認知症の心の世界と認知症ケア #10

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認知症予防の重要な6つのポイントとは?歯周病や糖尿病の治療もしっかりと

近年、増え続けている認知症患者。

現状では完治は難しいとされているため、予防が重要になります。

認知症の原因・リスクとなるものと、その予防で大事なポイントを、現役医師の方にご紹介いただきました。

(1万年堂ライフ編集部より)

これまで認知症の「こころの世界」についてご紹介しましたが、気になる人が多い「認知症の予防」についてもまとめました。

近年、テレビや雑誌、ネットでも「○○が認知症の予防に効く!」とたくさん報道されています。
すべての情報が有効ではないにしても、実際に様々な研究データから、認知症はある程度は予防可能であることが分かってきています。

とはいえ「たくさん情報がありすぎて、どれを実践すればいいか分からない」という方もおられるでしょう。

そこで、特に重要と思われる以下の6つのポイントを紹介します。

  1. じゅうぶんな睡眠
  2. 糖尿病の治療
  3. 難聴対策(五感アンチエイジング)
  4. 歯周病の治療
  5. 運動・体操、コグニサイズ
  6. 人付き合いを楽しむ

認知症予防の6つのポイント

①十分な睡眠

睡眠負債」という言葉を聞いたことはないでしょうか。
一時的な睡眠不足ではなく、慢性的な睡眠不足のことをいいます。

この睡眠負債の蓄積が、認知症に大きく関係していることが研究でわかってきました

認知症予防のためには、40歳以降も6~7時間の睡眠時間が望ましいといわれています。睡眠時間が7時間未満だと、認知症のリスクが1.7倍になるというデータもあります

とはいえ、適切な睡眠時間は人それぞれです。
目安の一つは「午前中に眠くならない」ことです。眠い、いまいち集中できない、ダルイなどが気になるときは、睡眠が足りていないのかもしれません。

対策としては、寝る前のスマホや夜食は控えましょう。それらをすると、脳が起きてしまうためです。
また、起床時刻を一定にして朝日を浴びる、朝食を摂るなど、生活リズムを整えることも大切です

参考:

睡眠負債が危ない|NHKスペシャル

②糖尿病の予防・治療

糖尿病は、全身の血管を傷つけてしまう生活習慣病の代表格です。

脳にもたくさんの血管があり、血管への傷は脳のダメージにもなります。
糖尿病は、心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気だけでなく、認知症のリスクも2倍以上に高めてしまうといわれ、早めの治療が必要です

炭水化物(米、小麦など主食類)や糖質(砂糖、ジュース、お菓子など甘いもの)の偏食・食べ過ぎは、過剰なエネルギーとなり、それが血糖をあげ、悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化を引き起こします。

そのため、タンパク質(肉、魚、卵、豆類など)や野菜などをしっかり食べるように心がけましょう

地中海料理が健康・認知症によいといわれるのも、タンパク質や野菜が多く、良質の油(オリーブオイル、亜麻仁油、ω3脂肪酸など)が多く使われているからです。

また、食べる順番を考えることも大切です
野菜やおかずから食べて、ご飯やパンなどの主食は後半に回すなど、コース料理の気分を味わいながら、工夫を楽しんでみてください。

参考:

③難聴対策(五感アンチエイジング)

五感、特に聴覚は、脳にとって多くの情報源であり、刺激になります。

刺激が減り、使わなくなると「もう働かなくていいんだ」と脳が勘違いして、どんどん衰えてしまいます

耳が遠くなると人付き合いも控えてしまう方も少なくありません。
加齢のせいだから仕方ないとあきらめず、まずは専門の医師にご相談ください。

参考:

④歯周病の予防・治療

虫歯も、認知症と関連があることが分かっています。
虫歯菌が口から血管に入り、全身に広がると、脳にもダメージを与えてしまいます

虫歯は全身の病気も起こしうるため、早めの治療と、定期的なメンテナンスが重要です。
数カ月~半年に一度は歯医者さんに通うことをおススメします。

参考:

歯周病もアルツハイマー病の原因に! 真犯人「酪酸」が「脳」を侵食する?|健康・医療情報でQOLを高める~ヘルスプレス/HEALTH PRESS

・Chang-Kai Chen et al. Association between chronic periodontitis and the risk of Alzheimer’s disease: a retrospective, population-based, matched-cohort study. Alzheimers Res Ther. 2017; 9: 56.

⑤運動・体操、コグニサイズ

少し息が上がるくらいの運動は、脳の血流をよくして、頭の働きを活性化してくれます。

認知症になると委縮してしまう海馬(記憶を司る脳の部位)も、適度な運動をすることで回復しうることが研究でわかってきました

また、体を動かしながら頭も同時に使うことで、より認知症予防の効果が高くなることも報告されており、コグニサイズ(コグニション(認知機能)+エクササイズ(運動))と言われ、注目されています。

テニス卓球などの球技、姿勢を意識する体操ヨガ計算や会話を楽しみながらの早歩き・ジョギング、そのほか自分が楽しめて、続けられる運動を見つけられるといいですね。

参考:

・脳を鍛えるには運動しかない、ジョン J.レイティ著、NHK出版、2009年

コグニサイズ運動で認知症予防!効果とやり方を解説 | 認知症オンライン

⑥人付き合いを楽しむ

脳にとって、いちばんの刺激は人間関係です。

なんと「孤独」を感じている人は、認知症になりやすいというデータもあるほどです。新たな出会いや学びは、人生そのものも充実させてくれますよね。

人と会うということは、外に出て、歩いたりする運動にもつながります。オシャレを楽しむのも手軽な脳トレです。

人生を楽しむこと自体が、認知症の予防になるのかもしれませんね。

参考:

【健百】一人暮らしではなく”孤独と感じること”が認知症リスクに | あなたの健康百科

それ以外にも、禁煙、節酒も大事な要因です。

わかっているけど続かない…。認知症予防を習慣にするヒントは?

以上のように、「認知症の予防」といっても、特別なことをするわけではありません。

治すべきものは治し(特に糖尿病や歯周病などの生活習慣病)、生活習慣を整え(食事、運動、睡眠)、楽しめること、生きがい、生きる目的を持つことが、認知症の予防にもなるということです

日々の種まきを少しずつ変える工夫を楽しむことも、頭の体操になるかもしれません。

しかし、どんなに健康に良い、認知症予防に良いと頭ではわかっていても、なかなか実行できない、続かない…。そんな悩みを抱えている方もあるかもしれません。

実行できない、続かないと悩んでいる時には「何のためにやるのか?」という目的を確認してみてはどうでしょうか
「予防のための予防、健康のための健康」では、続けて頑張るモチベーションがあがりません。

「認知症の予防」を通して、自分自身や周囲の人の生活習慣を振り返り、何のための健康か、健康長寿でどんなことをしたいか、などを互いに見直すきっかけとできればいいですね。

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