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言葉遅れの心配も解消する、子どもの言葉・コミュニケーションの力を伸ばす大人の関わり方

1歳を過ぎると、早い子では、「ママ」「パパ」と片言を話す子どもが出てきます。

「うちの子はまだしゃべれないのに…」と、周りの子と比べると、つい心配になってしまいますよね。

言葉の発達には個人差がありますが、“言葉育て”に共通して大切なことは何でしょうか?

生きた言葉の育て方について、児童臨床家の佐藤幸子さんにお聞きしました。

(1万年堂ライフ編集部)

わが子に言葉の遅れがあると、母親はあせりと不安から、「何とかして言葉を教え込もう」という気持ちになりがちです。

しかし、「教え込む」という大人主導の関わり方は、子ども本来の言葉の獲得のプロセスに合わず、コミュニケーション力の育ちにはつながりません
また、言葉の理解力、表現力に偏りが出てしまうので注意しましょう。

では、子どもにコミュニケーションの力をつけ、生きた言葉を育てるためには、どのような関わりや言葉かけが必要なのでしょうか。

それには、子どもの心の動きをよく理解した関わりを心がけることが重要です。
つまり「語彙の量」ではなく、「子どもの世界の望ましいとらえ方」「子どもとの関わり方」に鍵があるのです。

一例を挙げてみましょう。

たった一度で言葉を覚えた子どもの経験

遊び盛りの3歳のAくん。トイレットペーパーや、泡石けんが好きで、つい遊んでしまい、いつも母親から「もったいない!」と叱られていました。

しかし、当のAくん、母親の怒りにも“どこ吹く風”で、当然、トイレットペーパーや泡石けんの使用量も減りませんでした。
母親も、「この子が『もったいない』の言葉を理解することは、とても無理なのだ…」と、あきらめていました。

ところが、ある出来事を通して、Aくんは一回で「もったいない」の言葉を覚えたのです。

それは、ある夏の暑い日。
大好きなソフトクリームを食べていたAくんは、嬉しくて、一口、一口、味わって食べていたところ、なんと、ソフトクリームの上半分がなぜかボトッと道路に落ちてしまったのです。

そばにいた母親がとっさに、「あー、もったいない!」と叫んだそうです。すると、この一回の経験で、Aくんは「もったいない」を理解したそうです

たしかに、そもそも、トイレットペーパーや泡石けんの代金が家計に占める割合などは、子どもにとっては、興味があるはずもありません。
それよりも美味しいソフトクリームの突然の落下のほうが、大事件なのです。その気持ちと、「もったいない」の言葉が一瞬で合致したからこその言葉の獲得だったのです

実は、これに似た話は、あちこちで聞きます。

この子は、言語指導の先生から出されたチェック表の言葉は全然覚えてくれないのに、どうでもいいポケモンの名前だけは、やけに詳しい。ほーんと、困っちゃう!

動物の名前を教えたくて、高いお金を出してぬいぐるみをいくつも買ったのに遊んでくれない!壁に動物の写真を何枚も貼ったら、ビリビリに破られた!

気持ちに合わない関わりをされると、子どもがこのような姿になるのは当然のことなのです。

子どもの「興味や心の動き」「さまざまな物の感じ方」と、「大人からの感情に乗った言葉かけ」が合致したときに、言葉が初めてスーッと入るのです

反対に、大人がどんなに時間と労力をかけて言葉を教えても、子どもの心の動きと合致しないとき、死んだ言葉となり、自発的な言葉の獲得にはつながらないのです。

心豊かな子どもに育てるヒント「金ピカのシール」

最近、ある保育園の運動会で見かけた親子のやりとりからも、感じさせられたことがありました。みなさんも、言葉について考えるヒントにしてみてください。

金ピカのシール

保育園での運動会、玉入れの競技が終わってからのこと。
勝った紅組には金ピカのシール、負けた白組には青のシールが配られました。

そのとき、負けた白組の3歳児の男の子の家族が「金ピカじゃないね。残念だったね」と言っていました。
しかし、当の男の子は、キョトンとしており、むしろ、青色のシールを嬉しそうに見ていました。

そういえば、その子は、青が好きと聞いていました。

「金ピカのシール」=「勝ち、一番、すごい」というイメージは、実は大人の経験値からくるイメージなのです
オリンピックでは金メダルは最高に栄誉あることですが、3歳の子どもにとっては、青色のほうが嬉しかったのです。

3歳児さんらしい、可愛らしい姿ですね。

こんなときは、どのような関わりや言葉かけがのぞましいのでしょうか。

青いシール、もらったの。嬉しいねBちゃんは、青が、大好きだもんね

嬉しくなった子どもは、得意気に、こんな言葉を身近な大人に伝えるでしょう。

見て!見て!青いシール、もらったよ!ぼく、玉入れ、がんばったんだ!

こんなやりとりを日頃からさまざまに積み重ねてもらっている子どもは、言葉を通して、心豊かな子どもに育てられていくはずです

反対に、どんなに語彙は豊富でも、大人目線で、気持ちと言葉がずれる経験が重ねられれば、子ども自身が周囲の人たちと豊かなやりとりをすることが困難になっていってしまいます。

心の豊かさを運ぶ道具として、言葉を使える大人になりたいものです。