医師の勧める睡眠法 #5

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「眠れない」の影に鉄不足?それはムズムズ脚症候群かもしれません

「眠れない」の原因はさまざま

布団に入ればすぐに寝落ちする、という人もいれば、様々な工夫をしてもなかなか寝付けない、という人もいるでしょう。

どうしても眠れず、日中イライラしたり、集中できなかったり、ボーっとしてしまったりする場合は、病院を受診して睡眠薬の力を借りることもあるかもしれません。

でもその前に、医師と一緒に、まずは眠れない原因は何かを考えることになります。

何か体の病気が隠れていないか、うつ病など精神疾患になっていないか、睡眠時無呼吸症候群などはないか、原因はいろいろありえますし、原因に応じて対処法が変わってくるからです。

今回は、眠れない原因の一つ、「ムズムズ脚症候群」についてお伝えいたします。

ムズムズ脚症候群とは

こんな症状はないでしょうか。

  • 夜になると、足がムズムズ、そわそわする
  • うまく言えないけど落ち着かない
  • 横になって静かにしていると余計に気になる
  • 足を動かしたくなる(動かすとラクになる)
  • (足だけでなく、腰や背中がムズムズする場合もあります)

もしあれば、それは「ムズムズ脚症候群」かもしれません。
英語では、レストレッグス(足が落ち着かない)症候群といいます。

全国の20~59歳の約8000名を対象にしたある調査では、女性の4.9%、男性の3.0%の人がムズムズ脚症候群で悩んでいる、という結果が出ています。決して珍しい病気ではありません。

どうして夜にムズムズするの?

ムズムズ脚症候群は、脳の中でのドーパミンの働きが低下することが関係しているといわれます。
また、ドーパミンを作る過程で必要な、鉄分の減少も影響しているようです。

ドーパミン系の活動は、体や脳の活動と同じく、朝に上昇して夜に低くなります。
同じように、血液中の鉄分も、夕方から夜にかけて低くなることから、ドーパミンや鉄の日内変動が夜間のムズムズ症状に影響していると考えられています。

そのため、鉄欠乏になりやすい人は、ムズムズ脚症候群になるリスクが高いといえます。
月経のある女性、妊婦さん、人工透析を受けている人、慢性胃炎の人などに多く見られます。

血液検査では、体内の鉄分の指標である血清フェリチン(貯蔵鉄)値が50ng/ml以下であることが、一つの目安となります。

ほかにもムズムズ脚を起こしやすい生活習慣として、肥満、喫煙、運動不足、アルコール摂取などが指摘されています。
また、糖尿病との関連を示す報告もあります。

ムズムズしたら、まずは鉄分補給を

夜になると足が落ち着かなくて眠れずに困っている方は、病院で相談することをお勧めします。
病院にもよりますが、神経内科、一般内科、精神科などで対応していることが多いと思います。

治療は、フェリチンが50ng/ml以下と低ければ、まず鉄剤を服用することになります。
それでも落ち着かなければ、それ以外の薬もありますのでご相談ください。

また、アレルギーの薬(花粉症など)や、抗うつ薬、ドーパミン関連の薬が影響している可能性もありますので、薬を飲んでいる方は、主治医に相談してみてください。

生活習慣も整えて

薬を使う以外に、生活習慣を整えることも大切です。
対策としては、「やめる」ことと「やる」ことがあります。

「やめる」こと

「やめる」こととしては、飲酒(寝酒は睡眠を浅くし、脱水にもなりやすい)、夕方以降のコーヒー(カフェイン)やたばこ(ニコチン)などがあります。

「やる」こと

また「やる」ことのおススメは、就寝2時間前には入浴して体を温め、心も体もお休みモードに切り替えて、寝る前の柔軟や、足のマッサージをするといいと思います。

まとめ

一口に「眠れない」といっても、いろいろな原因があります。
気持ちの問題の場合もありますが、体や栄養からくることもあることは、ぜひ知っておいていただきたいと思います。

夜、眠れないと、イライラして、不安定になってしまうことも少なくありません。

ココロとカラダ、両方の影響を受けやすいのが睡眠です。

心身の健康の目安として、日々の眠りを大切にしていただきたいと思います。

【参考文献】
標準的神経治療:Restless legs症候群 – 日本神経治療学会、2012年

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