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HSPは恋に盲目?自分も相手も傷つかない“お付き合い”のヒケツ

人間関係の悩みを持つHSPの方は少なくありません。気を遣いすぎてしまうあまり、自分ばかり我慢していることはないでしょうか。

今回の記事では、人間関係のなかでも特に心を惑わす「恋愛」について探っていきます。
ご夫婦共にHSPという、池堂邦枝さん(HSP・HSCカウンセラー)にお話を伺いました。

恋愛を通して見えてきた、人と上手く付き合っていく秘訣とは?

すでにご結婚されている方にも、ぜひ読んでいただきたいインタビューです。
(1万年堂ライフ編集部)

インタビューのお相手

HSPは恋に盲目?自分も相手も傷つかないお付き合いのヒケツの画像1
池堂邦枝さん
大阪府在住の看護師。2018年からHSP・HSCカウンセラーとして活動。夫婦のどちらもHSPで、娘3人は全員、個性にあふれたHSC。

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好きになるのは「気を遣わなくていい人」

――プライベートなことで恐縮ですが、まずはご主人との馴れ初めをお伺いしてもよろしいでしょうか。

池堂邦枝さん(以下、池堂):夫は、高校の同級生だったんですよ。たまたま隣の席になって、じわじわと仲良くなったというか。

――HSPの提唱者である、エレイン・アーロン氏の研究によれば、HSPは非HSPよりも「激しく恋に落ちる」ことが言われています。池堂さんの場合は、そのようなご経験がなかったのですか?

池堂:なかったというか、たぶん無意識に感情をセーブしてたんだと思います。周りが見えなくなるほど恋に盲目になってしまう自分が怖くて、そんなに夢中になった人を失った後、自分がどうなってしまうのかも怖い。

私は親が厳しい人だったので、子どもの頃から色々なことを我慢し続けていました。だから、思春期の時も「好きになるのはこれぐらいまで」って、自分に思い込ませてたんだと思います。

――なるべく恋愛に振り回されないように。

池堂:そうですね。誰かと一緒にいると相手のことばかり考えて、しんどくなってしまうことが多いです。だから好きな人なら、なおさら。見ているだけでドキドキしてしまうような人は、恋愛対象ではなく、憧れの人なんです。

――パートナーとしては向いていないということですか?

池堂:若い時は激しく恋に落ちるのがすごく楽しいと思うんですけどね。長い目で見ると、いつも気を遣わないといけなくて、いつかしんどくなると思います。友達に会いに行く時はちょっとおしゃれするけど、この人と会う時はいいやって思えるぐらいの人を選んだほうが自分にとって良いと思うんですよね。

――いつも通りの自分でいられる人を選べたらいいですよね。

池堂:そうですね。でも人を好きになるときって、そんなに冷静にはなれないかもしれないけど(笑)

HSPは子どもが少ないほうが良い?

池堂:その人のことばかり考えて、頭も心もいっぱいになってしまうというのは、夫との恋愛より、子どもを産んだ時に感じました。自分の命をかけて産んだ存在って、もう好きで好きでたまらないんですよ。

――理想のママの姿だと思います!

池堂:でも、好きが大きくなればなるほど、しんどかったんです。もう四六時中、考えないようにしても考えてしまうんですよ。

――まさにHSPの強い愛情……。池堂さんの場合は、恋愛よりも子育てで激しく心が動かされていたんですね。

池堂:アーロン博士の著書『敏感すぎてすぐ「恋」に動揺してしまうあなたへ。』を読んで、印象に残っているのが、HSP同士の夫婦であれば「子どもは少なく」と書かれていたことなんですよね。

――それは、どうしてですか?

池堂:HSPは刺激を感じ取って疲れやすい分、休む時間も必要です。でも、育児には休みがありません。できるなら、「子育てから離れる時間を取れるように」ということをアーロン博士はおっしゃっています。

――小さいうちは特に、1人を育てるだけでも大変ですもんね。

池堂:本を読んで、すごい納得したんです。「私は3人も産んじゃったからしんどいんだ~」って(笑)。でも反対に、喜びも3倍ですよね。うちは子どもも全員HSCなので、子育てで悩むことも多かったんだけど、やっぱり私は娘が3人いて良かったと思っています。

家族以外で自分を認めてくれる存在が必要

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池堂:子どもの話でいうと、長女と次女には彼氏がいるのですが、彼氏ができてから精神的にとても安定していると感じています。

特に長女は気性が激しく家ではよく荒れていましたが、彼氏のおかげでずいぶんと穏やかになりました。次女は彼氏ができてから幸せオーラ全開で、私まで嬉しくなります。

――おふたりとも素敵な恋愛をされているんですね!

