日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #81

  1. 人生

『徒然草』からの生きるヒント 〜そばにいる人は、我慢して聞いているのです(徒然草 第57段)

今も昔も難しい

今も昔も「難しいなぁ」と思うのは、人間関係ではないでしょうか。

例えば、上から目線で話してくる人には、イライラします。

その人に専門知識があれば、「言い方は気に食わないけれど、もっともな意見だな」と納得できます。

ところが、知ったかぶりの上から目線だと、「何にも知らないくせにっ!」と思い、余計イライラします。

こんな人が、兼好さんの時にもあったようです。『徒然草』から、木村耕一さんの意訳でどうぞ。

そばにいる人は、我慢して聞いているのです

(意訳)

「この和歌は素晴らしいですね」と、誰かが批評しているのを聞くことがあります。

しかし、取り上げた歌そのものが、下手な作品の場合は、聞くに堪えがたい思いがします。

少しでも和歌の道を心得ている人ならば、そんな下手な歌を褒めたりはしないでしょう。

これは和歌の道だけではありません。

何事においても、専門的な知識も経験もない分野のことを、知ったかぶりして話をしないようにしましょう。

そばにいる人は、我慢して聞いているのです。本当に、嫌な思いをしているのですから。

【原文】
人の語り出でたる歌物語の、歌のわろきこそ本意なけれ。少しその道知らん人は、いみじと思いては語らじ。
すべていとも知らぬ道の物語したる、かたはらいたく、聞きにくし。(第57段)

『徒然草』からの生きるヒント 〜そばにいる人は、我慢して聞いているのです(徒然草 第57段)の画像1

(月刊なぜ生きる4月号「古典を楽しむ」 意訳・解説 木村耕一 イラスト 黒澤葵 より)

兼好さんも我慢していた

木村耕一さん、ありがとうございました。

「専門的な知識も経験もない分野のことを、知ったかぶりして話す人」は、昔からあったのですね。

兼好さんも我慢して聞いていた、と知ると少し気が楽になりました。
今でも共感できる古典って、素敵ですね。

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