安定した自信を育む心理学 #1

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自己評価のメカニズムとは?「自分は平均より上」と思っていても、その自信が持続しない理由

あなたは自分自身のことを、どのように思っているでしょうか?

多少のことではビクつかない、安定した自己評価を持っていますか?
あるいは、ささいな出来事、他人のちょっとした言動にも自己評価が不安定な状態になってしまうでしょうか。

メディアやSNSが発達し、大量の情報に触れる中で、人との比較にさらされ、自分を低く見てしまい、生きづらさを感じている方は多いと思います。

そもそも自己評価とは何によって決まるのか。よい自己評価と、そうでない自己評価の違いとは、何なのでしょうか?

その自己評価のメカニズムと、自己評価を高く安定した状態にして、生きづらさを解消する方法を、数回に分けてご紹介していきます。

自己評価のもろさは困難に直面したときに現れる

自分自身のことをどう思っているかについて、ある自己評価に関する研究では、「自分が平均より上の資質を持っている」と信じる学生の割合が、実に96%以上だったことがわかったそうです。

私たちのほとんどが、「自分は平均よりも優れている」と感じているのですね。

これだけを聞くと、自己評価が高い人のほうが圧倒的に多いのでは?と思いますよね。

では、私たちはいつも自分に満足して、幸せな生活を送っているのか?と聞かれると、そうとも感じられません。

実は、このように自己評価が高いのは、“比較的簡単なことをしているとき”だけ、なのです。

アメリカの社会心理学者であるジャスティン・クルーガー氏は、

困難な状況に直面した場合、人は「平均よりも自分は少し劣っている」と考える傾向にある

と言われています。

いかに自分に自信を持っている人でも、人生の困難、たとえば、大学受験の失敗や大切な人との関係の破綻、失業などに直面すれば、自己評価はもろさを露呈してしまいます。

たちまち自信を喪失し、気持ちが不安定になり、立ち直りに多くの時間を要することもあるでしょう。

もし仮に、自己評価が元に戻らず、ずっと低いままなら、それが心理的な障害にもつながりかねないのです。

アメリカの臨床心理学者 ナサニエル・ブランデン氏は、抑うつや過剰な不安、アルコールや薬物への依存などの心理的な障害は、もとをたどっていけば例外なく自己評価の欠如にいきあたる、と指摘しています。

低い自己評価は、決してそのままにしていいものではないのですね。

自己評価を根底からゆるがすような人生の困難は、避けることはできません。

しかし自己評価とは何かを理解し、自己評価をよくする方法を実践していくことで、立ち直りも早くなり、精神的にも身体的にも健康な状態を維持することはできるのです。

人生を生きづらくさせる、自己評価の“ゆがみ”とは

ではその自己評価をよくするには、どうすればいいのでしょうか?

自己評価の専門家であるフランスの精神科医 クリストフ・アンドレ氏は、自己評価を育てる栄養源となるものが2つある、といわれています。

1つは、自分には能力があるという気持ち
もう1つが、人から愛されているという気持ちです。

社会的に成功していても、人から愛されなければ、虚しい気持ちになります。

また、人から大切にされているという実感があっても、「自分は役立たずな人間だ」と思っていては、自信を持つことはできませんね。

自分には能力があり、人の役に立てているという気持ちが持てて、さらに周囲との温かなつながりが感じられると、自己評価がよくなっていくのです(アンドレ氏は、能力があるという気持ちよりも、人から愛されている気持ちのほうが、自己評価をよくするのにより重要だとも言われています)。

人生の困難にぶつかったときは自分の能力を疑い、周りの人との絆にヒビが入ったように感じるから、自己評価がゆらいでしまうのだとも分かりますね。

しかし、中には、この2つの栄養を摂取しているにもかかわらず(成功し、周りから好意を持たれているのに)、自信がなく、不安や恐れを抱き、周囲から嫌われていると思う人もいるのです。

なぜそうなってしまうのでしょうか?

それは、自己評価に“ゆがみ”が生じているからです。

十分に根が張っていなければ、どんなに水や養分をやっても植物中に取り込まれず、やがては枯れてしまうように、自己評価がゆがんでいれば、2つの栄養が十分に行き届かずに、自己評価は不安定になるのですね。

