1章 傷だらけの家に、笑顔が戻るまで
- 「先生、助けてください! 息子が暴れて手がつけられないんです!」
- 「子どもが、それだけ暴れるということは、どこかで本人も苦しんでいるんじゃないですか」
- 「息子は、いじめられていることを、話したくても、きっと、話せなかったんだと思います」
- 「暴れる人、というのは、最初から暴力的なわけでなく、それ以前に、何かの被害に遭っている人が多いんです」
- 「どうして、僕ばかり、こんな目に遭うの、お父さん、お母さん、助けて!と心の中で叫んでいたに違いありません」
- 「一年前の、あのボロボロの、傷だらけの家は、きっと、あの子の心の中と同じだったんだと思います」
2章 子どもの心の成長は、甘え(依存)と反抗(自立)の繰り返し
- 身体の成長は、目で見て分かるが、心の成長は、目で見て分からない。具合が悪くても、すぐには気づきません
- 子どもを自立させるには、どうしたらいいか──。甘えない人が自立するのではなく、甘えた人が自立するのです・「手がかからない子」「聞き分けのよい子」というのは、甘え不足の状態です
- 手のひらの中の卵は、きつく握りすぎると壊れてしまいます。手を広げすぎると、転がって地面に落ちて、やはり壊れてしまいます。子どもの心も同じです・ほどよい力で、そっと支え続けることが大切
- 思春期になると、依存と自立の行ったり来たりが、とても激しくなる・依存の対象は、親から友達へ
友達から拒否された子どもは、強い不安を持ち、自立が妨げられる
3章 人間が生きていくうえで、甘えは絶対必要なものです。決して「甘えるな」と言ってはならない
- 甘えが満たされる時、「自分は愛される価値のある存在なんだ」と感じます。この土台があって初めて、しつけや学力が身についていきます・「依存症」が大幅に増えているのは、なぜか
- 甘えを放置すると、子どもの心に、強い怒りが生じます。それは、暴力を受けた時の怒りに勝るとも劣りません・甘えたい気持ちを心の中から締め出すと、子どもは無表情になります。心のトラブルの始まりです
・スキンシップが苦手でも、自分を責めることはありません
・ちゃんと話を聴くと、甘えが満たされ、安心します
- 思春期は、友達関係で、さまざまに裏切られ、傷つきます。子どもが本当に助けを求めてきたら、しっかり受け止めてやってほしい・自分が甘えられなかったから、「おまえも甘えるな」は、間違っています
- 子どもの心身症を診ていると、祖父母から親、親から子への、八つ当たりの連鎖が原因になっていることが、よくあります
4章 子どもを、自立させるには。思春期に反抗や批判をしてくるのは、「自立」がうまくいっている証拠です
- 反抗は自立のサイン。小さい頃の遊びやイタズラは自立心を育てます
- 子どもの話をしっかり聴く。親にとって都合の悪いことでも、正しいことは、ちゃんと認める。そうすると、自己主張できる子に育っていく
- ちゃんと育ててきたから反抗するようになったのです。医者から見ると、思春期に反抗しない子のほうが心配です・子どもに自信を持たせるためには、親が、先回りして、手を出したり、口を出したりしない。失敗しても、否定しないこと
- 子どもの権利条約って何?
一言でいうと、子どものペースで甘えたり、自立したりすることを、保障します、ということ・自己中心的になるのは、権利の使い方を教えていないから
5章 思春期の子どもとの接し方
「どうせ親に話しても無駄だから」と言われないために
- 揺れ動く、子どもを認めて、付き合う。「分かったよ」と言って、ついていく。「好きな所へ行けば」と、見放さない
- 親が肩の力を抜くと、親が楽になります。親が楽になると、子どもも楽になります
- 子どもたちはよく、「親は、してほしくないことばかりする。本当にしてほしいことは、ちっともしてくれない」と言います・いったん信用を失ったら、もう子どもは、親を当てにしなくなります
- 思春期になると、子どもがほめてほしいことと、親がほめたいことがズレてくる・「ありがとう」というほめ言葉は、思春期の子にこそ、必要な言葉
十代の子どもに接する十カ条
6章 子どもが精神的に疲れて、心配な行動や症状を出してきたら……
- 不登校や引きこもり 本人の回復に必要なのは、周囲の人が、子どものつらさに共感すること・なぜ、こうなったのか。その原因を、一つのストーリーとして把握する
・「ここまで生きてきただけでも大変だったんだな」 周りが、現状を受け入れれば、本人はかなり楽になる
・すでに傷ついている子を、もうこれ以上傷つけない
・相手の心を傷つける、最たるものは、言葉
・傷ついている人や疲れている人への禁句 「もっとがんばれ」「甘えるな」「それは逃げだ」「気の持ちようだ」……
