1万年堂出版が開催した
読者感想文コンクールの
入賞作品の一部をご紹介します。

銀賞

『男のための自分探し』を読んで

長尾香さん(40歳・岡山県)

恋の話をするバラエティ番組で、司会の男性が「愛は4年で終わるらしいからな」と言っていたのを興味深く聞きました。「いったい誰がそんなことを言って いるのだろう?」と、ずっと心に掛かっていたのですが、この本に出会って謎は解けました。あの司会者も、もしかしたらこの本を読んだのかも、と思いながら 1ページずつ読んでいきました。

この『男のための自分探し』というタイトルを新聞広告でみつけ、何だかすごく気になったので、書店へ行った時に目次にざっと目を通しました。「男のため の……」なのに、女の私の読みたい欲求にも火が付き、早速買って帰りました。昔の哲学者たちの言葉が多く掲載されていましたが、決して難しくなく、理解し やすく書かれているのがありがたかったです。

「自分探し」というのは、すなわち「何のために自分は生きるのか」につながっていると思います。本書で私が知りたかったことは、まさにそこでした。そしてそれは本書につまびらかに記してありました。

「人間に生まれてよかった」「今まで生きてきたのは、このためだった」という生命の歓喜が、自分探しのゴールです、とあります。「私が望むこと」は、私自 身の幸せ、ともありました。なるほど!突き詰めると、そういうことか!と、すごく納得がいきました。その数行を読んで、目からうろこが落ちた気がします。

2番目に印象深かったのは、「死」を見つめた時、人間は「本当の自分」になる、という章です。その数ページ前に、「人間は、あることを考えないようにし ています。都合が悪いので、忘れようとしています。それは何でしょう……」とあります。それは「死」だったのですね。確かに自分の「死」を思うとき、明る い気持ちにはなれません。だから本文にあるように「死は確かにやって来る、しかし、今すぐというわけではない」というウソで、私も安心していたいのです。

ところで私は現在独身で、過去にも結婚をしたことはありません。1章に「結婚」は人生の唯一にして最大の幸福です、とあるので、独身主義である私も、そ の「ほんわか気分」は味わってみたいような気持ちにさせられました。今からでも遅くないでしょうか……。しかし、結婚はともかく、恋愛はしていたいという 欲求はいつもあります。残念ながら、今の生活では独身男性と知り合う機会はありませんが。

精子が卵子より価値がないから、あふれる男が出てくる、という章では、少しいい気分になりました。雌が売り手市場なのは嬉しい限りです。妊娠や出産は本 当に大変らしいので、その位のメリットはあって当然だと思います。男に陣痛の苦しみを与えたら死んでしまうといわれる、とあったのには笑えました。

4章に、「手段よりも目的こそ、熟慮しなければならないのに、なぜか人間は、目的については深く考えません」とあります。これにはハッとさせられまし た。確かにそう言われる通りかもしれません。そうであるから、実際欲しがっている物を手に入れることができても、たいした感動もない場合があるのかもしれ ません。欲望の命ずるままに生きるのは、自由人ではないそうです。私も本書にあるように、「自分の望みどおりの生きかたができる」自由な人間になりたい と、強く思います。そのためにどうすべきかを、文字で表してくれているのが本書でした。いつも手元に置いておき、何度も読み返しています。

私の興味をひくタイトルをつけてくださった作者様には、とても感謝しています。そして、私の長年の疑問だった「生きる意味」について、易しく解説してある本書にも感謝します。

ありがとうございました。この本に出会えて良かったです。