池堂:本当に良かったです。家族の中では、愛されているのが当たり前になってきてしまう部分があると思います。HSPにとって、家族以外で自分を認めてくれる人の存在がどれだけ重要なのかを実感しました。

――相手にもよるかと思いますが、お付き合いの際はHSPであることを伝えたほうが良いのでしょうか?

池堂:自分の気質に合う人とお付き合いができたなら、あえて言わなくても良いと思います。ただ、付き合ってみたけど上手くいかない時は、相手がどんな気質なのか気にしてみてもいいと思います。他人だから、どうしても理解できないことだってあるだろうし。「相手と違うからダメなんだ」じゃなくて、「私はこうだけど、この人はそうなんだ」って受け止められたらいいですよね。

HSPだけじゃない!円滑な人間関係を作る方法

――自分と相手の違いを受け止めるというのは、「HSPの恋愛」に限った話ではないかもしれません。

池堂:そうですね。だから、HSP同士でも上手くいったり、いかなかったりするんですよ。パートナーと同じように感動を味わいたいっていう人もいれば、自分が落ち込んだ時に違う考え方を教えてくれる人のほうがいいっていう人もいて、本当に人それぞれです。

――必ずしも、似た相手を好きになるということではないですよね。

池堂:相手といるときに、どう感じているのかが重要ですね。自分の感覚を信じるのが1番いいんじゃないかな。心がザワザワしてないか確かめてみて「何かわからないけど嫌だな」と思ったら、「嫌だな」の気持ちも大事にしてみる、みたいな。

――無意識に我慢してしまう前に、振り返ってみる。

池堂:いろんな人の中にいると、感覚が鈍くなって、自分の気持ちに気付けないことが多くなるんですよね。だから、ちゃんと1人の時間を作ってみるのがいいと思うんです。

――相手が目の前にいない時こそ、考えるべきなんですね。

池堂:「あの人といた時は頑張りすぎちゃってたな」とか、「あの人といると自分らしく振舞えるな」とか、恋愛を通して本当の自分を知る経験は必要だと思いますよ。少し客観的に考えてみると、自分がどんな人間なのかわかるようになって、自分のことを大事にしてあげることにも繋がる気がします。

――では、相手と良い関係を築いていくにはどうしたらいいのでしょうか?

池堂:自分とは違う価値観や感じ方を、尊重しあうことが大切だと思います。

例えば、HSPと非HSPの人が接していると、どうしても共感できない部分があると思うんですよね。「何か自分と違うな」って。でもそんなとき、HSPという概念を知ることで関係性が変わって、どっちも楽になることがあるんです。

――お話を伺っていると、HSPじゃない人こそHSPの気質を知ると良いのではないかと思います。

池堂:HSPに限らず、性的マイノリティや発達障がいの方にも同じことが言えますね。色々な人がいるけれど、誰もが認められる世の中が来たらいいな。

もちろん、恋愛関係だけじゃなくて、家族、友達、仕事、どんな人間関係であっても同じです。自分と相手を知ること、そして受け入れることが、人と上手く付き合う秘訣だと思います。

***

人間関係で悩みごとがあると、真っ先に思い浮かぶのは相手の顔。しかし、そんな時こそ自分の気持ちに耳を傾けてみることが大切なのだと教えていただきました。

HSPといっても、敏感さは人によってさまざまです。「じゃあ自分はどうだろう?」と振り返ったときに、ようやく本当の自分を見つけることができるのではないでしょうか。

池堂さん、ありがとうございました!

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池堂邦枝さん
大阪在住。看護師、認定子育てハッピーアドバイザー。HSP・HSCカウンセラー。HSPの概念を知り、生きづらさや育てにくさが緩和した経験から、2018年よりHSP・HSCを対象にセミナー、カウンセリングを始める。セミナー参加者で作るコミュニティ「☆ナニワ HSP会☆」では定期茶話会を主催。ブログ「十人十色自分色」ではHSPの視点から記事を発信している。

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