カフェで楽しむ源氏物語-Genji Monogatari #58

  1. 人生

薫と大君/匂の宮と中の君、動けば動くほどすれ違う二組の恋【源氏物語・総角の巻】

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こんにちは。国語教師の常田です。
匂の宮と中の君を結びつけた薫ですが、“これで大君も自分になびいてくれるはず”との思惑は大きく外れ、大君の心はますます頑なになりました。
自分の欲望に目がくらみ、大君の心を思いやらぬ勝手な言動が、自身だけでなく、大君や親友の匂の宮をも苦しめることになるのですね。
今回も続けて、総角(あげまき)の巻を解説します。

最愛の中の君になかなか会えない、匂の宮の焦り

匂の宮は、婚姻成立のために三日間通った朝、曙の光に浮き上がる中の君を初めて見て、心震わせました。
後ろ髪を引かれながら都に帰り、案の定、母・明石の中宮の諫めのために身動きとれなくなります。

匂の宮は焦りました。

薫は、匂の宮にも、彼の訪れが途絶えて嘆く宇治の姉妹にも責任を感じ、この事態を打開しようとします。
「紅葉狩り」を口実に匂の宮を宇治へ誘い出し、中の君と逢わせる計画を立てたのです。

当日、宇治に到着した匂の宮一行は、管弦や詩作で盛り上がります。
ところが、いよいよ姉妹の暮らす山荘へ…と気もそぞろになっていた時、突如、匂の宮の母が、計画を察知したかのように迎えをよこしました。

匂の宮は驚きます。

文だけ送り、中の君に逢わずに帰らざるをえませんでした。

薫と匂の宮に不信を深める、宇治の姉妹

久しぶりの匂の宮の来訪を期待していた姉妹の落胆たるや、すぐそばまで来ていただけに、余計に大きかったのです。
特に、妹・中の君の幸せだけを生き甲斐にしてきた大君は、”やはり匂の宮は移り気な方だった”と男性不信を深めます。

「誠実そうな薫の君とて所詮、同じこと。姉妹そろって見捨てられ、世間の笑い者になるくらいなら、いっそ早く死んでしまいたい」と思い詰めていきました。

一方、匂の宮も帰京するや、直ちに宇治へ引き返そうと思いましたが、父帝から謹慎を命じられてしまいます。

さらに、左大臣の娘との結婚話を勝手に決められ、
「好きな女性がいるなら、侍女にしてかわいがれば済むこと。軽率なふるまいは慎みなさい」と母からも諫められます。

“中の君が侍女だなんて、とんでもない。いつか両親の理解を得て厚遇するには…”
匂の宮は宇治で嘆いているであろう愛妻に思いをはせ、胸を詰まらせるのでした。

突然変わった、大君の薫への態度

よかれと思ってすることすべてが裏目に出て、自分も周囲も苦しむ状況に、薫は悩みを深めます。
そんなおり、大君が体調を崩したと聞き、宇治の山荘へ見舞いに訪れました。

大君は病床で、中の君を哀れんで泣いていました。
そして、薫を優しく枕元に招きます。
今まで決して男性を近づけようとしなかった彼女の、打って変わった態度に、薫は不安を隠せないのでした。

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源氏物語の全体像が知りたいという方は、こちらの記事をお読みください。

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