子どもの救急シリーズ #3

  1. 子育て

【ノロウイルス対策まとめ】救急医に聞く感染予防のポイント

子どもが急に吐いた!下痢が続く…となると、とても心配ですよね。
冬に増えるノロウイルス感染症について、ぜひ知っておきたい特徴と、感染予防のポイントを、救急医・めめママ先生にお聞きしました。
(1万年堂ライフ編集部より)

冬の救急外来といえば、インフルエンザと並んで流行する強敵がいるのですが…。そう、ノロウイルスによる感染性胃腸炎です。

昨今は、テレビなどでも紹介されていますので、一度は聞いたことがある方がほとんどだと思います。

今回はノロウイルスについてお話ししたいと思います。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎って何?

「ノロウイルス」という名前、以前はあまり耳にしたことがなかったのではないかと思います。

ウイルスそのものは1968年にアメリカで発見されているのですが、ノロウイルスという名前がついたのは2002年の国際ウイルス分類委員会でのことです。

そもそも感染性胃腸炎というのは色々な原因によるものを含む症候群であり、細菌やウイルス、寄生虫などの病原菌に感染することによって、下痢・嘔吐・腹痛を引き起こします。

年間を通して発症しますが、特に冬の時期に多く、11月ごろから増え始めて12月から1月がピークで、毎年約100万人の人が感染しています

この時期の感染性胃腸炎を起こす原因の半数以上を占めるのが、ノロウイルスであると言われているのです

なぜ「言われている」のかというと、後述しますが、感染性胃腸炎症状であっても、ノロウイルスかどうかの検査はほとんどされていないので、実数として把握されているわけではないからです。

ノロウイルスは感染してから発症するまでの潜伏期間が24~48時間で、発症後は通常1~2日で治癒します

高齢者や小児など、免疫力が低い人は重症化することがありますが、ノロウイルス感染症が、単体で、直接の原因となって死亡する例はほとんどありません。

ノロウイルスは世界に広く分布しており、さまざまな遺伝子型が存在するため、残念なことに生涯で何度もかかる可能性があります。

どうやって感染するの?

感染経路はいくつかありますが、多くは患者のノロウイルスが大量に含まれる排泄物から、人の手を介しての2次的感染や、集団生活による飛沫感染などの直接感染です。

食中毒でのノロウイルス感染は、調理をした人がすでに感染していて、その人を介してノロウイルスに汚染した食品を食べたことで起こります。

ノロウイルスは感染者の排泄物から検出されるのですが、ウイルス単体を取り出して増やす技術が確立していないうえ、特に食品中に含まれるウイルスの検出が非常に難しいので、感染経路を特定するのが困難なのです。

しかもノロウイルスの感染力は驚異的で、なんと乾燥するとヒラヒラと宙を舞い、それが口に入ることで感染してしまうことがあるのです

ウイルスは目に見えないのが怖いところですが、さまざまな強力な感染経路があるため、予防を心がけることが大切です。

検査や治療法はどんなものがあるの?

ノロウイルス感染症は、状況や症状から総合的に「ノロウイルスであろう」と推定して、診断、診療されていることが多いです。

医療機関で行える検査に「ノロウイルス抗原検査」というものが存在しますが、3歳未満と65歳以上の方など、一部の人にしか保険適応がされていません。

しかも結果が早く出るメリットはありますが、感染していても陽性にならないことがあるため、「陽性ならば感染していると言えますが、陰性だからといって感染していませんとは言えません」という検査なのです。

そのため、医師が医学的に必要と認めた場合にのみ行われ、診断の補助に使われます。私の勤務先でも特別な事情がない限りは行っていません。

治療についてですが、残念ながらノロウイルスに効く抗ウイルス薬はありません。ですので、安静にしてウイルスを出し切るのをただひたすら待つしかありません

ウイルスを排泄することで治っていくため、下痢がつらくても下痢止めは使用しないことが望ましいとされています。回復が遅れることがあるからです。

下痢嘔吐で水分が失われていくので、静養と水分補給が唯一の治療ですが、飲んだ水分も吐いてしまう場合には点滴などを行うことがあります。

効果的な予防法は?

まず、手洗いは基本的な予防法になります。

料理の前、食事の前、トイレに行ったあと、排泄物の処理をしたあとには必ず手洗いをしましょう。

爪の間や、指の付け根、手首までしっかりと石けんで洗い、温水でよく流します。

清潔なタオルで手を拭くのもよいのですが、特に家族に感染者がいる場合にはタオルを共有しない、もしくは使い捨てのペーパータオルを使用することが望ましいです。

石けんでノロウイルスが失活するわけではないのですが、ノロウイルスがはがれ落ちやすくなる効果があるので有効な方法といえるでしょう

不顕性感染と言って、感染しても症状が出ない場合もあるので、特に料理をする人は意識をして手洗いを心がけるようにする必要があります。

調理における予防法としては、食品や調理器具を加熱処理することです

ノロウイルスは培養する技術がないため、温度や時間など正確な数値は分かっていませんが、一般的にウイルスは熱に弱いため、85℃以上で1分以上の加熱が有効といわれています。

また、ノロウイルスに感染した人の排泄物から感染することが多いため、排泄物を正しく処理することが大事な予防法になります。

家族が感染したときの注意点、汚物処理の方法は?

