日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #190

  1. 人生

秀吉と家康の宝比べ 〜家康の意外な答えに、秀吉は顔を赤らめ、沈黙した

このところ、暑くなったり、寒くなったり、気温差が激しくて、今日の服装、どうする?と悩む日々ですね。
「どうする」といえば、NHK大河ドラマ「どうする家康」
第38回は「唐入り」でした。天下人となった秀吉は、朝鮮へ出兵、中国を我がものにすると言い出します。一方、戦が劣勢と知った家康は、秀吉に戦をやめるように諫言します。その時に秀吉が家康に、しんみり語ったことが印象的でした。

「おまえさんはええのお。生まれた時から、おまえさんを慕う家臣が大勢おって、うらやましい。わしには誰もおらんかった」と。
たった一人で上り詰めた秀吉の心の内が伝わってくるようでした。
そんな家康と秀吉の考え方の違いが分かるエピソードがありました。木村耕一さんにお聞きします。

「そなたの秘蔵の宝は何か」

ある日、関白・秀吉が、諸大名の前で、
「わしは、天下の有名な宝を、ほとんど集めた」
と言って、指を折りながら刀や茶碗の名を挙げ、自慢を始めました。

やがて、徳川家康に向かって、
「そなたの、秘蔵の宝物は何か」
と問いかけます。

家康の答えは意外でした。
「ご存じのように、私は三河(みかわ。現在の愛知県東部)の片田舎で育った武骨者ですから、珍しい宝物は持っておりません。
ただし、私のためならば、火の中、水の中へも飛び込み、命懸けで働いてくれる部下を500人ほど持っております。この500人を召し連れると、日本中に恐ろしい敵はありませんので、この部下たちを第一の宝と思って、平生、秘蔵しております」
さすがの秀吉も、顔を赤らめて、一言も返事ができなかったといいます。

秀吉と家康の考え方の違いをハッキリ表すエピソードですね。
これはそのまま、二代めで滅びた豊臣家と、300年も続いた徳川幕府の違いとなって、歴史に刻まれているようです。

(『新装版こころの朝』木村耕一編著より)

信頼できる人間関係

木村耕一さん、ありがとうございました。お互いのことを理解しあい、信頼できる人間関係を作るのは、なかなか難しいと思います。家康の言うように、信頼できる人たちとの出会いは、人生で大事な宝物だと思いました。

今回ご紹介したエピソードは、『新装版こころの朝』に掲載しています。詳しくはこちらから。

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