戦国時代も同じだった? 悩める家族のつながり

こんにちは、歴史から学ぶ人生ナビゲーターの木口です。

日々過ごしていく中で、不満が募ってくることの一つに夫婦・家族との関係があるでしょう。
夫が話を真面目に聞いてくれない
家事や育児で忙しくしているのに、夫が全然手伝ってくれない
妻が突然怒り出すので戸惑う
何で自分ばかりが我慢しないといけないのか……
などよく耳にします。
夫婦や家族との付き合いって難しいものですね。

家族の問題は戦国時代も同じだったと思いますが、武将たちの家族関係はどうだったのでしょうか?
生き残りに必死で、家族の問題に悩むどころではなかったのでしょうか?

超意外!? 戦国武将が見せた家族への顔

  1. おい、猿! もっと飲まんか!

  2. 信長様、これ以上はご勘弁を!
    おね、見ていないで助けてくれ(汗)

  1. ぱーっといきましょうって言ったのは自分じゃありませんか。

  2. あなた、秀吉さんの顔が真っ赤で、本当にお猿さんのようですよ、ほほほ。

  1. みなさん戦国の世に夫婦として生き抜かれたわけですが、どのように歩んでこられたのですか?

  2. うちの人ったら、ご家来衆には細やかな気遣いをしているのに、わたしのことは、仕事仕事でほったらかしで、京都の女にうつつをぬかしているんだから。

  1. だからサルを叱りつけてやったのよ。
    おねほどの女をぞんざいにするとはけしからん! とな。

  2. いやはや! これはすみませなんだ!
    つい仕事のストレスがたまって遊び呆けてしまっておりまして・・・。
    おね、許せよ。

  1. まあ、わたくしにも手紙はたくさん下さいましたからいいですけど。
    いつもお前の心遣い、ありがたく思ってる
    おまえからしばらく手紙が来ないので心もとなくなって筆をとった』とか言っちゃって。

  2. これ、おね! この場で言わなくても。

  1. ・・・お前、当時にしてはずいぶんストレートなこと書いておったのだな。

  2. 秀吉さんは奥さんに対しても筆まめだったんですね。
    信長さんのところは、どんな出逢いだったんですか?

  1. 私たちですか。
    私の実家は運送業を営んでいて、いろんな人が出入りしていました。
    その中に信長様もいたんです。
    私はすでに嫁いでいたんですが、夫は戦死してしまって・・・。
    信長様に出会ったのはそんな折です。
    お城から10キロもある私の家まで、何度も通ってきてくださったのです。

  2. 通っていた?

  1. 私の家は身分も低く、ひと目をはばかって正式な妻にはなっていなかったんです。

  2. 車もない時代、10キロの道をよく通われましたな。

  1. そのうち3人の子供を授かりました。
    でも私、生まれつき体が弱くてね。
    産後のひだちも悪くてだんだん体をこわしていきましたの。そしたら…。

  2. そしたら?

  1. 名医を呼んだり、高価な薬を買い付けてくださったりしました。
    高貴な身分の人が使うような立派なお輿でお城に迎えられ、ご家来衆の前で正式に妻として紹介してくださり、お城の中に専用のお屋敷まで頂きました。
    体調の良い日には、体を支えながら一緒にお屋敷を歩いてくださいました。
    ああ、もったいないことです。

  2. なんと~、そんないきさつがあったのですね。
    あれ、信長さん? 信長さーん、いない。

  1. あ~あ、気恥ずかしいみたいでどっか行っちゃいましたよ。

この母にしてこの子あり ~それぞれだった三英雄の生い立ち

  1. 皆さんの親御さんのことも気になりますね。
    なんでも、秀吉さんは大のお母さん思いだったとか。

  2. とーちゃんの死んだ後、再婚した義理の父とはそりが合わんかった。
    ワシのことバカにしおって……。
    でもかーちゃんはずっとワシの味方だった。
    大坂城を造ってからもずっと一緒に暮らしておった。おねも一緒じゃ。
    何かこう、かーちゃんがいると安心するのじゃ。

  1. 農民から関白の母になるんですから、これまたすごい変化ですよね。

  2. かーちゃんのために朝廷から位ももらったぞ。
    藤原道長と同じ位じゃ。

  1. 家康さんは?

  2. 私は生まれて間もなく、両親の家同士が敵対しまして。
    母上は離縁させられ、以来ずっと会えずじまいでした。
    15年後、今川から独立して、ようやくお迎えすることができました。
    その後も苦労のかけどおしで・・・。
    申し訳のない・・・。

  1. 母の話などしたくもないわ!
    弟ばかりかわいがりおって。
    母の愛情? そんなもの知ったことではないわ!

