自己肯定感を育むアドラー心理学の「勇気づけ」 #3

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自分を好きになって自信を持つには?アドラー心理学の「自分への勇気づけ」3つの方法

アドラー心理学は「勇気の心理学」といわれるように、勇気が重視されています。

それは勇気が欠けてしまえば、人生の課題を避けようとし、前向きに生きていくことができなくなるからです。

だからこそ、子育てでも夫婦間でも、上司と部下の関係でも、勇気づけをしていくことが勧められています。

これまでは、どんなことが勇気づけになるのか、また勇気づけるときにはどんなことに注意したらよいか、についてご紹介してきました。

今回は、自分自身を勇気づけることの大切さと、その具体的な方法をお話しします。

自分への信頼が子どもへの信頼も生み、勇気づけられる

自分自身を勇気づけるとは、

「私は価値のある人間だ」
「私には問題を解決できる力がある」
「私は完璧な人間ではないけれど、できていないところも含めて自分のことが好きだ」

と思えるようになることです。

これとは反対に、

「自分はダメな人間だ、このままでは生きる価値なんてない」
「私は常に何事にも完璧でなければならない」

という思いを抱えていては、不安や重圧で苦しくなってしまいますよね。

そのような状態では、相手を満足に勇気づけることは難しいでしょう。

アドラー心理学に基づく子育て論や、子育ての対処法を教えている、心理療法家の星一郎さんは、「自分を好きでない親は、(子どもに)自分の不安を押しつける」と言われています。

自分のことがあまり好きでない親は、自分に自信が持てないため、将来が不安で不安で仕方なくなります。

そうなると子どもに

「どうしてできないの?」
「将来、どうなっても知らないから」

というようなことを言って、プレッシャーをかけてしまうのですね。

もちろん、それだけお子さんのことを心配されているのは素晴らしいことでもあります。ただ、子どもの勇気がくじけてしまわないよう、自分の不安をぶつけてしまうことは避けたいですね。

自分を勇気づけ、自信を育てていけば、周りや将来のことも必要以上に気にしないようになります。そして、「大丈夫。必ず良い方向へと進む」と思えて、子どものことも信頼できるようになるのです

自分自身を勇気づける3つの方法

「自分はもともと悲観的で、生まれつき自信がない」
「こんな性格はもうなんともならない」

と、あきらめるのはもったいないです。

これからご紹介する方法をぜひ試していただきたいと思います。

①不合理な自己理想を持たない

アドラー心理学の第一人者であり、精神科医の野田俊作さんは、「自己受容ができない人(自分に自信を持てない人)というのは、非現実的に高い目標を持っている場合が多いようです」と言われています。

非現実的に高い目標とは、

「すべての人に好かれよう。どんな人にも嫌われてはならない」
「決して失敗しないでおこう。私は完璧でなければならない」

というものです。

目標を持ち、その達成に向かって努力をしていくことはとても大切なことです。

しかしあまりにその目標が高すぎると、「こんなはずではない。こんな自分はダメな人間だ」と、できない自分を感情的に責めてしまいます。

「私は完璧でなければならない」という自己理想を持つ人は、仕事の不出来を問題にされたり、育児の至らなさを指摘されたりすると、途端に不安な気持ちになり、反発したり、自分を責めたりしてしまうのですね。

「減点方式」から「加点方式」へ

そこでおすすめしたいのが、自分の評価の方法を、「減点方式」ではなく「加点方式」に切り替えることです

「これもできていない、あれもできていない」とダメ出しを連発するのではなく、

「昨日と比べて少しは成長できた、完璧とはとても言えないけれど、今日も頑張れた」と、できたところに注目することで、自信を得ることができます

ある心理学研究で、参加者に、その日うまくいったこと3つと、その理由を1週間連続で書きだしてもらいました。

うまくいったことは、プロジェクトを無事に成し遂げられたような大きなものに限らず、小さなことでもかまいません。

「おいしい料理がつくれた」
「挨拶をしたら返してくれた」
「感謝の言葉をかけてもらった」など。

すると、幼いころの思い出を書きだした対照群にくらべ、その後6カ月間幸福感が高まった、という結果が出たのです。

1週間それに取り組んだことによって、減点方式だった脳が加点方式へと切り替わり、物事のポジティブな面に注目できるようになって、幸福感が得られたのですね

これはぜひ、お子さんと一緒に取り組んでみましょう

先で紹介した星一郎さんは、夜寝る前に子どもと話をし、「その日にした“いいこと”を3つ見つけさせるということをしてみてください」と勧められています。

それは

「給食を残さずに食べた」
「廊下を走らなかった」
「授業中、友達としゃべらないで先生の話を聞いた」

のような、日常の何でもないことでいいと言われています。

このときに、親から、今日のうまくいったこと3つを挙げることで、子どもも話しやすくなり、親自身の自分への勇気づけにもつながります。

②欠点は使いようによっては長所

欠点が目につくと、どうしても気にしてしまい、それが原因で自分のことを受け入れること、好きになることが難しくなります。

そこで取り組んでみたいのが、「欠点のラベルを、長所のラベルに貼り替える」ことです。

先の野田さんは「欠点というものは実は使いようによっては長所だと、いつも私は思います」と語っています。

例えば、「気が小さい、臆病だ」というのは、「軽率な行動をしない」といえます。

また、「融通が利かない」というのも、「几帳面でしっかりしている」と見ることもできます。

さらに、「私は非常に暗い性格だ。人づき合いが下手だ」ということでも、野田さんは「他人の気持ちをよく推しはかる、ずけずけと無遠慮に他人の中に入っていかない、感受性が強いということでもある」と言い換えられているのです。

このように、欠点と長所とは紙の裏と表のような関係であると知り、欠点ラベルから長所ラベルへの貼り替えをすると、自信を持つことができ、自己を受け入れることにつながっていくのです

アドラーの言葉に

大切なのは、何が与えられているのかではなく、与えられたものをどう使うかである

という言葉があります。

「もっとこんな才能を持っていたらよかったのに」と、ないものねだりをしていても、惨めになってしまいますよね。

与えられたものを長所と見て、その良さを他の人のために最大限活かしていこうと努力することで、自分を好きになっていきます。

③他の人を勇気づける

前々回からご紹介している「勇気づけるための言葉がけ」を実行し、相手を勇気づけ、その人が前向きに課題に立ち向かっていくのを見ると、自分自身が「私は他の人たちの役に立てている」と思えて(貢献感といわれます)、自分の価値を感じることができます

そうして自分の価値を感じることで、「もっと他の人に喜んでもらいたい」という気持ちになり、ますます勇気づけをしていきたくなります。

家族、友人、部下や同僚など、誰から始めていただいてもかまいません。

「この人にまず元気になってもらいたい」という相手に、勇気づけを実行していただければと思います。

 

【参考文献】
「アドラー心理学で『子どものやる気』を引き出す本」(星一郎著 三笠書房)
「劣等感と人間関係 アドラー心理学を語る3」(野田俊作著  創元社)

シリーズ|自己肯定感を育むアドラー心理学の「勇気づけ」