夏休みも終わりが近づいてきました。
山のように残った宿題を前に、「どれから手をつければいいか…」と悩んでいる子も多いのではないでしょうか。
特に「読書感想文」は、宿題のために無理して書かせようとすると、かえって本嫌いになってしまうことも。
本を読む喜びを体験しながら、スラスラ書ける! そんな「読書感想文」の書き方について、家庭教育研究家の田宮由美先生に教えていただきます。
埋めるだけで読書感想文がスムーズに書ける、特製サポートシート付き(ダウンロード可)。
この記事では特別に、「青少年読書感想文全国コンクール(2022年度)」小学生の部の課題図書2冊を例に、具体的なヒントもお伝えしています。
(1万年堂ライフ編集部)

皆さん、こんにちは。家庭教育研究家の田宮由美です。
夏休みの学校の課題と言えば、まず「読書感想文」が頭に浮かぶのではないでしょうか。
本を読んだ感動を文章にするのですが、苦手意識があり、苦労している子どもが結構多いものです。
子どもが読書感想文に取り組むとき、親はどのようにフォローすればよいのでしょうか。
子どもが読書好きになる声のかけ方や、スムーズに書けるコツをお伝えします。
読書感想文を書くとき、最も大切にしたいこと
読書感想文に取り組むにあたり、最も大切にしたいこと。それは、「読書が好きになること」だと思います。読書感想文を書くことにより、読書が嫌いになっては、本末転倒ではないでしょうか。
「読書感想文」は、文字の通り、読書後の感想を文章にまとめることで、内容を頭の中で整理し、本を通して得たものに気づき、感想を書き、読書の素晴らしさを知っていくことです。
「読書感想文を書きなさい!」「早く宿題を済ませなさい!」と言うのは、読書感想文に暗い思い出が残るだけでなく、本そのものを嫌いになっていく可能性がありますので、言ってはいけないNG対応です。
子どもが読書感想文に取り組むとき、親はどのようにアドバイスすれば、読書好きなり、スラスラと読書感想文を書けるのでしょうか。そのサポート手順とコツを説明します。
スラスラ書けて、読書が好きになる親サポートの手順
【サポート①】親子で本選びを楽しむ
まずは、読書する本を選ぶところからサポートしましょう。
親が「この本にしなさい」と言うのではなく、子ども自身が何か魅かれるものを感じることが大切です。たとえば、
「興味ある分野について書かれてある」
「友だちや先生に薦められた」
「タイトルが気になった」
「表紙のイラストに引かれた」
など、最初の理由は人それぞれです。そこから「読んでみたい」と感じた本を選ぶよう、アドバイスするとよいでしょう。
そのあとは次のような手順で、書くことをサポートしていくのがいいと思います。
【サポート②】場面ごとに主だった出来事をまとめる
本を読み終えたら、要点を整理してみましょう。紙に書いて、登場人物の名前、場面の移り変わりなどを把握します。
そして場面ごとや、時間の流れに沿って、出来事を具体的に挙げていくと整理しやすいでしょう。
たとえば『桃太郎』なら……
①おばあさんが桃を拾う ②桃の中から赤ん坊が生まれ、「桃太郎」と名付ける ③成長した桃太郎は村を騒がせている鬼を退治に行く ④鬼ケ島に行く途中、犬、サル、キジに出会い、きび団子をあげて仲間にしていく ⑤皆で力を合わせ、人々を困らせる鬼を退治する
【サポート③】主人公に焦点を当てる
全体の流れをザックリつかめば、次に細かく掘り下げていきましょう。
主人公だけを取り上げ、性格や生い立ち、行動の特徴、感情の変化など、時間経過に照らし合わせて考えてみましょう。
そして主人公の生き方や考え方をどのように感じたか、まとめてみましょう。
たとえば『桃太郎』なら……
【主人公の変化】
桃太郎はたくましく育った。村を騒がせる鬼のうわさを聞きつけ、許せないと感じた。【感じたこと】
・桃太郎は正義感が強いと思う。
・大事に育ててくれたおじいさん、おばあさんのことを心配したのかもしれない。
【サポート④】感動した場面を思い起こす
全体を通し、最も感動した場面はどこだったかを思い起こしましょう。
心に残っている言葉、印象的な場面や出来事を書き出してみるといいですね
たとえば『桃太郎』なら……
正義のために、自分より大きな強い相手に立ち向かう勇気。
【サポート⑤】自分の思いや考えと照らし合わせる
次に、主人公の言葉や行動と、最も感動した場面の関連性がどのようになっているかを考えます。
