日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #11

  1. 人生

「秋深き 隣は何を する人ぞ」17文字に秘められた想い〜芭蕉と木曽義仲

芭蕉ならではの言葉の力

秋深き 隣は何を する人ぞ

これは『奥の細道』で有名な松尾芭蕉の俳句なのです。
秋になると、風景も美しく、食べ物もおいしくなります。「さて、隣の人は、何をして楽しもうとしているのかな……」と耳をそばだてている様子が浮かんできます。ユーモアが漂い、思わず口ずさんでしまうのは、芭蕉ならではの言葉の力です。

この句の意味は、芭蕉がどのような時に詠んだのかを知るとより鮮明に味わえます。

旅の途中で……

実は、この句を詠んだ時、芭蕉は旅の途中でした。大阪の宿で体調を崩してしまったのです。こんな秋晴れの、気持ちのいい日に、体が自由にならないもどかしさ、寂寥感が表れている俳句だとも味わえます。
この句を詠んでから、芭蕉は寝込んでしまい、2週間後に亡くなりました。51歳でした。

木曽義仲への敬慕

芭蕉は、『平家物語』で有名な木曽義仲の大ファンでした。「義仲の墓の隣に葬ってほしい」と遺言したほどです。今も遺言どおり、琵琶湖のほとりの義仲寺に、芭蕉の墓が残されています。
木曽義仲は、北陸から都を目指して快進撃を続け、ついに巨大な平家を西海へ追い落としました。朝日将軍と呼ばれ、時代を大きく変えた男なのです。

17文字に情熱を注いだ生涯

芭蕉は、情熱の塊のような義仲の志に共感を抱いたのです。それは、俳句の世界に新風を吹き込もうと、17文字に情熱を注いで闘ってきた芭蕉の一生と、通じるものがあったからではないでしょうか。

この道や 行く人なしに 秋の暮 (芭蕉)

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