ノロウイルス感染で恐ろしいのは、家庭内や集団への2次感染です。

お子さんがかかってしまった場合、きちんと予防をしないと高確率で看病しているお母さんにうつってしまいますが、お母さんに倒れている余裕なんてありませんよね!

家族じゅうで感染すると悲惨以外の何ものでもありませんので、蔓延しないように注意していきましょう。

症状が強い場合、突然嘔吐してしまうこともあり、トイレまで間に合いません。特にお子さんは、何の前ぶれもなしに突然床などに吐いてしまうことがほとんどです。

この汚物処理が2次感染を引き起こさないようにする最大のポイントなので、詳しく紹介します。

簡単!ノロウイルス消毒液の作り方

ノロウイルスの厄介な点は、一般的なアルコール消毒では失活しないところにあります。

次亜塩素酸ナトリウム液が有効ですが、ご家庭にある塩素系漂白剤(キッチンハイター)で代用することができるので紹介します。

排泄物が付着したものや、トイレなどを消毒する場合

0.1%濃度(1000ppm)の消毒液を作ります。

空の500mlペットボトルを用意し、ペットボトルのキャップ2杯分の塩素系漂白剤を入れてから、全体で500mlになるように水を入れれば完成です。

手で触れる部分(ドアノブやおもちゃ、調理器具など)を消毒する場合

0.02%濃度(200ppm)の消毒液を作ります。

空の2Lペットボトルを用意し、ペットボトルのキャップ2杯分の塩素系漂白剤を入れてから、全体で2Lになるように水を入れれば完成です。

家庭感染を防ぐ、汚物処理の手順とは

この消毒液を使用して汚物処理や身の回りの消毒を行っていきます。

まず、汚物処理をするときにはマスク、使い捨て手袋を着用します。できれば使い捨てのビニールのエプロンやゴーグルも着用したほうがいいです。

前述したとおり、ノロウイルスは乾燥すると宙に舞うという必殺技を持ち合わせているので、マスクは関係なさそうですが大事なアイテムなのです。

汚物の片づけは、この防備をしたあとに行います。

床などに吐物がばらまかれてしまった場合、まず新聞紙やペーパータオルを吐物の上にかぶせ、上から0.1%の消毒液をかけ、ひたひたに湿らせます。

中心に向けて集めるようにして新聞紙ごと吐物を回収し、ビニール袋①に入れます。そこに0.1%消毒液を新聞紙がつかるまで入れ、すぐに密閉し、一回り大きいビニール袋②に入れます。

床がフローリングの場合は、汚れた部分より少し広めにペーパータオルを置き、0.1%濃度の消毒液をひたし、10分放置して回収します。

再度0.1%消毒液にひたしたペーパータオルで吹き上げてから水拭きします。

このときに出たゴミは、すべてビニール袋②に入れます。

最後にマスクや手袋などの防護具を外し、ビニール袋②に入れて密封し、処理後は必ず手洗いをしましょう。

乾燥してしまうと空気中に舞ってしまうので、なるべく早めに片づけたり、換気したりすることも大切なポイントです。

また、床が洗えるラグマットやじゅうたんの場合は吐物回収後、ひとまずビニール袋に入れてウイルスをまき散らすのを防ぎます。

汚れてしまった衣類も同様に処理します。

できれば袋の中に0.1%消毒液を入れて消毒してしまい、洗剤を入れた水の中でもみ洗いしてから塩素系漂白剤を使用して洗濯します(洋服用のハイターではないため、色落ちすることがあるので注意してください)。

アイロンをかけると、より効果的に殺菌できます

色落ちが気になる場合は、消毒薬は使用せずに流水で吐物を落とし、洗剤でもみ洗いしてから洗濯してアイロンをかけましょう。

洗えないカーペットや布団などに吐物がついてしまった場合は、吐物回収後にできれば消毒液で湿らせてから乾燥させ、布団乾燥機やアイロンを使用して高温処理をするとよいでしょう。

また、身の回りの気になるところは、0.02%濃度消毒液を使用して適宜消毒しましょう。

ドアノブなどよく触るところは、日ごろから消毒することも大切です

特にトイレを使用したあとは、霧吹きで消毒し、もう一度水で流してから次の人が使うようにするといいでしょう。


参考文献
厚生労働省ホームページ
国立感染症研究所ホームページ

いかがでしたか?

ノロウイルスに負けず、この冬もがんばって乗り切りましょう!