そして自分の場合や、自分の気持と照らし合わせ、
「自分なら○○した」
「私だったら△△と考える」
「ボクも、□□と行動しただろう」
などと考えてみましょう。自分の性格と似ている、あるいは自分の意見と反対である、などを表すとよいですね。
たとえば『桃太郎』なら……
ボクが鬼退治に行くとしたら、鬼が怖いので、もっとたくさんの人に声を掛けると思う。
【サポート⑥】読んだあとの行動の変化を考える
最後に、この本を読んで、自分の言動を変えていこうと思ったこと、得たことや、考えが変わったこと、また自分への課題などを考えてまとめるとよいでしょう。
たとえば『桃太郎』なら……
「自分一人の力だとできないことも、皆で協力し合うことで、できるんだ!」と思った。
困難に出遭っても、友達と協力し合って、勇気を持って乗り越えていきたいと思った。
【もう一歩先のアドバイス】さらにスラスラ書ける親サポートのコツ
ポイント個所に付箋を貼る
以上、6つのサポートの手順をお伝えしましたが、それらに関するページに付箋を貼っていくと、感想を文字にするとき、見やすくなります。
ポイントを書き出す前に、付箋を貼ることもアドバイスすると、よりスムーズに取り組めるでしょう。
メモ用紙に記入し並べる
いきなり原稿用紙に書くのではなく、まずは要点や感じたことをメモ用紙に書き出していくのもオススメです。
そのメモ用紙を並べ替え、文の構成を考えていくと、文章が書きやすくなります。
【仕上げの親サポート】書き終えればチェックし修正する
子どもが感想文を書き終えたら、必ず読み返し、次のポイントを一緒にチェックしましょう。
✅基本的な原稿用紙の使い方、文章の書き方の決まりは守られているか
✅あらすじだけになっていないか
✅感想だけになっていないか
✅自分の考えや生き方に影響を与えた個所がきちんと書かれているか
こういった点を中心に見直すとよいでしょう。
最後に、子どもが書いたものを評価するのではなく、「お母さんも○○ちゃんと同じように感じていたの!」「○○の感想文を読んでたら、お父さんもこの本、読みたくなったよ」と共感したり、ほめる言葉をかけたりしていきましょう。
この機会に、親子で興味ある本を読み、感想を語り合ったりするのもオススメです。
ぜひ読書が好きになるよう、親子で楽しく取り組んでいきましょう。
まとめ:読書感想文は「考える力」「表現する力」を養う
夏休みの宿題の中で重くのしかかるのが、「読書感想文」というお子さんは多いと思います。
ですが、子どもが読書感想文を書くことにより、最もあってはならないのは、読書が嫌いになること。
そうしないためには、「早く書きなさい!」ではなく、書きやすくなるような言葉がけや、適切なサポートが大切です。
そして、最も育ってほしいのは、「考えを深める力」や「人の立場に立って考えること」、そして「自分の考えや思いを伝える表現力」だと思います。
子どもが本を好きになるよう、そして、読むことにより、深く考える習慣がつくようサポートしましょう。
この夏休み、子どもの世界がより広がることを願っています。
読書感想文全国コンクールの課題図書(2022)に挑戦!
「時間がないから、もう読書感想文なんて書けない…」と悩んでいるお子さんのために。
多くの学校が課題図書にしている「青少年読書感想文全国コンクール」の2冊を例に、具体的な書き方のヒントをお伝えします。
前向きに取り組むための手助けにしていただけたら幸いです。
小学校低学年の部(1・2年生)
『つくしちゃんとおねえちゃん』(福音館書店)
いとうみく 作
丹地陽子 絵
あらすじ
少しうっかり屋さんのつくしちゃんと、しっかり者の姉の日常を妹の視点から記している。自慢の姉に対し、モヤモヤやイライラを感じるときもあるが、お互いが大切にし合う気持ちを描いた物語。
主人公はどんな人?
・つくし:小学2年生の女の子。2つ年上の姉・かえでを自慢に思っている。
主人公をどう思った?
自分が悪いと思えばすぐに謝る素直な女の子だと思った。いつもおねえちゃんぶってえらそうにする姉に対し、モヤモヤやイライラする気持ちを抱くこともあるが、尊敬し、すごく大切にしていると思った。
その他の登場人物
・かえで:つくしの姉。小学4年生。しっかりしていて頑張り屋さん。右足が悪い。
・母:つくしとかえでの母親。
自分がどう思ったか?
