カフェで楽しむ源氏物語-Genji Monogatari #66

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匂の宮との関係が薫に露見!追い詰められた浮舟の決意【浮舟の巻】

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こんにちは。国語教師の常田です。
薫と匂の宮との間で揺れ動いていた浮舟。ついに薫に秘密が露見してしまいます。
浮舟はどうなるのでしょうか?
今回も、浮舟の巻を解説します。

浮舟と匂の宮との秘密を知った薫

ついに最も恐れていた事態が生じました。
薫と匂の宮の使者が宇治で鉢合わせしたのです。

薫の使者は不審に思い、事の次第を調べました。
このことから薫は浮舟と匂の宮の密通を知ったのでした。
 
薫は匂の宮に対して腹立たしさ極まりがありません。
中の君を匂の宮に縁づけたのは薫です。

浮舟が悩ましげにしていた訳も分かりました。
“匂の宮のおもちゃにお似合いか””もともと妻にする気はなかったし”などと思い悩みます。

薫は浮舟に文をおくりました。

波こゆる ころとも知らず 末の松 待つらんとのみ 思いけるかな
 (あなたが心変わりしているとは知らなかった。ただ私を待っているとばかり思っていたよ)

の歌に「私を笑い者にしてくれるな」とだけあります。
浮舟は胸がつぶれました。

事情を知る女房たちは、「愛情の勝る方、お一人にお決めください」と強く勧めます。
浮舟は”死んでしまいたい”と悩みました。

思い詰めていく浮舟

間もなく、山荘周辺の警備が異様なまでに厳重になり、田舎の乱暴者たちが交代で番にあたります。
薫の文もあれ以来、ぱったりと途絶えました。
 
浮舟は”わが身一つが消えてなくなるのが一番。世間の笑い者になって、さすらって生きるのは死ぬよりつらい”と決意していきます。
他人に読まれて困る手紙などは破って、片付けていくのでした。

三月も二十日過ぎのこと。匂の宮から「二十八日の夜、必ず迎えに行く」と言ってよこしました。
浮舟は匂の宮の面影を払うことができず、激しく泣きます。浮舟は彼に返事が書けません。
匂の宮は何があったのかと、またしても必死の思いで宇治を訪れました。

しかし打って変わる厳重な警備に、咎めだてて吠え続ける犬、弓弦(ゆずる)を弾き鳴らす男たちの前には、匂の宮も浮舟と逢うことなく帰らざるを得ませんでした。
それを知った浮舟は、枕が浮くばかりに涙を流します。

翌朝、”親に先立つ不孝をお許しください”と念じます。
匂の宮の美しい姿と向かいあっているようで切なく、変わらぬ心を約束してくれた薫もいたわしい。
しかし、愚かで不埒な女よとの噂を聞かせるよりは…と思います。

母のことはとても恋しい。東国で育った異父弟妹たちも懐かしい。中の君のことも思い出します。
夜になって、人に見つからないで山荘を抜け出る方法を考えますが、寝られないまま夜が明けてしまいます。

川を遠く眺めて、屠所に引かれていく羊よりも死が近いと感じます。
上京の準備にいそしむ女房たちのにぎやかな声は耳に入りません。

匂の宮と母への別れの文

浮舟は意を決し、匂の宮と母に決別の文をしたためました。
匂の宮には、

からをだに 憂き世の中に とどめずは いずこをはかと 君もうらみん
(亡骸をもこのつらい世の中に残さなかったなら、どこを目当てにあなた様も私をお怨みになれましょう)

母には、

のちにまた あい見んことを 思わなん この世の夢に 心まどわで
(後の世でまたお会いできるよう念じてください。この世の儚い夢のようなことに、お心を惑わされないで) 

と。
 
そして、読経の開始を告げる鐘の音が聞こえてくる中、

鐘の音の 絶ゆるひびきに 音(ね)をそえて わが世尽きぬと 君に伝えよ
(あの鐘の音が消えてゆく響きに、私の泣く音(ね)を添えて、私が死んでいったと母に告げてほしい)

と詠みました。

乳母が「変な胸騒ぎがします」と騒ぎます。
親しい女房がそばで「どちらかお決めになってください。あとは成り行きにお任せなさい」とため息をつきます。

浮舟は衣を顔に押し当てて臥してしまいました。

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