ゆがみをもたらす「偏った4つの見方」

自己評価はなぜゆがんでしまうのでしょうか。

自分に対しての「偏った見方」が、ゆがみをもたらすといわれています。

ゆがみが生じる偏った見方とは、以下のようなものです。

①欠点ばかりへの注目

自分を見るときに全体を見ないで、できていないところ、悪いところばかりに目を向けてしまう。欠点ばかりを見ていては、自信を持つことはできません。

②完璧主義

完璧主義であれば、ほとんどの場合で、自分自身や自分のしたことに満足することはできません。自分の能力に失望し、後悔することになります。

③悪い形で人と比較する

人の劣っているところを見ては安心し、人の優れたところを見ると自分を責めて落ち込んでしまうなど、悪い形で人と比較すると、自己評価を傷つけることにつながります。

④他の人の目や判断を気にしすぎる

何かをするときに、「こんなことをしたら、どう思われるだろうか?」とばかり考え、「ダメな人間だと思われるに決まっている」と結論を出してしまうので、気持ちも沈み、消極的になって、自信が失われてしまいます。

自分に対して、こうした偏った見方をすると、自分を客観視できなくなり、自己評価がゆがんでしまうのですね。

そして、そのゆがみによって私たちは「低い自己評価」か「高くてもろい自己評価」の、どちらかを持つようになります。

「低い自己評価」か「高くてもろい自己評価」

「低い自己評価」の人は行動を回避し、自己主張もできなくなる

本来よりも自分を低く見るのが、「低い自己評価」の人です。

自分を相対的に見ることができず、短所ばかりに注目し、その短所を実際以上におおきなものと捉えてしまいます。

その結果、自信を失い、これ以上自己評価が下がらないように、行動を回避するようになります。

また、相手から悪く思われないようにと、相手の言うことは何でも認めてしまい、自己主張も、何かを頼むこともできなくなってしまいます。

行動も回避し、自己主張をしなければ、そんな自分を責めて、ますます自分を過小評価することになるのです。

「高くてもろい自己評価」の人は、低く見られる不安を感じ、失敗を恐れる

一見、自己評価が高いようで、内心は不安を感じているのが「高くてもろい自己評価」の人です。

「高くてもろい自己評価」の人は、人の比較を行い、自分より上の人には羨望を感じ、その人の価値を引き下げようとします。

また、自分より下の人は軽蔑し、自分は人より優れていることを確かめようとするのです。

その心理の裏には、「人から低く見られているのではないか」という漠然とした不安がつきまとっています。

人から低く見られる不安から、何よりも失敗を恐れます。失敗をしてもそれを認めず、誰かほかの人のせいにして、自己評価をなんとか保とうとします。高いようで、まさに“もろい”自己評価といえるのですね。

「低い自己評価」の人と「高くてもろい自己評価」の人は、正反対のように見えて、実は表裏一体であり、意外にも近い関係といわれています。

「高くてもろい自己評価」の人が、周囲と比較したり、失敗を人のせいにするのは、自分に心からの自信が持てていないからですね(自己評価が真に高いものなら、人と比較することはなく、失敗も受け入れることができるからです)。

そのため高くてもろい自己評価の人は、物事がうまくいかなくなり、状況が悪くなれば、たちまち「低い自己評価」の人になります

自己評価が低いと、不安や恐れ、ストレスを感じやすくなり、生きづらくなるのですね。

よい自己評価を持つと、あなたはどう変わるのか

生きづらさを和らげるには、“よい自己評価”を持つことが欠かせません。

よい自己評価を持てば、

  • 自分の考えや、「いいえ」とか「いやだ」ということを、人に言える
  • 失敗からも立ち直ることができる
  • 自分をダメな人間だと思うことがなくなる
  • 他の人の成功や幸福を見ても、羨望を感じない
  • 長所や短所を含めたうえで、現在の自分を受け入れることができる
  • 自分以外のことも考えることができる

などのことが可能となり、生きづらさを解消することができるようになります。

こう聞かれると、「自分にはそんなことはできない。自己評価をどうにかするには手遅れだ」「自分はこんな育ち方をしたから、もうどうにもならない」と思われる方もいるでしょう。

確かに自己評価は、生まれや環境に大きな影響を受けています。その影響によって自己評価が低い人、育っていない人もいます。しかしそれだけですべてが決まるのではありません。

クリストフ・アンドレ氏は、

<自己評価>は、最初は低い状態にあっても、その後の実践によって、よい形に高めていくことができるものなのだ。

30年後、40年後に<よい自己評価>を持つにいたったということも珍しくない。

と、自己評価をよくするのに手遅れということはなく、実践を通してよくしていくことはできる、といわれているのですね。

具体的にどう実践すればいいかについては、今後、

  1. 自分を受け入れる
  2. 自分との関係をよくする
  3. 他人との関係をよくする

という3つの観点からご紹介していきます。

 

【参考文献】

『自己評価メソッド』(クリストフ・アンドレ著 紀伊國屋書店)
『自信を育てる心理学 「自己評価」入門』(ナサニエル・ブランデン著 春秋社)