心がきらめく仏教のことば #11

  1. 仏教

「邪魔」の語源は仏教にある|目的達成を阻む心について

邪魔の意味

今回のテーマは「邪魔」です。
すっかり日常に溶け込んでいる言葉ですが、意外にも、元は仏教が由来の言葉といわれます。
「邪魔者」「邪魔しないで」など使われていますね。

邪魔は「妨げる」という意味で使われ、もともと仏教でも「妨げるもの」という意味でした。
それが一般にも、浸透していったわけです。
この邪魔の語源は、仏教を説いたブッダがさとりを目指して修行しておられたときのエピソードに由来します。

邪魔の語源となったエピソード

今から2600年ほど前、北インドの釈迦族の王子として生まれられたシッタルタ太子(後のブッダ)は、何不自由ない生活を送っていました。
物質的には満たされていましたが、心からの安心満足はありませんでした。
それは、やがて年をとり、病気にかかり、最後はこの世を去らねばならない、避けられない人間の行く先に思いを巡らしていたからです。

「このままの生活を続けていて、いいのだろうか?
やがてこの世で手にしたものすべてを置いて、地上を去らねばならない。
この暗い未来を何としかしなければ心から安心して生きれないではないか」

シッタルタ太子の葛藤は続いたのです。

ついに29歳のとき城を出る決意をします。
すべてを捨て、さとりを求めて厳しい修行に打ち込まれるようになりました。
そして35歳のときに「仏」という最高のさとりをひらかれたのです。

誘惑や弱い心が「邪魔」になる

この6年間の修行は大変厳しいものでした。
その間、シッタルタ太子の心の中にさまざまな誘惑、弱い心が悪魔の形となってあらわれてきました。

「なぜこんな苦しい生活を続けるのだ?城に戻れば豊かな暮らしが待っているというのに」
「親や妻子がお前の帰りを待っているぞ」
「どうせさとりなどお前にはひらけないのだ」

さとりを求めるのを妨げる邪な心が悪魔となって、太子を惑わしてきたのです。
このエピソードが由来となって、「邪魔」という言葉が生まれました。

「元の生活に戻ったところで、老いと病と死の不安を克服することができなけば本当の安らぎは得られないではないか」
邪な心が出てきても、目的成就に向かわれる太子の決意はゆるぎませんでした。
ついに、これらの心を克服し、仏の覚りをひらかれたのです。

太子と同じ様に、目的達成を邪魔する心は、私たちの中にもあります。
プロスポーツ選手の上田桃子選手を例に説明しましょう。

プロスポーツ選手の葛藤

ゴルフの上田桃子選手が、今年5月に行なわれた大会で2年ぶりの優勝を果たしました。

かつて女子ゴルフ人気の火付け役の一人ともなり賞金女王にもなったこともある上田選手。
同年代のライバルが引退したり、それぞれの道を歩む中で、数年前から引退という文字も常に頭にあったといいます。

とくに5月の大会の前、数週間は深く悩んでいたそうです。
「何を目標にすればいいのかわからない」とモチベーションが定まらずに「(今のままでは)勝てる気がしない」と葛藤がありました。

そういう中でミニ合宿を行い、「1番基礎ができる選手になろう、基礎を大事にしよう」と初心に立ち返ることができたといいます。
葛藤を乗り越えて見事、2年ぶりの優勝を果たしたのです。
ベテランであり、何度も優勝経験のある上田選手でも、悩みや不安・葛藤がつきまとっているのですね。

最大の「邪魔」は心の中に

私たちも、特に大きな目的に向かうときには必ず上田選手の葛藤のような「邪魔」が入ります。

周りの人から「そんなのムリだよ」とか「できっこないよ」などと言われることもあるでしょう。
それも辛いことですし、それでやめてしまうこともあるかもしれません。
しかし最大の「邪魔」は外にあるのではなく、心の中にあります。

「やっぱり自分にはできない」
「あきらめてしまおうか」
「自分には才能がないから」
という自分の弱い心に、せっかくの志や決意を捨ててしまうことが多いのではないでしょうか。

逆にどんなに周りから止められても、何が何でもやりぬくという気持ちであれば、困難な状況も覆し、みごと目的を果たすことができます。

まとめ:邪魔する心が出てきたときは

ブッダのような方でさえも、誘惑する心、弱い心があり、妨げるものが現れました。
私たちが大きな目的に向かって進むときも、必ず妨げる心が出てくるでしょう。

ですが、そんな邪魔する心が出てきたときこそ、目的を今一度思いおこしてもらいたいのです。
夢に向かって、負けずに進んでいってもらいたいと思います。

「最大の敵は心であり、最強の味方も心である」

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