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白血病の治療の目標「寛解(かんかい)」とは? 抗がん剤で80%まで到達できるように

毎日、さまざまなニュースが飛び交い、ビッグニュースに驚いていると、次のさらに大きなニュースに、前のことを忘れてしまうようなこの頃です。

若手有望の水泳選手が白血病と分かった時、衝撃が日本中を駆け巡りました。
今回は、その白血病についての話をしましょう。

白血病はあらゆる年代で発症する、意外に多い病気

白血病は、「血液のがん」といわれる血液悪性疾患の代表です。
特に、若い世代が白血病になることにより、悲劇的ドラマで扱われる病気の代表となりました(若い世代の死因としては、事故死に次いで第2位です)。

白血病は、小児から成人、高齢者まであらゆる年代で起こります。
発症頻度は人口10万人あたり年間6.3人と、意外と多い疾患です。

ここでいう白血病は、「急性白血病」です。
急性白血病は、治療をしなければ2、3カ月以内に死亡するという電撃的な疾患です。

それに対して「慢性白血病」は、数年から10年にわたりゆっくりと経過しますので、同じ白血病でも全く違う病気といってもよいです。

白血病には大きく分けて2つ種類がある

白血病の生存率は、1950年頃は5%以下でした。
しかしその後、抗がん剤による治療(化学療法)の急速な進歩により、治癒が見込める病気へ大きく変わったのです。

白血病は、大きく分けて「骨髄性」と「リンパ性」の2つに分類されます。
この2種類の病気は、がん化した細胞の違いによって分かれます。

骨髄球から好中球となっていく細胞ががん化したのが、骨髄性白血病です。
それに対して、リンパ球ががん化したのが、リンパ性白血病です。

抗がん剤による治療で80%寛解できるように

骨髄性とリンパ性では、がん化する細胞が違いますので、同じ白血病でも、使用する薬剤が異なります。

今日の化学療法は、多剤併用療法といい、効果的な薬剤を3剤から4剤を併用することによって、治癒率を上げてきました。
化学療法によって、完全寛解(一端病気が治ったようにみえる状態)にまず持っていくのが、治療の最初の目標です。

この完全寛解まで、80%の白血病は到達できるようになりました
大変、素晴らしい医学の成果です。

化学療法が体に与える影響も知っておきましょう

白血病では、骨髄中の血球が、白血病細胞というがん細胞に置き換わっています。
化学療法は、白血病細胞を全部殺してしまう治療ですが、その反面、正常の血液細胞も大きな打撃を受けます。

白血球の数が減少

化学療法によって白血球数は大幅に減少します。
白血球は、身体を細菌や真菌などの微生物から守る働きをしています。

感染症にかかりやすくなる

白血球の防護がなくなりますので、患者は感染症になりやすくなります。
この感染症を予防し、発熱があれば抗生剤で治療を行います。

正常な血液が減る

また正常な血液が減りますので、赤血球、血小板の輸血が必要になります。

これらを乗り越えて、悪性細胞を一掃して、正常の血液細胞に戻すというのが、白血病の治療です。

ちょうど、町を占拠している白血病というテロリスト集団を、抗がん剤という武器を使って掃討する作戦です。それには味方の犠牲も強いられるのです。

治ったように見えてもがん細胞が潜んでいることも

ところが問題は、いったん治ったように見えた白血病が再発することです。
一見治ったようにみえても、白血病細胞が骨髄の中に潜んでいるのです。

ですから化学療法は、再発のために、生存率はじゅうぶんではありません。
この壁を破ったのが骨髄移植です。骨髄移植を行うことによって、治癒率を大幅に向上させることができます。

骨髄移植に多くのドナーが必要な理由

骨髄移植とは、白血病細胞で犯された骨髄を、大量の抗がん剤と放射線で空っぽにして、健康な他人の骨髄細胞を移植する方法です。

骨髄移植には、ドナーといわれる提供者が必要です。
登録者が年々減っているのが課題でしたが、今回の選手の告白は、ドナー登録者の増加に影響しました。

白血球の型は数万通り

なぜ多くの人の協力が必要かと言いますと、血液型はA,B,O,AB,Rh+-しかありませんが(正確にはもっとありますが、詳細は割愛します)、白血球の型は、はるかに多く、数万通りあるのです。これをHLA(human leukocyte antigen)といいます。
この型にはA,B,C,DR,DQ,DPの抗原が、おのおの数十通りがあるのです。
それが合致しないと移植はできません。

最も合致するのはきょうだいですが、その確率は4分の1です
骨髄バンクに登録されたボランティアで、骨髄を提供する人があって初めて、多くの患者さんへ移植が可能となります。

負担が大きいため、年齢が大きなカギになる

日本人は単一民族ですので、合致率は高いものの、ドナーが見つからず、骨髄移植を断念しなければならない患者さんもまだ多くあります。
また、骨髄移植は身体に大変な負担がかかる治療です。成功には年齢が大きな要素となります。
これらの治療を乗り越えるには、強い基礎体力と精神力が必要です。

若きアスリートの健闘を見守りたいと思います。