1万年堂出版が開催した
読者感想文コンクールの
入賞作品の一部をご紹介します。

銅賞

『子育てハッピーアドバイス』を読んで

長内理子さん(44歳・宮城県) 一般の部

手に持った花火に、なかなか火がつかない。バケツの中のろうそくに、花火を近づけていたとき、
「熱い!」
思わず助けを求めて走り出した。何故か私が着ていた浴衣の後ろに、火がついていたのだ。近くに母の姿は見えず、近所のおばさんが叫んでいる私を見つけて、火を消してくれた。そこへやってきた母は、
「あんたが走り回ってるから、ダメなんでしょ!」
と、私をどなりつけた。

「走ってたから火がついたんじゃなくて、火がついたから走ったんだよ」

私が説明しようとしても、聞いてもくれなかった。やけどの痛みよりも、話をちゃんと聞いてもらえなかった悔しさを、今でも思い出す。

上記のことで泣いているのは、30年前の私。「おかあさんのようにはなりたくない」と、子供ながらに思っていた。
そして、月日が流れ、母親になった私。「母のような親にはならない」ためには、どうすればいいんだろう? そんなことを考えていたとき、出会ったのが『子育てハッピーアドバイス』だった。

さまざまなアドバイスが、かわいらしいイラストやマンガで、具体的に書かれている。いままで読んだ育児書の中で、一番わかりやすい。一気に読んでしまった。

子供の話を真剣に聞くこと。それは本当に大切なことなのだと、あらためてわかった。子供の頃の私は、自分の話をきちんと聞いてもらえなかったことで、または話をしても否定されるようなことばかり返ってきたことで、もやもやをためこんでしまっていたのだ。そして、いつしか「母には言ってもしょうがない」と本音を言わなくなってしまったのだ。

「何を考えているのかわからない子だ」

母は私のことをそんなふうに言っていた。あのころは、自己分析などできるはずもなく、わからなかったが、「言ってもだめ」と私はあきらめてしまっていたのだと思う。

子供が苦手なこと。それは「待つこと」だと思う。「ちょっと待って」と言われても、「ちょっと」がものすごく長く感じられたものだ。子供には、子供のペースがある。大人の都合ではなく、子供のペースを大事にすること。それは、むずかしいことのようにも思えるが、意識して心がけてみると、自分の用事をちょっとあとまわしにすればすむこと。

「ママー、ちょっと来てー」と娘が呼んでいるとき、できるだけ手を止めて、行って話を聞くようにしている。その少しの時間が大事なのではないかと思う。

本書に書かれているアドバイスの多くは、私が母にしてもらえなかったこと、してほしかったことだ。それが具体的に書かれていることで、「そうか、こうやってみればいいんだ」とすぐ実践できる。日々の暮らしの中にアドバイスをとりいれることで、娘と私の生活は、うまくいっているように思える。

子どもに対する接し方のアドバイスだけでなく、「母親のサポート」が本書にはあり、心なごみ、勇気づけられる内容だ。私は日中働いていて、娘は保育所に5年間お世話になった。それでもいい。5分でも心から笑いあう時間があれば、子供の心は満たされるのだという内容に、ほっとするのだ。

一番印象に残ったのは、「私は私でいいんだ、この子はこの子でいいんだ」という言葉だ。自分自身を肯定すること。私は子供の頃から、自己肯定感が低かったのかもしれない。もっと自分を肯定して、がんばってみよう。実家の母は、いまだに何だかんだと干渉、侵入してくるけれど、「境界線」を引いて、自分は自分、でがんばってみよう。

毎日娘と接し、娘の笑顔を見ていると、何故かこっちまでいやされるような気持ちになる。子供の頃の自分がいやされるような、そんな気持ちもしてくる。

ハッピーな子育てとは、子供だけでなく、親をもハッピーにしてくれるのだと思う。イライラして、ハッピーを忘れそうになったら、また本書を読んで、元気をもらおうと思う。

娘は今、8歳。今度は、『10代からの子育てハッピーアドバイス』を読んでみようと思っている。

「子供も宝なら、母親も宝」。最後のページの夕焼けが、とてもきれいだ。明日も、ハッピーでありますように。