは、相手の返信や既読の有無を「怒らせたかな?」「構ってくれない」と不安いっぱい待つのではなく、相手からの連絡やお誘いが来てから、恋人がいたことを思い出して、待ち合せの場所を考えるくらいで丁度いいかもしれません。

仕事では反対に、相手に投げたものをHSPは放置したり、忘れたりできません。

気になって仕方がないのに、気を遣い過ぎて「督促していいのか?」と悩んでしまうこともあります。

不安になるくらいなら我慢せず、堂々と催促したほうがいいのです。ビジネス上では、悪いのは不安になってしまうあなたではなく、あなた(取引先)を不安にさせる相手の働き方です。

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意識を他人に向けるのではなく、自分に向けて自分のための時間を過ごすようにすれば、あなたの魅力は間違いなく増加していきます。

冷たかったかもしれない恋人は、あなたの虜となるでしょう。配偶者は感謝してくれるようになります。

仕事なら、せっかくのHSPの才能を「誰かの言いなり」や「なだめ役」「補佐」として100%費やしてしまわないようにしましょう。

そうすれば、本来のHSPらしい創造力で課題の本質を見抜き、慎重に企画を構想し、絶妙なバランス感覚で実行できる貴重な人材になれるのです。

【回避型】拒絶を恐れず、良い環境や相手に近づいていく

回避型なら、意識して自分から相手に近づき、良い環境を選ぶようにするといいでしょう。

これまでは、無意識に不安定な関係や、幸せとはいえない環境を選んできたかもしれません。

自己都合でしかあなたを大切にしてくれない、理不尽な上司(職場)の元に居続けたのはなぜですか?

もっといい人がいるかもしれないのに、そうでない関係に甘んじるのはなぜですか?

本当のあなたは、決して嫌なことをされたり、誰かに都合よく利用されたりして当然の人間ではないのです。

それなのに、「やりがいだってある」「仕方ない」と、そこに居留まるのはなぜですか?

あなたが恐れているのは、変化ですか?それとも、自分らしくあろうとしたときに、誰かに拒絶されること、否定されることでしょうか。

もし、過去からずっと否定されるのを恐れてきたなら、これからは、少々危険を冒したとしても勇気を出して安全な場所に行き、そこで温かい関係を増やしていかなければなりません。

必要なのは、あなたの熱い求めにも、冷たい態度にも屈しないで接してくれる人です。

その人は、後からあなたがそういう温かい関係を増やすときに支えになってくれるでしょう。

本当は辛いのに、悲しみや怒りを押し殺していませんか?

こう話しても、回避型の中には「今は忙しい」「充実している」「否定的な感覚はない」と、問題そのものを回避する人がいます。

しかし、問題を抱えている証拠に、どこか調子が悪いのです。特にHSPなら、人一倍ストレスや怖れ・トラウマを味わい、刺激の影響を心身に受けます。

心身が刺激に溢れたとき、本当は辛いのに、感覚(感情)と自分とを切り離しがちです。

他人のせいで刺激がオーバーしているのに、HSPは自分の感じていることを無視して、「誰だってストレスのない人はないんだから」「こんなことで弱音を吐くような自分じゃない」と、自分の気持ちに蓋をして、平気を装うのです。

もし、いつもどこか心身の調子が悪いとすれば、そうやって自分を守ろうと感受性を押し殺してきた結果もしれません。

自分の感情を知るのが難しいと感じるなら、まずは「どこか痛むところはないか」「疲れていないか」「変なストレスがないか」身体の感覚に目を向けるところから始めてもいいかもしれません。

そのとき、自分の手で身体を触ってみるといいでしょう。

素直で弱い自分を受け容れ、親しい関係に踏み込むためには、不安定な愛着のせいでどれほど辛い人生を歩んでしまったのか、きちんと嘆き、悲しみ、怒ることが必要です。

あなたの中の悲しみや怒りは、まだ気づかれてもいない、あるいは言葉にならないほど暗い、絶望的な感情かもしれません。

しかし、癒しを得るには、それを「感じる」必要があるのです。

もしかしたら、あなたに必要な温かい安定的な関係は、まずは専門家との絆かもしれません。

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時間はかかっても、負の思考パターンは変えていける

不安定な愛着スタイルは、長い年月をかけて作られてきたものです。だから変えるのには、時間も労力も必要です。

自己否定感を注意深く見つけて、粘り強く打ち消していかなければなりません。

アーロン氏は「愛着スタイルは、過去は繰り返すという予測に基づいて作られた最適な生存方法なので、変化を拒む」「特にHSPは、生まれつきその予測に縛られやすい」と言います。

長いこと不安定でいた人は、嫌なことがあると「自分は嫌なことをされて仕方ない人間」「他人も嫌なことをして当然と思っている」「止めてくれ!と言えなかった」「あぁ、また負のパターンに陥っている。なんて駄目な私だろう」と自分を責めて、不安定な愛着を強化してしまいがちです。

そんなときこそ、安定型になろうと頑張っている自分を認めましょう。

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あなたが自分を癒すのは、あなた一人のためではありません。

愛着スタイルは、あなたとそばにいる誰かの幸せを大きく左右します

あなたが、過去の小さなトゲに気づいて、その毒を抜き、安定型になることで、もしかすると、世界中の悲しみや痛みを抱えている人たちを励まし、その人たちの未来を大きく変えられるかもしれません。

今からでも遅くはありません。あなたは変化を恐れるかもしれませんが、恐れを「感じている」のなら、もうすでに変化は起きています。

本当のあなたと出会い、幸せへ続く扉を開いて(最後に)

このシリーズを執筆中、多くの方から「癒されます」というお言葉を頂きました。

私もとても勇気をもらいました。

一方で、読んでいてどこか「激しい感情が溢れ出そうになる」「なにか心がザワザワする」ところがありませんでしたか?もしそうだとしたら、それも、変化の兆しかもしれません。

HSPは、自分の心の底からのSOSのメッセージを聞き取ることが得意です

そのメッセージと向き合う時、あなた自身も知らなかった、本当のあなたと出会う扉が開かれることでしょう。

そこから、あなただけではなく、あなたの周囲の大切な人をも、幸せへと導く道程(みちのり)が、続いているにちがいありません。
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