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喃語もれっきとしたおしゃべりです-赤ちゃんの言葉育ちを楽しもう

子どもの言葉はどうやって育つのか、「言葉の育ち」に大切なことは何か、筑波大学附属聴覚特別支援学校幼稚部教諭で、子育てハッピアドバイザーでもある佐藤幸子さんのアドバイスをお届けしています。

子どもは0歳から言葉を発しています

幼い子どもを育てる親御さんなら、体の成長と同じように、言葉の育ちも気になるところだと思います。

前回は、子どもとの共感関係が築けていれば、「語彙については心配いりません」と書きました。

そうはいっても、やっぱり、「うちの子、ちょっと言葉が遅いかも…」と心配になったり、「わが子の口から一日も早く、かわいいおしゃべりが聞きたい!」と思ったりするのが、ご両親の本音だと思います。

「ママ」が先か、「パパ」が先か、気になるのも、わが子の第一声を待ち望む気持ちの表れではないでしょうか。

そこで今回は、実は、あなたのお子さんは、赤ちゃんのときからすでにおしゃべりを始め、言葉を発しているんですよ!ということ、ぜひ伝えたいと思うのです。

ご機嫌?びっくりした?心の声に耳を傾けてみましょう

「お子さんはすでにおしゃべりを始め、言葉を発している」と聞かれても、「えっ?どういうこと?」と思うかもしれませんが、実際、目の前のお子さんをよーく見てみてください。

私たちは、「パパ」「ママ」「ちょうだい!」などの、れっきとした名詞や動詞が発せられないと、言葉として認識しない傾向にあります。

しかし、ちょっと待ってください。
言葉を感情に乗せて発しているのであれば、感嘆詞や感動詞のほうが、先に出るわけです

その目で、お子さんの心の声に耳を傾けてみてください。
ほらほら、急に、聞こえてきませんか?

ご機嫌なときに、やわらかな声で「あーあー」という声を出してはいませんか?

何かに驚いたときには、おめめをまんまるにして「あっ!」という声を出しますよね。

大好きなおもちゃが壊れたときには「あーあ」、不思議なことが起こったときには、「あー?」。

実は、これは紛れもない言葉なんですね。

喃語もれっきとしたおしゃべりです-赤ちゃんの言葉育ちを楽しもうの画像1

「あ~」の発声には言葉の要素がぎっしり!

よく、「うちの子、『あー』しか言わないんです」というお母さんの声を聞きます。

でも、よくよく考えると、日本語の発声・発語の基礎は「あ・い・う・え・お」の5つの母音なのです。
その5分の1の「あ」を使って、様々な感情を表現できているのは素晴らしいことなのです

たかが「あー」されど「あー」なのです

「あ」一つの発声の中に、長短、高低、リズム、イントネーション、明暗、強弱、連続音など、言葉の基礎となる要素がぎっしり詰まっています

そして、お子さんは豊かな感情の育ちと連動させながら、日々、「自学自習」という自発的な形で、次の発語に向けての基礎練習を積み重ねているのです。

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感情の母音が元になって言葉のブロックが積み上がる

ご両親が、この、素敵な子どもの自主トレーニングに気づき、慈しみ、心から楽しんでいくことが、言葉の育ちには最も大事なことなのです。

「言葉を発するって、なんて、素敵なことなんだろう!」

「僕が言葉を発すると、みんなが素敵な笑顔を返してくれるんだ!」

「じゃあ、もっとたくさん、声でおしゃべりしてみよう」

このような子どもの幸福感・満足感が、言葉の発声の源なのです。

そして、周囲の人たちとの温かな感情の交流は、「あ」以外の母音の発声にも順次つながっていきます

嫌な気持ちをストレートに出せたら「いー!」、
不満そうに口をとがらせたら「うー!」、
おちゃめに「べー!」、
どや顔の「おー!」。

自由な感情には、発声の基礎である母音が全部詰まっているのです

これらの基礎を元に、「あ」と「お」で「あお」、「い」と「あ」で「いやー」など、音のジョイントにつながり、言葉のブロックが積み上がるのです。

子どもの心が豊かに育つために

言葉の育ちは、心の育ちが土台です。子どもとの共感関係を築くことが、一歩一歩、音声言語の獲得の道へと続いていきます。

心が豊かに育つために、子どもの心の揺れにたっぷり付き合いましょう。
揺れとは、ブランコに例えられます。親子で同じ振り幅、強さ、速さ、リズムで心を揺らし合う心地よさが大切なのです。

大人主導の関わりでは、心の共鳴・共振が成立しにくく、本当の意味での生きた言葉の獲得にはつながりにくいのです。

次回は、「生きた言葉」とは何か、「子どもの気持ちに合った関わり」とはどういうものか、具体的に述べたいと思います。

まとめ

  • 母音の5分の1の「あ」を使って、様々な感情を表現できているのは素晴らしいことです。「あ」一つの発声の中に、言葉の基礎となる要素がぎっしり詰まっています
  • 周囲の人たちとの温かな感情の交流は、「あ」以外の母音の発声にも順次つながっていきます。共感関係の構築は、一歩一歩、音声言語の獲得の道へと続いているのです

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