心根育(ここねいく) #10

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【特別公開】子どもの意欲を育むコミュニケーションのヒケツ|セミナーレポート

「『子どもの“ありのまま”を認めることが大切』……わかっているけど中々実践できない!」

そんな方の悩みに答えるオンラインセミナーが、2021年12月11日、生活総合情報サイト「All About」さん主催で開催されました。
講師は、弊社発刊『比べない子育て』の著者で、All About子育てガイドである、家庭教育研究家の田宮由美先生。今までに解決した子育ての悩みは、なんと1000件を超えます。
そんな田宮先生が、「子どもの“ありのまま”を認めつつ、意欲や学力を育む」子育てのポイントを伝授してくださいました!
本記事では、セミナーの内容を、ダイジェストで特別公開♪(編集部より)

▼生活総合情報サイト「All About」さんについて、詳しく知りたい方はコチラから
生活総合情報サイト「All About」

揺るぎない自信を育む「比べない子育て」

【特別公開】子どもの意欲を育むコミュニケーションのヒケツ|セミナーレポートの画像1

皆さん、こんにちは。家庭教育研究家の田宮由美です。
「比べない子育て講座」にようこそ! 日々の生活で実践しやすい、声かけの方法を説明いたします。


子どもの成長に伴って現われる、こんな悩み。

「隣のあの子は、もう数字を100まで数えられるのに、うちの子はまだ10までだって数えられない。。」
「クロールを泳げるお友達だっているのに、うちの子は水に顔をつけるのが精いっぱい……大丈夫なの?」

周りの同年代の子と比べて焦りを感じたり、一喜一憂して不安になったりすることがあるかと思います。この「周りと比べる」ということについて、もう少し掘り下げて考えてみましょう。

「比べる」ことで生じる危険
①比べるフィールドが変わると、自信が崩れやすい
②ほめられたことを自分の価値と思い込む

【特別公開】子どもの意欲を育むコミュニケーションのヒケツ|セミナーレポートの画像2比べることで、当然優劣が生じてきます。比べて、もしわが子のほうが劣っていると感じた場合。焦ったり、落ちこんだり、「どうして出来ないの?」とイライラしたり、時には大声で怒鳴ったり。これが子どもにとっても、親にとってもマイナスになるのは、感じられると思います。

ですが、より一層注意が必要なのは、「わが子のほうが優れている時」なのです。
わが子のほうが優れていると感じた場合、親としては嬉しいですね。そして子どもをほめることでしょう。それにより子どもは、自信がつき、さらなる意欲に繋がります。
ですので、比べて優れている場合は、メリットが大きいのでは?と思われるかもしれません。
ですが、この自信や意欲には、危険な落とし穴が含まれているのです。

「比べて優れている」から得た自信の落とし穴

①比べるフィールドが変わると、その自信は崩れやすい
(例. クラス替えで、自分よりもっとできる子が現れた)
②「ほめられた能力=自分の価値」と思い込む
(例. 得意だったサッカーを怪我で辞めなければならなくなり、自分の価値を見失う)

子どもには、環境に左右されない本物の自信を持つ子に育ってほしいと思われることでしょう。
そのような自信を育むに必要なのが、「比べない子育て」です。
周囲とは比べずに、子どもをありのまま認め、その個性を伸ばしていく。そんな育児のヒケツを解説します。

比べない子育てが育む「心の根っこ」って?

周りと比べずに、その子自身を認め肯定していくと、それはかけがえのない【自尊感情】になります。
それらを分かりやすくするために、イメージ図にしてみました。【特別公開】子どもの意欲を育むコミュニケーションのヒケツ|セミナーレポートの画像3子どもが小学校に入学すると、どうしても周りと比べ気になるのが、「学力」や「能力」。
それを木で例えると、1番てっぺん、葉っぱの部分です。
「生活習慣」やルールを守る「規範意識」が枝の部分。「意欲」や「折れない心」が幹の部分。そして、それらを支える「心の根っこ」が地中に埋まっている根の部分です。

木の根っこは地中に埋まっていて見えませんが、植物全体を支える大切なものです。心の根っこも、目には見えないですが、その人を支えている大切なもの、というイメージを持っていただけるのではないでしょうか。

根っこの部分をしっかり大地に張り巡らせ、メンタル面や能力を茂らせていくのが「心根育」(ありのまま子育て)です。
この度の新刊『比べない子育て』では、そこに親の全体的な関わりとして、リフレーミング(=見方を変え、相手や自分のことをポジティヴに捉え直すこと)を使い、親自身比べないこと、つまり親の心の根っこも強めていくコツもお伝えしています。

