認知症の心の世界と認知症ケア #1

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認知症予防のために知っておきたい!3つの原因と初期症状

日本では65歳以上の10人に1人、85歳以上の3人に1人が認知症といわれます。認知症は完治が難しく、予防が重要になります。

その認知症の原因、そして今からできる予防法を内科医の佐々木彰一先生に聞きました。

昨今、認知症の高齢者が増加しています。日々新聞紙面を賑わせています。

認知症は発症した本人にとって深刻な病気ですし、介護にあたる家族の負担が重い病気です。しかも認知症の大多数は残念なことに、根治させることが難しい病気です。

自分は認知症にならないだろうか?認知症にならないためには、どんなことに気をつけたらよいのだろうか?と心配している方も多いでしょう。

認知症の原因と今からできる予防法を紹介します。

そもそも認知症の症状とは?「記憶障害」+「失認」

認知症は、記憶障害失認などによって、日常生活に支障が出ていることを言います。

①失認

失認とは、認識できないということで、目は見えているけれども、その人をその人と分からない、声は聞こえるけれど言葉の意味が分からない、ということです。

進行すると、自分の居場所や家族・知人の顔も分からなくなってしまいます。手の感覚も分からなくなるので、携帯電話にストラップを通すなど細かい作業も難しくなります。

②記憶障害

認知症の記憶障害は、健康な人の物忘れとは少し違います。

「先生、最近昼頃になると朝何を食べたか覚えていないのです。私は認知症ではないでしょうか?」と心配そうに病院に来る患者さんがあります。

こういう人は大抵、大丈夫です。認知症の人は食べたこと自体を忘れて、「ちっとも嫁が食事を出してくれん!」などと言われます

出来事(この場合は食べたこと)そのものを忘れてしまう記憶障害が、認知症の記憶障害の特徴です。

③遂行機能障害

遂行機能とは、物事を論理的に考え、計画し、実行に移す能力をいいます。

身近な作業で、この能力が大事な作業が炊事です。炊事は、実は大変複雑な思考・判断の上に成り立っています。

そのため認知症の方の初期症状として、料理が上手くできなくなる人があります。

④失語

言いたいことがあっても、言葉が上手く出てこず、言いたいことを伝えられない状態をいいます。

原因別に3つに分かれる認知症

ではそのような認知症になぜなってしまうのか、原因を見ていきます。

認知症は原因別に大きく3つに分けられます。

①変性性認知症(アルツハイマー型、レビー小体型など)

変性性認知症は、全認知症の6割を占めます。

変性性認知症とは、脳にたまったゴミ(タンパク質)が悪さをして脳細胞を変性させることで起こります。変性とは、”生卵”が熱の作用で”ゆで卵”になるように性質が変わることをいいます。

脳にゴミがたまる原因はまだ十分には解明されていませんが、血管の働きが弱くなり、ゴミが排泄できなくなるのが一因と考えられています

②血管性認知症

血管性認知症は、全認知症の3割を占めます。

脳にはたくさんの血管が張り巡らされ、脳細胞に栄養を与えています。その血管がダメージを受けたために起こる認知症が、血管性認知症です。用水路の一部が絶たれると田んぼに水が入らず、稲が枯れてしまうようなものです。

ゆで卵を生卵に戻したり、一度枯れた稲を元通りにすることは困難です。

ちょうどそのように、これらの認知症は発症すると根治させることは大変難しいため、予防が大切です

③その他の認知症

頭の中に水が溜まり過ぎたり、血の塊ができたり、ビタミン不足やアルコールを取り過ぎたりしても、認知症を発症します。これらの認知症の中には、水や血の塊を取り除いたり、ビタミンを補ったりすることで改善する認知症があります。

病院で治療可能な認知症がありますから、認知症を疑うときには、まず医療機関を受診してもらいたいと思います。

認知症予防は「血管を守る」こと

変性性認知症、血管性認知症で認知症全体の約9割を占め、その発症には血管が大きくかかわっています。

ですから血管を守ることで、認知症の予防、また発症後も進行を抑えることにつながります

たばこ・高脂血症・高血圧症・糖尿病・内臓脂肪型肥満は、いずれも血管にダメージを与えます。これら生活習慣病を予防し治療しましょう

血管の病気は症状が表れにくいので、年一回の健診を受けるとよいでしょう。

生活習慣病の予防には運動食事が大切です。

運動から解説しましょう。

身体を動かすと脳の血流が良くなりますから、適度な運動も大切です

運動は、筋力トレーニング有酸素運動に大別されます。

認知症予防法① 筋力トレーニング

一例ですが、筋力トレーニングは週2回、スクワット・腕立て伏せ・腹筋を行うとよいでしょう。

各々30秒間でできる限り運動を行い、30秒休む。これを3回繰り返す。

すると9分間で一通りの筋力トレーニングが出来ます。

毎日行うのではなく、3日に1回程度行うと、筋肉の負荷と休息のバランスが取れてよいと言われています

認知症予防法② 有酸素運動

有酸素運動は、筋力トレーニング以外の運動と大雑把に考えていただいて構いません。

散歩でもランニング、友人とのキャッチボール、バドミントンでもなんでも結構です。

これもまずは週2回、1回30分程度行うことを目標にしてください

有酸素運動に取り組む第一歩として、「歩数計を付ける」ことをお勧めしています。歩数計を付けるだけでも、自然と歩数を意識するようになり、一日の目標(男性8000歩、女性7000歩)を達成しやすくなります。

食事も、お伝えしたいポイントがあるのですが、一度に話をすると大変ですので、次の機会にしたいと思います。

まとめ

  • 認知症の症状として、認識できなくなる「失認」「記憶障害」、身近な作業に支障も出る「遂行機能障害」、言葉がうまく出なくなる「失語」があります
  • 認知症は原因別に3つに分かれ、全体の6割を占める「変性性認知症」、全体の3割を占める「血管性認知症」、その他、ビタミン不足やアルコールの取り過ぎでかかる認知症があります
  • 認知症の発症は血管が大きくかかわっているため、「血管を守る」ことが認知症の予防につながります。生活習慣病によって血管にダメージが与えられるため、生活習慣病の予防に適度に運動をしていきましょう

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