- ある不登校生の体験談
いじめや、学校へ行けないつらさ、心の傷からどうして立ち直ることができたのか・僕は先生に何度も助けを求めた
・もう笑うことも、泣くこともできない……
・学校に行きたくても、行けなかった日々
・お母さんへ
・自分で死ななくちゃならない世の中でなくなりますように
- 不登校、引きこもりへの対応
本人は「病気じゃない」と言いますが、それは間違いではありません①家族全員が、本人の現状を、百パーセント認める
②子どもに、こちらから声をかけていく。ちょっとしたことでも「ありがとう」と言っていく
③子どもから話をしてきたら、一切、否定せずに聴く
④今後のことは、あくまで本人の選択に任せる。親から指示、提案はしない
- 不登校は、「心のサーモスタット」が切れた状態。これ以上、心が壊れるのを防ぐための、自然な、正常な反応です
7章 いじめられている人は、ものすごくつらい中でも、必死に耐えている、本当にりっぱな人です
- 「いじめられるおまえも悪いんだ」「おまえも言い返さないから悪い」とは、絶対に言ってはなりません・いじめが解決しない場合、学校へ行かない、転校することも、一つの選択肢です
- いじめという暴力は、被害者の心を深く傷つけ、他の人に相談しようとする力まで奪ってしまう・子どもが「いじめ」に遭って、悪循環に陥らないために、親や周囲が心がけておくとよいこと
- いじめは、子どもの安全に関わる重要な問題。学校全体で真剣に取り組み、十分なサポート体制をとる必要があります・文部科学省、教育委員会の「いじめ対応」の問題点
⑴ いじめの統計が実態を把握していない
⑵ いじめ対策の周知が不十分
⑶ 教員だけで抱え込むケースが多い
⑷ 加害者へのケアが抜け落ちている
⑸ 当事者の子どもに、「いじめ対応マニュアル」が知らされていない
・いじめについての対応は、学校が、授業を一日や二日つぶしてでも、やる価値がある
- 生徒同士の対人関係トラブル。その背景には、家庭での苦しみが原因になっていることがある
8章 体罰は、なぜいけないのか 大人の認識が甘すぎる
- 大阪市立桜宮高校で、体罰を受けたあと、生徒が自殺した事件が示すもの
- 体罰が、子どもの心の成長に悪影響があることは、ハッキリ結論が出ています・女子柔道の選手が、監督の体罰を告発したのは、身体の苦痛ではなく、心が深く傷ついたから
- 家庭における体罰も、法律で禁止すべきです。「しつけのための体罰」と称しても、親の感情が入り、虐待につながっていく
最後に── お母さんは、おまえのことが大好きだよ。たとえ学校へ行かなくても、おまえは、とってもいい奴だよ
Q&A
相談に来られるみなさんから、こういう質問をよく受けます
Q01 子育てに、全く自信がありません
Q02 子どもが「うるさい」などと反抗するようになりました
Q03 指示や命令でなく、子どもを方向づける方法は?
Q04 友達のような親子関係は、よくないでしょうか?
Q05 不登校の子どもを見守る心得を教えてください
Q06 不登校の子どもが、将来、社会に出られるか心配です
Q07 いじめがあった時、子どもをどう励ましたらいいでしょうか
Q08 少年野球で、友達から暴力を振るわれているようです
Q09 娘がガラの悪い友達と付き合い、外泊を繰り返しています
Q10 子どもが、また家出をするのでは……と不安です
Q11 口べたの息子の会話能力を高めるには?
Q12 息子が、発達障害の疑いがあると言われました
Q13 思春期の、父親の役割を教えてください
Q14 子どもを、どこまで信じてやればいいのでしょうか
Q15 親に黙って、姑からお金を借りていたようです
Q16 子どもが、お金の要求ばかりしてきます
Q17 息子は人前に出るのが苦手で、学校も欠席しがちです
Q18 自傷行為を繰り返す子どもに、何もしてやれません
Q19 高校入試に落ちても、全然こたえていないようです
Q20 近所に、様子が気になる子どもを見かけます
Q21 子育てで、これだけは忘れてはいけない、ということは?
思春期の子どもからの質問
Q22 高校受験に失敗してしまい、落ち込んでいます
Q23 彼のことで頭がいっぱいで、勉強も手につきません
Q24 親友にだまされて、がっかりしました
Q25 なかなか勉強の意欲がわいてきません
Q26 自分がこうなったのは親のせいでは?と思うことがあります
コラム
「やっぱり自分はいらない人間なんだ」という気持ちが、子どもを非行に走らせる
それは0(ゼロ)じゃない
付録
◎緊急メッセージ◎
自分らしく、成長していけばいい
いじめにあって、自殺を考えている君へ
◎子どもたちを元気にする◎
みんなで、手を携えて、すべての子どもたちに愛を
「いじめ対応マニュアル」と「それを支える考え」