日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #108

  1. 人生

『徒然草』からの生きるヒント〜「後で」という心を捨てて、すぐさま実行(徒然草 第92段)

今年のうちに

12月に入りました。
「今年のうちに、あれも、これもやらなきゃ!」と、気持ちが焦ってきます。

でも、やるべきことがたくさんあると、だんだん面倒になってきて、
「これは、明日にしよう」
「これは、来週中でもいいかな」
と、先送りにする心が出てきませんか。

そんな時に読みたい『徒然草』の一段がありました。
木村耕一さんの意訳でどうぞ。

「後で、時間を取って、しっかりやろう」これは、今を怠けている姿です

弓を習い始めた人が、ある日、2本の矢を持って的に向かいました。

すると、師匠が、

「矢は1本にしなさい。
2本持つと、後の矢を当てにして、初めの矢を、いいかげんにする心が起きる。
この1本しかないと思いなさい」

と戒めました。

たった2本の矢です。しかも、師匠の前で射るのです。最初の1本を、おろそかにするはずがありません。

しかし、本人は気づいていませんが、
「失敗しても、もう1本ある」
という気の緩みが、心の底にあることを、師匠は見抜いていたのです。

この戒めは、弓だけでなく、すべてのことに通じる大切な心構えです。

何かを身につけようと学んでいる人は、ついつい、後で時間を取って、しっかりと勉強しようと思ってしまいます。夕方になると「翌朝に」と思い、朝になると「夕方に」と後回しにします。

これは、今現在を、怠けている姿です。

「後で」という心を捨てて、すぐさま実行することが、いかに難しいかを知らされるばかりです。

【原文】
懈怠(けだい)の心、みずから知らずといえども、師これを知る。此の戒め、万事にわたるべし。(第92段)

『徒然草』からの生きるヒント〜「後で」という心を捨てて、すぐさま実行(徒然草 第92段)の画像1

(『こころ彩る徒然草』木村耕一著 イラスト 黒澤葵より)

今を生きる大切なヒント

木村耕一さん、ありがとうございました。

「後で時間を取って、しっかりやろう」と思っても、いろいろなことが入ってきて、時間が取れずに、結局できなかったパターンが、今までも多かったなと反省しました。

「明日にしよう、来月にしよう、来年にしよう」
とやるべきことを後回しにして、今の時間は何しているかと思うと、テレビやネットを見ていたりします。

「あ、今、時間があるじゃん。今やればいいね!」と気がつきました。

兼好さん、今を生きる大切なヒントを、ありがとうございました。

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『徒然草』からの生きるヒント〜「後で」という心を捨てて、すぐさま実行(徒然草 第92段)の画像2

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