「乗り越える力」を育むには、自然な感情を受け止めよう。

人生は調子のよい時ばかりではありません。落ちこんでいる時も、上手くいかず、悩む時もあります。その時親は、
「しっかりしなさい」「頑張りなさい」「それくらいで弱音を吐いてどうするの!」
と叱咤激励することがあるでしょう。

でも、私たち大人もそうですが、とても辛いことがあり悩んでいる時、「もっと頑張れ」と言われても、頑張れないから悩んでいるのです。「もっと頑張ればよい」と言われても、自分にとっては解決にはならないでしょう。

「乗り越える力」を育むヒケツ

「悔しい・悲しい気持ちをしっかりと受け止める」

みなさん、こんな経験はありませんか?
きょうだいゲンカをしていた子どもが、お母さんの膝でワーッと泣いたかと思うと、数分後にはケロッとして、またきょうだいと遊んでいる、そんな場面です。【特別公開】子どもの意欲を育むコミュニケーションのヒケツ|セミナーレポートの画像4実は、子どもは親の膝で思いっきり泣くことで、「悔しい気持ちを、親がわかってくれた。受け入れてくれた!」と納得できているのです。
そうすることで、安心感や納得を自分の中で得て、次に向かおうという気持ちが生じてくるのですね。

「折れない心」とは、硬く強固な心ではありません。しなやかで環境に適応できる心のことです。
そのためにも、子どもの自然な感情を受け入れるのが大切です。

一生モノの「時間管理術」が身につく! 声かけのポイント3つ

忙しい朝、子どもに行動を促すのって本当に難しいですよね。
「早くしなさい! 急いで!」と声を荒げたくなるものですが、これは子どものペースを否定することに繋がりますし、何より、親の言うことを聞けばいいと思って、自分で考えるのをやめる習慣がついてしまうから、良くありません。
子どもに届きやすく、考えて行動ができるようになる声かけのポイントを、3つお教えします。

自分で考えて行動できるようになる! 行動を促す時のポイント3つ

①急がないといけない理由を伝える
「そろそろ家を出ないと、バスに乗り遅れちゃうよ」
②行動を一つに絞って言う
「早くごはん食べちゃおうか」その次に、「じゃあ次は歯磨きかな」
③具体的な時間を伝える
「7時には食べ終わろうね」

こうやって促すことで、子どもは一つ一つ考えて行動できます。【特別公開】子どもの意欲を育むコミュニケーションのヒケツ|セミナーレポートの画像5

「学力・能力」を伸ばすヒケツは、日常で使うこと。

最も比べてしまうものの一つ、「成績」や「学力」。特に小学校に入学すると、イヤでも比べてしまいがちですね。
「あまり『勉強勉強』と追い立てたくない……」と思っていても、やはり学力は重要です。将来の夢を実現させる場合、入学試験や資格試験というハードルはありますね。
では、どのように伸ばしていくか。

「学力・能力」を伸ばすヒケツ生活の中で、一緒に体験をさせ、その中で子どもが疑問を抱き、それを解決するために学びに結び付ける

【特別公開】子どもの意欲を育むコミュニケーションのヒケツ|セミナーレポートの画像6「社会的対話」から「自己内対話」に変換させること。
これは、例えば親がスプーンなどの道具を使って食事をしている様子を見て「こうやって、何かを使って食べるんだな」と幼児が、親を見て学び、自分の中に取り入れ、習得していくことです。

ですので、小学校での勉強も、ゼヒ生活の中で体験をさせてみてください。子どもが疑問を抱き、それを解決することで「わかった! 嬉しい!」「便利! 面白い!」と思わせることが大切なのです。

具体的には、飲み物を分けるときにわり算を使ってみたり、野菜や果物の名産地を教えて、実際に食べてみたりすることなんてオススメですね。

ワークで診断! 「ありがとう」の受け取り方、あなたはどのタイプ?

さぁ、ここまでは「子どもを比べない子育て」の講義でした。次に、保護者の方自身が「比べない親」になるためのワークをやってみたいと思います。

「ありがとう」を上手に受け取ることが大切。

ワークのキーワードは、「ありがとう」。
言った側も言われた側も心温まる素敵な言葉ですね。この言葉の授受が、とっても大事なのです。
「ありがとう」と言われると、人は「認められた! 肯定された!」と感じることができます。この満足感が土台にあってこそ、人は夢を追いかけられたり、相手に優しくなれたりするのです。

つまり、上手に「ありがとう」を授受できれば、相手も自分自身も肯定でき、お互いありのままを認められるようになるでしょう。

今回は「ありがとう」の使い方の癖を、3つあげました。自分が一番強いと思われる傾向にチェックを入れて下さい。【特別公開】子どもの意欲を育むコミュニケーションのヒケツ|セミナーレポートの画像7

