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認知症ケアに大切なことって?「完璧な介護」を目指さず相手と向き合う

認知症の中でも介護側にとって理解し難い症状である「被害妄想」です。

その原因と特徴を前回の記事で紹介いただきました。

今回は、介護側が「被害妄想」とどう向き合っていけばいいのか、適切な認知症ケアについて、精神科医にお聞きましました。

前回の記事で、認知症の妄想の特徴には

自分の非を認めず、他人のせいする
身近な人が標的にされやすい

ことがあると紹介しました。

できないことが多くなる中で、なんとか「しっかりしよう」という思いから、自分の非を認めずに人のせいにしてしまうのであり、
また自分が世話好きで、世話をされるのがイヤな人ほど「あなたの世話にはならない」と強がってしまうのです。

そのような思いを抱える認知症患者さんには、普段からどのように接していくのがいいのでしょうか。

「一方通行にならない」認知症ケアが大切

認知症ケアは「一方通行になりやすい」といわれます。認知症患者にとって「世話をされるばかり」というのは肩身が狭く、後ろめたいものです。

加えて、老いてゆく先も見え隠れし、若い頃には戻れないという意味でも先が暗く、不安があります。

「自分はお荷物」
「迷惑をかけるばかり」
「いない方がいい」

と寂しくなりやすいのです。

介護される一方だと、折角のケアも受け入れにくくなってしまいます。

ケアする側は「もうちょっと素直に助けを求めてくれれば、可愛げがあるのに…」と思いますが、「素直になる」というのは意外と難しいものです。
家族など“近しい関係”だからこそ、強がったり照れたりして素直になれないこともあります。

苦しいときに弱音を吐いたり、助けを求めたりすることは、決して負けを認めたり、屈辱なことではないのですが、そう思ってしまう人もいるのです。
特に負けず嫌いでプライドが高い人にとっては自尊心を損ねるほど、大きな問題になりやすいといわれます

そうなると、なかなか素直に「ありがとう」「ごめんなさい」とは言えないものです。

できるだけ介護を受けることに負い目を感じないようにするためには、介護が「一方通行にならないような」工夫が大切になります

認知症ケアのコツは「完璧な介護は目指さない」

一方通行にならない認知症ケアのコツは「完璧な介護を目指さない」ということです。

そもそも完璧な介護・ケアなんてあり得ません。
ケアする側も、される側も、失敗を受け入れ合い、程よいゆるさの関係を目指した方が、お互い肩の力が抜けると思います。

そして、互いの失敗を受け入れ合うということは、相手を否定しないということであり、「ありがとう」を互いに言いやすい関係を目指すということでもあります

相手が先に「ありがとう」と言ってくれると、「いやいや、こちらこそありがとう」と言いやすくなるものです。失敗が認められると、できて当たり前ではなくなります。

相手に当たり前を求めなくなると「ありがとう」と言える場面は増えてくると思います。
何気ない小さなことでもいいと思います。むしろその積み重ねが大事なのかもしれません。

自分(あるいは自分の夫)を育ててくれたことへの感謝は何度言っても過ぎることはありません
素直になれないのはお互い様ならば、一緒に乗り越えることで、一層、心の距離も近づくのではないでしょうか。

まとめ:孤独や不安を抱える相手に優しい声を

認知症の妄想は、認知機能低下による「混乱」と、様々な人間関係や性格からくる「葛藤」が絡まって現れてくる症状です。

自分を支えてくれる大切なものが無くなってしまった不安は、周囲の人の想像するよりもずっと深刻なことなのでしょう。
苦し紛れの攻撃性の裏には、孤独や不安が隠れていることが多いのです

ぜひ、そんな背景に想いを馳せつつ、優しい声をかけてみてください

北風よりも太陽の方が、マントを脱いでくれるはずです。

終わりに:介護している人のケアも大事

そして忘れてはならないのが、身近で介護している人への労いです。

認知症の介護は、その症状のために心ない言葉を浴びせられたり、心身ともに苦労は一通りではありません。それが悪気がないことだと頭では理解できても、「盗んだのだろう」と犯人扱いされたら冷静ではいられません。

認知症の人を叱らないことが大切なのと同じくらい、身近で介護する人が苦労を抱え込まないように支えていくことも大切です

認知症の人へのケアが大切だから、認知症介護をしている人へのケアも絶対に必要です。
ぜひ、家族や行政と助け合いながら、風通しのいい介護をしていただければと思います。

参考文献

・佐藤眞一著(2012年)「認知症『不可解な行動』には理由がある」SB新書

・小澤勲著(2003年) 「痴呆を生きるということ」岩波新書

・三好春樹著 他(2012年)「完全図解 新しい認知症ケア 介護編」講談社

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