日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #189

  1. 人生

『徒然草』からの生きるヒント〜お金をかけて水車を作ったのに、動きませんでした(徒然草 第51段)

今年の夏は暑すぎましたね。ようやく秋の気配が感じられるようになりました。
秋といえば、食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋、そして読書の秋!
やりたいこと、食べたいもの、欲しいものは山ほどありますが、先立つものが……。お金があれば、何でもできるのに……と思いませんか。

ところが、どんなにお金をかけても、無駄になることがあるそうです。
『徒然草』の一段を木村耕一さんの意訳でどうぞ。

水車を作ったのに、動きませんでした

(意訳)

どんなにお金と日数をかけても、無駄になることがあります。

大井川から、亀山離宮へ水を引く工事を行った時のことです。

最初は、近くの住民に、水車を作るように命じられました。ところが、多額の経費と日数をかけて作り上げたのに、川に設置しても、水車が回らないのです。

「そんなはずはない」「おかしいな」と、どれだけ修理を続けても、結局、うまくいきません。そこには、役目を果たさない水車が、突っ立っているだけでした。

そこで、これまで水車を作った経験のある宇治の住民を呼んでくることになりました。彼らは、到着早々、いとも簡単に水車を組み立てていきます。しかも、見事に川の水を、くみ入れることに成功したのです。

何事につけても、その道に通じて、専門的な知識や技量を磨いている人たちは、素晴らしいものです。

(原文)
万(よろず)にその道を知れる者は、やんごとなきものなり。(第51段)

『徒然草』からの生きるヒント〜お金をかけて水車を作ったのに、動きませんでした(徒然草 第51段)の画像1

(『こころ彩る徒然草』木村耕一著、イラスト黒澤葵より)

その道のプロに

木村耕一さん、ありがとうございました。どんなことでも、その道のプロには、完成する力があるんだなと思いました。反対に、自分にできないことは、引き受けたらいけないなと反省しました。
その道のプロになれるように、努力したいと思います。