日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #7

  1. 人生

これからの人生設計に役立つ『平家物語』

平家の絶頂から、壇の浦の海底に沈んでいくまでの人間模様から、今の時代を生き抜く知恵を学ぶ

盲目の法師が、琵琶を奏でながら、歌うように語っていた『平家物語』。

「あっ」と感動したり、「ほろっ」と涙したり、「くすり」と笑ったりする場面が、リズミカルに、織り込まれています。

祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらわす。

(平家物語)

『平家物語』のテーマは、冒頭の名文で明らかなように、「諸行無常」「盛者必衰」です。

「諸行無常」とは、「全てのものは、長続きしない」。

「盛者必衰」とは、「盛んな者も、必ず衰える時が来る」という意味です。

これは、私たちが、どう生きるかを考え、悔いのない人生を設計するために、とても重要なテーマです。

サクセスストーリーは、人生の片面。もう片面は?

『平家物語』には、平清盛が、日本史上、例のない出世を果たすまでのサクセスストーリーは書かれていません。

ここが、豊臣秀吉の『太閤記』と違うところです。

少しだけ、平家の歩みを書いたあと、いきなり「太政大臣」という最高のポストを得た清盛から始まります。

そして、一見、華やかに見える平家一門が、わずか18年後に、壇の浦の海底に沈んでいくまでを描いているのです。

主人公が、苦労して成功を収めるまでの物語ならば、ハッピーエンドになるでしょう。

しかし、それは人生の片面でしかありません。むしろ、その後のほうが大事なのです。

山の頂上まで登った人は、それから、どうするのか。

頂上まで登ることができず、挫折した人は、どうなるのか。

必ず直面する死に、どう向き合えばいいのか。

こういうことを、真っ正面から描いた物語は、他にはないように思います。

さまざまな苦難に直面した時、どう行動したのか、その結果は……

『平家物語』は、軍記物といわれます。

しかし、源氏と平家の合戦ばかりが描かれているのではありません。

親と子の絆、夫婦の絆、主従の絆が描かれている場面が、とても多いのが特徴です。

清盛にも、子供や孫があります。罪を犯して流罪になる人たちにも、妻や子供がいます。

ついつい「自分の人生は、自分が決める」「自分のやりたいことをやる」という考えで、突き進んでしまうことがあります。

しかし、それが、家族や周囲の人たちに、どんな思いをさせてしまうのか……。

『平家物語』を読むと、誰もが一度、立ち止まって考えてしまうと思います。

『平家物語』は、実際にあったことを基に書かれています。

清盛だけでなく、物語に登場する人物は、さまざまな苦難に直面します。

その時、人間は、どう行動するのか。

その結果、どうなったのかを読んでいくと、とてもためになります。

時代は違っても、同じ人間ですから、同じようなことが、私たちの人生にも、起きるからです。

「諸行無常」「盛者必衰」の現実を見つめて、そこを乗り越えて進む、様々な生き方が、名文で描かれています。

だからこそ、時代を超えて読みつがれているのではないでしょうか。

美しき鐘の声  平家物語(一)

美しき鐘の声  平家物語(一)

木村耕一(著) 黒澤葵(イラスト)

美しき鐘の声 平家物語(ニ)

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木村耕一(著) 黒澤葵(イラスト)

美しき鐘の声 平家物語(三)

美しき鐘の声 平家物語(三)

木村耕一(著) 黒澤葵(イラスト)

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