  2. うわー三人とも全然ちがいますね。
    秀吉さんはお母さんに大事にされて育ってきたんですね。
    でも信長さんはなんかかわいそう。
    (だからこんな性格になっちゃったのかな・・・)
    家康さんは、ずっとお母さんと会えずじまいだったなんて。

戦国一のチーム それは家族

秀吉とおねは、当時としては珍しい恋愛結婚で、秀吉のほうが惚れ込んだようです。
農民の秀吉に対して、おねは武家の生まれですから格差を超えての結婚でした。
秀吉24歳、おね14歳のときです。

筆まめな秀吉は、おねにもよく手紙を書いていたようで、30通ほどが現存します。
「忙しい最中だが、どうしてもお前に手紙を出したくなって筆をとった」「帰ったらゆっくり抱き合って、つもる話でもしよう」など、かなり素直な気持ちを表現しています。
「おまえの心遣い、いつもありがたく思っている」など感謝の言葉を記したものもあります。
現代の男性でも、ここまでストレートに気持ちを表現する人は少ないのではないかと思います。

ところが秀吉は仕事のストレスからか、京都で女遊びに興じます。
たまりかねたおねは、なんと主君・信長に訴えます。ひえ~。
すると信長はこんな返答をしました。

おねよ、前回会った時よりさらに美しくなったなぁ。
それにしてもお前ほどの女をぞんざいにするとは、秀吉めはけしからんやつだ。
どこを探してもお前ほどの女はおらんだろうに。
だからそなたも妻らしくおおらかにして、少々のことでは騒がないほうがいいだろう

あの信長が? と思うような紳士ぶりです。
信長の意外な一面を垣間見る思いがします。
面白いのは手紙の最後に「この手紙を秀吉にも見せてやれ」と書いていることです。
「こら秀吉! おねが泣いてるぞ! 今度やったら承知せんぞ!」と言わんばかりです。
秀吉は背筋が凍ったのではないでしょうか。

おねとの間には子が生まれませんでした。
その分、親戚の加藤清正や福島正則たちを、実の子のようにかわいがりました。
もし二人の間に子どもが生まれていれば、豊臣政権も安泰だったかもしれません。

また秀吉は大の母親想いで有名でした。
戦場からこんな手紙を送っています。

秀吉のことはご心配なさるな。一段と息災です。ご飯も食べています。
気晴らしに外出でもして、若返ってほしいと思います。
(病気であった)弟が元気であること、何よりうれしく思います。
しっかり養生してほしい。
たびたび手紙を頂き、うれしく思います。 秀吉

母・なかも離れた息子にたびたび手紙を出していたことがわかります。
秀吉は、父親が幼い頃に亡くなり、再婚した義父とはそりが合わず家出をします。
そんな秀吉を、なかはずっと心にかけてきました。
それは老いても変わりません。
朝鮮出兵の際「大陸に渡るような危ないことだけはしないでおくれ」と秀吉に懇願し、ついには秀吉も思いとどまります。

なかが危篤であると知らせを受けたのは、朝鮮出兵の指揮を執るため九州にいた時でした。
急いで大阪に戻るものの、すでに、なかは亡くなっていました。
秀吉はその場で気絶するほどだっといいます。
少し前には、弟と妹を失っていた矢先のことでした。
立て続けに心の支えを失い、以後秀吉は精細を欠くようになります。

信長が見せた涙…人は愛情を求めずにはいられない

信長の母は、破天荒な信長より行儀のいい弟を溺愛していました。
信長は、求めても求め得ぬ家族の愛情を、吉乃に求めたのかもしれません。
そして彼女はそれに応えるものをもっていたのでしょう。

信長に愛された吉乃でしたが、病は快方に向かうことなく、29歳の若さで亡くなります。
吉乃を弔った僧の記録によれば、信長は城の櫓から彼女の葬られた方角を望んで、涙を流したといいます。

延暦寺の焼き討ちなど、横暴なイメージのある信長ですが、その多くが後半生のもので、若い頃は、自分に反旗を翻した者でも許しています。
吉乃の死が信長を変えてしまったのでしょうか。
彼女が存命なら信長の歴史も、もっと別なものになっていたかもしれません。
なお、吉乃の子・信忠は秀吉と親しくしていましたが、本能寺の変で父とともに命を落とします。

まとめ

一見冷徹に見える戦国武将もやはり人の子。
家族の愛情に支えられていたのですね。

人は、決して一人では生きていくことはできない。
その事実は戦国時代も変わらなかったようです。

一緒にいる時間が長いからこそ、時にはうっとおしく思える家族。
しかし、いざという時、大きな心の支えになるのも家族です。

私も家族を大事にしていきたいと思います。

  1. 息子へ。今度家に帰ったらキスしてあげますからね~。パパより。

  2. だからお前ストレートすぎるって。

参考文献

『戦国武将の手紙』(桑田忠親)
『秀吉の手紙を読む』(染谷光廣)
『戦国武将の手紙を読む』(小和田哲男)
『戦国武将の手紙を読む』(二木謙一)
『波乱万丈 中世・戦国を生きた女たち』
『戦国の女性たち』(小和田哲男)
『前野家文書』(吉田雄二・編)

これまでの連載はコチラ