Dr.明橋のHSP大全 #16

  1. 人生

HSPは優柔不断?なかなか選べない理由と、決断するための方法

HSP(ひといちばい敏感な人)の基本的な知識から、最新の議論までをご紹介する、精神科医・明橋大二先生の「HSP大全」第16回です。
これまでの連載はこちら

「親密さへの恐れ(親密になることを恐れる理由)」の7番目は「コミットメントの恐れ(落ち着きたくない)」です。

コミットメント(Commitment)は、ここでは結婚など長期の関係に入る約束をすることです。

結婚式で新郎新婦はこんな約束をします。

「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、互いを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓います。」

できれば一生真心を尽くしたいHSPの中には、そんな相手に出会えてこんな約束ができるなんて素敵だなと憧れながらも、自分には無理な気がしてうらやましくなったり、いつまで続くのかな?と不安になったりする人もいるかもしれません。

深い関係に憧れながら、なぜ一歩を踏み出せないのか

ひといちばい物事を深く考える、慎重派のHSPにとって、何か一つ決断するにも時間がかかりますし、勇気がいります。

服を一つ選ぶのでさえ、何度も店を回って、あらゆるシチュエーションを考えてから決めるのです。

ましてや、一生を左右するかもしれない決断をする時には、相当不安にもなるし、勇気もいることは想像に難くありません。

相手の将来や責任を負うのが不安。

今、未来を決めてしまう勇気がない。軽々しく約束できない。

運命の相手は本当にこの人なのだろうか?

相手は本当に私などで幸せになれるのだろうか?

裏切られたらどうしよう。自分が心変わりしてしまったら?

できることなら曖昧な関係のまま何も決断せずにいたい。

さまざまな不安が出てきます。そのために、なかなか決心ができないことがあります。

実は、私達は本当のところ、具体的に何を恐れているのか、じっくり考える機会を持てていないことが少なくありません。

優柔不断なのではなく、別の理由があるのかも

たとえば、過去、裏切りを経験したことがあるから、約束が恐いのかもしれません。

「あなたのため」と言いながら境界線に侵入してくる親を持った人は、誰かと一緒になることを恐れます。

「自分は一人で生きていく」と心に決めている人も、寄り添う相手が必要な自分を認めたくないかもしれません。

生まれつき慎重で共感力の高いHSPは、中でも「間違って相手を傷つける」ことを恐れます。

HSPは、できれば一生その人を愛していたいと思う一方で、その人と一緒になり味わうことになる喜びと痛みを予期するのです。

長い時間をかけてでも「間違い」を無くしたいのは当然です。

大切なことは時間に任せず、直観に任せる

時間はたいてい、慎重なHSPの味方です。

刺激が過ぎ去って、深いところで納得できるまで時間をかけて考えることで、HSPはいい決断ができます。

しかし一方で、時間をかけるだけかけて、結局何も決めないとしたら、「何も決断しない」という決断をしたことになってしまいます。

いずれにせよ、いつかは何らかの決断をしなければならないのです。

あなたの直観が「この人だ」と思うなら、自信がなくても、どこかで恐れを克服し決断をしなければなりません。

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どうしても決められない…と悩んだら

そういう時、どのようにしてその恐れを乗り越えたらいいでしょう。

アーロン氏は、「自信を持って決められないことだってある、と認めてしまうといい」と言います。

一見「取り返しのつかない」(と思う)間違いをしてしまったとしても、いつでもどこからでもリカバリーできるものです。

将来、その人があなたの敏感さを尊重してくれないと分かって、「やはりこの人でなかった」と途中で気づいたとします。

それがあなたにとって本当に大切なことならば、痛みを伴うにしても、そのときにまた決断をすればいいのです。

傷つけ合うかもしれない不安には、互いの境界線を

「自分と一緒にいて相手が傷ついたり不幸になったりするかもしれない」という恐れに対しては、アーロン氏は、境界線の話をします。

「相手から離れること、そして一つになることのバランスを取りましょう。それが健全な依存、相互依存と言えます」(エレイン・N・アーロン著、明橋大二訳『ひといちばい敏感なあなたが人を愛するとき』より)

相手がどうというより、あなたの素直な気持ちに注目してみましょう。

相手が辛い思いをして何かに葛藤しているとき、生まれつき共感力の高いHSPは、つられて落ち着かない気持ちになって、自分の問題として相手の課題に手を貸そうとします。

しかし相手の葛藤は、本来相手が解決すべきものであって、あなたの課題ではありません。

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こんなときは、相手が自分で問題を解決するまで、距離を置いて見守りましょう。

あなたが距離を置いても、相手はなんとかやっていけるかもしれません。

頼まれてもいないのに1人で2人分の責任を背負う必要はないのです。

相手の課題は相手が解決します。

相手が自分自身のことで不機嫌になっている時、その機嫌を回復させることは、あなたの義務ではないし、相手の権利でもないのです。

相手だって、「助けてほしい」と言ってもいないのに、あなたが無理して辛い思いをする姿なんて見たくないはずです。

むしろ放っておいてもらったほうが安心するかもしれません。

将来を約束したくない究極の恐れは、パートナーがいつか自分の敏感さに愛想を尽かし、他の幸せを見つけて自分の元を去ることでしょう。

想像するだけで、まるで世界の終わりのような気持ちになるかもしれません。

万が一、そんなことが起きたとしても、あなたはそこから出直せます。(詳しくは、第12回「見捨てられ不安」を参照してください)

特に「ひといちばい敏感なHSS」の場合

刺激を探求するHSS(第8回ご参照ください)は、束縛され刺激(自由)が無くなることを恐れます。

しかし、HSPとHSSは、それぞれ独立した気質なので、HSSでもHSPという人がいます。

そういう人は、多くの異性と楽しい経験を続けたい(HSS)思いと、ひとりの相手と深く繋がり落ち着きたい(HSP)部分とが、葛藤しています。

そのようなHSS・HSPは遊んでいても、あるとき深く愛する相手が現れたとき、急展開で周囲を驚かせるかもしれません。

ただし、HSPならではの共感力から気の利いた台詞で相手に接近し、同時にHSSだから盛り上がるのに、急に一人の時間を欲するような振れ幅の大きさは、言葉で説明が必要です。

そんな複雑なHSP・HSSの心が分かる相手は少ないので、同じHSP・HSSか、少なくとも気質をよく理解してくれる人を選んだらいいでしょう。

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