古典の名著『歎異抄』の理解を深める旅へ

NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、小栗旬さん演じる北条義時(ほうじょうよしとき)がついに執権になり、最終章へ。
果たしてどんな結末を迎えるのか、ドキドキしますね。
今回の『歎異抄』の理解を深める旅は、今話題の鎌倉を木村耕一さんが訪れます。
鎌倉幕府三代将軍・源実朝(みなもとのさねとも)は歌人としても有名でした。実朝の歌に表れている心境とは……。
よろしくお願いします。

(古典 編集チーム)

(前回までの記事はこちら)


歎異抄の旅㊵[鎌倉編]鎌倉殿と『歎異抄』(前編)の画像1

「意訳で楽しむ古典シリーズ」の著者・木村耕一が、『歎異抄』の理解を深める旅をします

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13人とは

NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の舞台の一つ、神奈川県鎌倉市を訪ねてみましょう。

──木村さん、そもそも「鎌倉殿(かまくらどの)」とは、何なのでしょうか。

はい、平安時代の終わりに、京都で栄えた平家一門と、東国を中心とする源氏の武士団が激しい戦いを繰り広げました。

この源平の合戦に勝利した源頼朝(みなもとのよりとも)は、鎌倉に入り、本格的な武家政治を開始したのです。

「鎌倉殿」とは、この武家政権のトップであり、鎌倉幕府の将軍のことです。

──ありがとうございます。鎌倉殿とは、鎌倉幕府の将軍と分かりました。「鎌倉殿の13人」とは、将軍が13人いたということでしょうか。

いいえ、鎌倉幕府に、代々13人の将軍がいたという意味ではありません。
幕府を開いた頼朝のもとには、有力な家臣(御家人・ごけにん)が、13人いたことを表しています。
大河ドラマで小栗旬さんが演じている主人公の北条義時も、この13人の中の1人でした。

三代将軍・源実朝

「歎異抄の旅」として注目したいのは、鎌倉幕府三代将軍・源実朝です。

──源実朝ですか。大河ドラマの第39回「穏やかな一日」には、まさに実朝の世が描かれますね。

はい。実朝は、歌人としても有名でした。
多くの歌を詠んでいます。

その中でも、『百人一首』に選ばれた次の歌には、人生を考えさせる響きがあります。

世の中は 常にもがもな 渚(なぎさ)こぐ
あまの小舟(おぶね)の 綱手(つなで)かなしも

(意訳)
世の中は、いつまでも変わらず、平和であってほしいなあ。
浜辺に立って、広い海を眺めるのは気持ちがいいものだ。
目の前の波打ち際には、漁夫の小舟が浮かんでいる。
よく見ると、陸にいる人が、その小舟の舳先に綱をつけて引いているではないか。
なんとのどかな風景だろう。

平和で、幸せな日常生活が、ずっと続いてほしい……。
これは、すべての人に共通する願いだと思います。
どんな心境で、実朝は、この歌を詠んだのでしょうか。

鎌倉市の由比ヶ浜(ゆいがはま)に、実朝の歌碑があります。800年後の今も、のどかな風景が広がっているのでしょうか。

いざ、鎌倉

JRで、東京駅から鎌倉駅へ向かいます。
鎌倉駅からは、「江ノ電(えのでん)」の愛称で親しまれている江ノ島電鉄に乗り換えます。

歎異抄の旅㊵[鎌倉編]鎌倉殿と『歎異抄』(前編)の画像2

住宅と住宅の間をすり抜けるように電車が進み、5分ほどで長谷駅(はせえき)に到着。

歎異抄の旅㊵[鎌倉編]鎌倉殿と『歎異抄』(前編)の画像3

駅から海の方向へ歩くと、道路の先に、日の光を反射して輝く相模湾(さがみわん)が現れてきました。

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浜辺に出ると、多くの人が、ヨットやサーフィンを楽しんでいます。

歎異抄の旅㊵[鎌倉編]鎌倉殿と『歎異抄』(前編)の画像5

源実朝の歌碑は、鎌倉海浜公園(坂ノ下地区)の中にありました。

歎異抄の旅㊵[鎌倉編]鎌倉殿と『歎異抄』(前編)の画像6

黒っぽい石に刻まれています。

──木村さん、なんか傾いていませんか?

はい、なぜか、歌碑の台の部分が傾いています。
じっと見ていると、波をかき分けて、大海を進む大船の形をしていることが分かりました。

──大船でしたか!

そうすると、実朝の歌、

「世の中は 常にもがもな 渚こぐ
あまの小舟の 綱手かなしも」

が刻まれている部分は、大船の帆に当たります。

──とても趣向を凝らした歌碑ですね。

さて、実朝大船、そして『百人一首』に選ばれた歌には、どんな関係があるのでしょうか。
私が歌碑の写真を撮っていると、ちょうど目の前の海を、ヨットが通り過ぎていきました。

800年前の実朝は、この場所に立ち、漁夫が小舟を引く光景を眺めて、
「世の中は、いつまでも変わらず、平和であってほしいなあ」
と願い、歌を詠んだのかもしれません。

何気ない日常の一コマに、心の安らぎを覚えたのでしょう。

──でも、なんだか寂しい感じがしますが……。

そうですよね。どこか、寂しさが漂っているように感じるのは、なぜでしょうか。
その謎を解くには、実朝が鎌倉幕府の第3代将軍に就任するまでの経緯を知る必要があります。

──え、どんな経緯でしょうか。続けてお聞きしたいところですが、続きは次回に。

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