日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #15

  1. 人生

こんなことで、怒っても、しかたないでしょう ~『徒然草』にみる、人の口

こんなことで、怒っても、しかたないでしょう

心穏やかに毎日を過ごしたいと思いながら、心に波風が立ってきませんか。

「あの人に、あんなこと言われた」
「そんな言い方、しなくてもいいでしょ」
「バカにされた、クヤシイ!」などなど。

 他人から言われた言葉に、ついイラッとする……。
「そんなちっちゃいこと、気にしなくていいよ」とアドバイスされても、なかなか怒りが治まらない……。

『徒然草』にも、こんなエピソードがありました。

榎の木の僧正さん

「良覚僧正(りょうがくそうじょう)」という方は、とても怒りっぽい人でした。
 住まいの近くに榎の木があったので、町の人々は、「榎の木の僧正」と呼び始めました。すると僧正は、「あだ名は、けしからん」と怒って、木を切ってしまったのです。
 榎の木はなくなりましたが、大きな根が残っていましたので、人々は、面白がって「切り杭の僧正」と言うようになりました。
 またまた腹を立てた僧正は、根を掘り起こして捨ててしまいました。
 しかし、根っこの跡が大きな堀になったので、人々は、「堀池の僧正」と呼ぶようになったのです。

(原文)
 この名しかるべからずとて、かの木を切られにけり。その根のありければ、切りくいの僧正といいけり。いよいよ腹たてて、きりくいを掘りすてたり。その跡大なる堀にてありければ、堀池の僧正とぞいいける。
(第四五段)

「偉い人でも、こんなつまらないことで、怒っているよ」と兼好さんは、ユーモアたっぷりに伝えてくれています。

何をしても、つけられる「あだ名」

「偉い人でも、人から言われた言葉に、腹を立てて苦しんでいる」と知ると、「自分だけではなかった!」と、ホッとします。
「榎の木の僧正」と言われるのがイヤで、「榎の木」を切れば言われなくなるだろう、と考えた僧正さん。
 しかし、実際に木を切ると、今度は「切り杭の僧正」と言われるように。
 それもイヤなので、根を掘り起こして捨てました。
 すると、根っこの跡が大きな堀になったので、今度は「堀池の僧正」と呼ばれるようになりました。

 ここまで見ていくと、どうも「あだ名」をつけられる原因は、「木」や「根」ではなかったようです。
 僧正自身の「怒りっぽさ」に、人々は面白がって、次から次へと、ウマイあだ名をつけていたのですね。

人は、勝手なことを言うものです

 どんなあだ名をつけられても、良覚僧正は、良覚僧正です。
 その人の価値は、変わらないでしょう。
「豚はほめられても豚、ライオンはそしられてもライオン」と、ことわざで言われるとおりです。
 何をしていても、人は、勝手なことを言うもの。
 しかも、ご都合主義でコロコロ変わりますし、無責任なものばかりです。
 そんなことに振り回されて、怒ったり、嘆いたりしているのは、時間も体力も、もったいないですよね。
「人間ってこんなものだよ」と教えてもらった、『徒然草』のエピソードでした。


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