① 心に残った場面・セリフ
② どうして、心に残った?
③ 自分が主人公の立場だったらどうしていた?
④ これからどうしたいと考えた?
【具体例1】
①つくしのうっかりのせいで、遅刻しそうになったとき、姉がつくしを先に行かせたところと、つくしが先生に、姉の遅刻の説明を一生懸命にする場面。
②「自分は大丈夫」と、妹を先に行かせた姉の思いやりの気持ちや、姉の遅刻の理由を一生懸命説明する妹の姿に、お互いがお互いを大切にしている気持ちを強く感じたから。
③姉が遅れてくる事情をあのように的確に説明できるだろうか。できないと思う。
④自分も周りの人の思いやりの気持ちをきちんと受け止め、冷静に物事を説明できるよう心がけたいと思った。
【具体例2】
①姉のかえでにボールが回ってこないのを、つくしが見ている場面。
②つくしの胸がぎゅとなった、という表現に姉を思いやる気持ちと優しさを感じたから。
③姉にボールが回ってこない事実を見るだけで、自分の胸がきゅっとなるほど、自分事に感じないだろうと思う。
④「相手の立場に立って考える」とは、こういうことなんだなぁと感じ、自分も人の痛みや困りごとをその人の立場になって感じ、考えられるようになりたいと思った。
感想・まとめ
・自分もきょうだいや友達と、こんなにも信頼し合い、温かい関係を築きたいと思う。それには、まず自分が相手を大切にすることから始めてみようと思った。
小学校高学年の部(5・6年生)
『捨てないパン屋の挑戦~しあわせのレシピ~』(あかね書房)
井出留美 著
あらすじ
パン屋さんに生まれたパン嫌いの少年が、国内外のこだわりのパン屋に修行に出かけ、さまざまな出会いの中で、環境問題などを考え、しあわせのレシピを求めるパン職人になっていく物語。
主人公はどんな人?
・田村陽至:家業がパン屋さんに生まれたパン嫌いの少年。
子どもの頃は、「パンなんて、この世からなくなってしまえ」と思うほど、パン嫌いだった。昆虫が大好きで、将来は探検家を夢見ていたが、やがて環境問題を考えるパン職人になっていく。
主人公をどう思った?
思い立ったら、すぐに行動に移す。世界を飛び回るほど行動力のある人だと思った。
パンを売ることだけでなく、地球や環境のこと、また多くの人の未来も考える人だと思った。
主人公に影響を与えた人物(店や舞台になっている地域なども)
・大学の環境生物学のS先生:環境問題に関心を持つきっかけになった先生
・遊牧民のソミヤ少年:大草原を馬で駆け巡るという夢を一緒に体験した少年
・留学生のダリア:食べられるパンを捨てることに大反対した友人
・ふみさん:パン工房を手伝ってくれていた女性、後に田村さんと結婚
自分がどう思ったか?
① 心に残った場面・セリフ
② どうして、心に残った?
③ 自分が主人公の立場だったらどうしていた?
④ これからどうしたいと考えた?
【具体例1】
①田村さんが、何度も国内外のパン屋に修行に出かけるところ。
②納得のいくパンを作ることへの情熱がすごいと思ったから。
③自分は、こんなにもすぐに行動を起こせるだろうか。
④目標を持って、どこへでもフットワーク軽く学びに行きたいと思う。
【具体例2】
①モンゴルでの羊の解体場面
②私たちは、生きものの「いのち」を頂いていることをあらためて感じたから。
③羊の解体なんて、怖くて見られないと思う。
④視野を広げるためや、真実を見るために、様々な物事から目を背けないようにしたいと思った。
感想・まとめ
・自分に取り組める環境問題は何があるのか、考えるきっかけになった。
・日頃、何気なく食べているパンにもさまざまな「いのち」が宿っていて、栄養としてからだを支えていることをあらためて感じた。これからは残さず、感謝しながら食べるようにしようと思った。
読者感想文を書こうと思っている皆さんへ
このように整理していくと、物語の流れや、主人公の心の変化などが分かりやすいと思います。
そして、このように書き出した「心に残る場面」の中から、特に感動した場面や言葉はどこかを考え、それに焦点を当てて、書きたいことを絞っていくと、スムーズに読書感想文に取り組んでいけると思います。
内容を深く理解すると、作者の「物語を通して伝えたいこと」が、よりしっかりと見えてくるでしょう。それを読み解き、感じていくのが読書の醍醐味のひとつでもあります。
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