日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #47

  1. 人生

徒然草からの生きるヒント 〜怪しいことを見ても、怪しいと思わなければ、怪しいことは起きない (徒然草 第206段)

心配しなくていいことを心配している?

いつもと違うことが起きた時、皆さんは、どう対処されていますか?
私はつい、悪いほうへ、悪いほうへと考えて、悪いことが起きたらどうしよう、と不安になったり、心配したりしてしまいます。
そんな私の心配事を友達に話すと、「杞憂だよ」って笑われます。
「杞憂」とは、中国古代の杞の人が、「天が落ちてくる、天が落ちてくる」と憂えたとか。
そうか、心配しなくてもいいことを、クヨクヨと思っていたとは。
そうか、確かにそうだな、と思った『徒然草』のお話があります。木村耕一さんの意訳でどうぞ。

ある日、一頭の牛が役所の長官の席で、寝ていたのです……

役所の中で、奇怪な事件が起きたことがあります。

なんと、検非違使(けびいし)の長官が座るべき席に、大きな牛が寝そべって、もぐもぐと、食べた物を反芻していたのです。

「こんなことは前代未聞だ。何かの災いや凶事の前触れに違いない」
「この牛を、すぐに陰陽師の所へ連れていって、占ってもらおう」
と、役所の中は大騒ぎになりました。

そこへ太政大臣が出てきて、
「牛には、善悪を分別する力はない。足があるのだから、どこへでも入ったり、登ったりするだろう。占い師の所へ連れていく必要はない」
と言ったので騒ぎが静まりました。

すぐに牛は持ち主へ返し、牛が汚した畳は新しい物に取り替えられました。その後、少しも凶事は起きなかった、ということです。

昔から、「怪しいことを見ても、怪しいと思わなければ、怪しいことは起きない」といわれているとおりです。

(原文)
あやしみを見て、あやしまざる時は、あやしみかえりてやぶる、といえり。(第206段)

(『こころ彩る徒然草』より 木村耕一 著 イラスト 黒澤葵)

怪しいと思う心に惑わされぬように

木村耕一さん、ありがとうございました。
冷静に考えれば、牛には足があるのですから、しかも「ここは長官が座るところだ」なんて分かりませんから、ひょっこり牛がいても、別に怪しくはないですね。
それを「怪しい」と思うところから、色々な悲喜劇が起きてくると知らされました。
怪しいと思う心に惑わされて、いらぬ心配や、余計な時間を使わないように、心がけたいと思います。
兼好さん、生きるヒントをありがとう!


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