「A. 『ありがとう』の気持ちを伝え損なう」タイプのあなたへ

Aを選んだ方は、家族や友達に対して照れ臭がったり、他人行儀さを感じたりして「ありがとう」を伝え損なってしまう人ですね。
わかってくれているだろうと思っていても、実際は相手に伝わっていないことが多く、「きちんと伝えておけば」と後悔することも多いです。

日頃から人に言葉をかけるのが苦手だったり、「ありがとう」の言葉の価値を過小評価している傾向にあります。
Aの方が今すぐできるトレーニングは、こちらです。

Aタイプの人へのアドバイス

①挨拶は先にするように心がける
②説明はできるだけ相手にわかりやすく話す
③相手に応援や励ましの言葉をかける

挨拶は「相手の存在を認め、肯定的に受け止めている」ことを伝える最も簡単な言葉です。挨拶や相手の立場に立った声かけをするところから、心がけると良いでしょう。

「B. 『ありがとう』の気持ちを受け取り損なう」タイプのあなたへ

「ありがとう」と言われた時に、「いえいえ、大したことないです」などと、謙遜してしまうのがBのタイプです。Bを選ぶ方が最も多いですね。(会場)
謙虚で控えめな人が多いのですが、謙遜が積み重なると、自分の実力を正当に評価せず見落としてしまい、自分自身を過小評価する傾向に繋がっていきます。

日本人は特に「謙虚は美徳である」意識を強く持っています。ですが、「ありがとう」の授受においては、むしろどんどん受け取るべきなのです。それが相手にとっても嬉しいということを、心に留めてくださいね。

Bの方が今すぐできるトレーニングは、こちらです。

Bタイプの人へのアドバイス

①謙虚は美徳でないと意識する
②相手の気持ちに共感したら、頷きなどのリアクションをする
③町内会や家庭内など、どこかでリーダーの役割を引き受けてみる

相手の気持ちに対し、素直なリアクションを返す練習はとても効果的です。「やったー!」「嬉しい!」などの「!」マーク付きの言葉を、ゼヒ伝えるようにしてみてください。
あなたの素直な喜びには、自分と相手の心を温める力があります。

「C. 『ありがとう』を強要してしまう」タイプのあなたへ

規則やマナーをきちんと子どもに教えようとする保護者に多いのが、Cの傾向です。
ですが、感謝の気持ちを強要するのは、やはりデメリットが多いんですね。
自分の価値観を押し付け、他人をコントロールすることは、相手との関係に溝を作ることにもなりかねません。

またCを選ぶ方は、日頃からとてもお忙しい方が多いです。ゆっくりは教えられないので、ストレートに「◯◯しなさい!」と教える傾向が強くなるのですね。その場合は、保護者の方自身も自分の時間の使い方を見直してみるといいかもしれません。

Cの方が今すぐできるトレーニングは、こちらです。

Cタイプの人へのアドバイス

①自分から率先して「ありがとう」を伝える
②指示の言葉を出す前に、一度深呼吸をして、考えてから言う
③リラックスして自分の時間を振り返る

「学力を伸ばすヒケツ」でもお話ししましたが、最も定着する学び方は「自分で発見し、納得すること」なのです。
ご自身が子どもの見本になる気持ちでいてもらえたらと思います。
また、指示を出す前にワンテンポおき、「本当にこれは今伝えるべきかな?」と自問するのもオススメです。

まとめ:子どもは、親に愛されたいと一生懸命

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最後に、【心の根っこ】についてもう一度お伝えしたいと思います。【心の根っこ】とは、「自分は大切な存在。自分は愛されている」と思える感覚のことです。
海外では「セルフエスティ―ム」と言われ、日本では「自尊感情」「自己肯定感」などの言葉に訳されています。

そして【心の根っこ】は子どものありのままを認めることで、スクスクと育ちます。

子どもはみんな、親や家族に愛されたくて一生懸命です。
子どもは親の心を敏感に読み取っています。大好きな親にほめられたい、認められたい、愛されたいと一生懸命なのです。
なので、他の子と「比べられる」ことは、子どもにとっては一大事です。そんなことが続くと、子どもは自分の存在に自信が持てなくなってしまいます。
その悔しさが、無気力や親・社会への反抗になって表れます。それもできない子は、本当にひと粒の涙かもしれません。

周りと比べることなく、子ども自身・親自身の「ありのまま」を認め合える関係が築けるよう、願っております。
本セミナーが、皆さんの「比べない」一助になりましたら、幸いです。

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