自己肯定感を育むアドラー心理学の「勇気づけ」 #1

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𠮟ってもほめてもダメ?自己肯定感を高める、アドラー心理学の勇気づけ

『嫌われる勇気』がベストセラーとなり、多くの方が耳にするようになったアドラー心理学。

そのアドラー心理学は「勇気の心理学」ともいわれ、健康に前向きに生きていくのに絶対必要な要素といわれるほど、勇気が重要視されています。

勇気がくじかれると、自信を失い、不安や孤独を感じ、挑戦することに消極的になってしまいます。

けれど勇気があれば、積極的にチャレンジをし、仮に失敗しても立ち上がって自己成長していけるのです。

ではどうすれば相手を勇気づけられるのか、正しい勇気づけとはどんなことかについて、ご紹介していきます。

適切な勇気づけは「叱ってはならない、ほめてもいけない」

残念なことに、私たちは相手を勇気づけているつもりで、実は勇気をくじいてしまいがちといわれています(アドラー心理学では、相手の勇気をくじく行為を「勇気くじき」といわれてます)。

勇気づけているつもりで、勇気をくじくことになってしまう行為とは、

  1. 叱る
  2. ほめる

の2つです。

「いや、むしろ叱ることで相手を鼓舞し、ほめることによってやる気にさせることができるんじゃないか」と思われますよね。

なぜ叱ること、ほめることが、勇気くじきになるのでしょうか?

※アドラー心理学でほめるとは、あくまで縦の関係を築く行為、縦の関係から出た言葉を指します。詳しくは後述します。

叱ることが勇気をくじくことになる理由

まず叱ることが勇気くじきになるのは、

叱る=欠点を指摘する

ことだからです。

自分の努力が認められず、欠点ばかりを指摘されたらどう思うでしょうか? 当然、嬉しくはなく、いやな気持ちになりますよね。

自信を失い、「どうせ認められない」だろうと思って、挑戦する気持ちも萎えてしまいます。

高校生を対象にした調査で、「自分はダメな人間だと思うことがある?」の問いに対して、「とてもそう思う」「まあそう思う」と答えた人の割合は、日本人は72.5%でした(平成27年 国立青少年教育振興機構の調査より)。

アメリカ人の割合が45.1%であることから、日本人で「自分をダメな存在」と思い、自己受容できていない人がいかに多いかがわかります

さまざま原因が考えられますが、「叱る教育」が悪影響を与えていることは否めません。

こう言われると、「私は叱られたからこそ成長できた」という方もいると思います。

しかし岸見一郎さん(『嫌われる勇気』の著者)は、

上司に叱られたので伸びたという人は、もともと力があったので、上司から叱られても力を伸ばすことができたにすぎません。

上司に叱られたから伸びたのではなく、上司から〈叱られたにもかかわらず〉力を伸ばせたというのが本当です

(『人生を変える勇気』(中公新書ラクレ)より引用)

と、その人にはもともと叱られてもくじかれないほどの勇気があったから大丈夫だったのであり、決して叱られたから成長できたのではないと言われています。

また、叱ることで相手にとって自分が嫌な人間、敵になってしまえば、ますます勇気づけることが難しくなってしまうのです。

ほめることが勇気をくじくことになる理由

次に、ほめることが勇気くじきになるのはなぜでしょうか?

ほめるというのは、相手の上に立たなければできない行為ですね。

「あなたは良い」と、相手を批評しているのであり、これは「縦の関係」から出た言葉です。

縦の関係、横の関係

アドラー心理学では、対人関係のあり方を「縦の関係」と「横の関係」に分けて教えられています。

縦の関係は、上下関係支配する、されるの関係。いわゆる上から目線です。

横の関係は、親と子ども、上司と部下など立場は違っていても、それでいて対等な関係。目線は同じです。

縦の関係がつくられると、下の人は上の人にほめられることが目的となり、上の人からほめられれば健全な行動をしますが、ほめられなければ健全な行動をしなくなってしまうのです

たとえば、親子で縦の関係が構築されていると、親からほめられれば子どもは勉強しますが、ほめられないと勉強しなくなってしまいます。

勉強とは本来、自己成長のため、人の役に立つためにするものです。

しかし縦の関係では、勉強はほめられるための手段となり、ほめられなければ自分の価値を感じられなくなり、勉強もやめてしまうのですね

適切な勇気づけは「私メッセージ」

「叱ってはならない、ほめてもいけない」となれば、どうすれば相手を勇気づけられるのでしょうか?

自分が勇気づけられることを想像すると、その答えが見えてきます。

みなさんなら、なにか相手のためにしてあげたとき、どう言ってもらえると嬉しいでしょうか?

「おー、偉いね」
「君にしてはよくやってるね」

と言われるとどうでしょう?

何も言われないよりはマシですが、カチンとくるかもしれません。

「なに上から目線で言ってるの?」と反論したくもなりますね。

そうではなく、

たとえば

ありがとう
嬉しい
助かったよ

と言われると、どうでしょうか?

こちらもとても嬉しくなって「またやろう」と思いますし、

うまくいかなかったときに「結果は残念だったけれど、私のためにしてくれたことは嬉しい」と言われれば、「次はもっとがんばろう」という気持ちになりますね。

この「ありがとう」「嬉しい」というのは自分の気持ちを伝える言葉であり、対等な関係、横の関係から出る言葉です。相手を批評する言葉ではありませんね。

これらは「私メッセージ」といわれ、勇気づけになるのです。

反対に、「偉い」「君にしてはよくやった」というのは、こちらが良いか悪いかを判断している「あなたメッセージ」です。

これは縦の関係から出た言葉であり、勇気をくじいてしまうのですね。

よって、勇気づけの基本は「ありがとう」「うれしい」という感謝、喜び、労いの言葉を伝えることなのです

相手が子どもであっても、手助けしてくれることは多いですし、自分が上司であれば、部下におおいに助けてもらっていることもあるでしょう。

それを当たり前と思わず、感謝や喜びを伝えると、勇気づけになり、子どもや部下は自己肯定感を高めていくのですね。

4秒(ひと呼吸)おいて、反応の仕方を変える

私たちはどうしても条件反射的に相手の欠点を見抜き、そこを指摘してしまいがちです。

それでは勇気づけることはとてもできません。

そこで、そんなときはひと呼吸おいて、相手の気持ちに思いを巡らせてみてください

「一生懸命がんばったのに、指摘ばかりされるのは悲しいな」
「がんばりを一切認められないのはつらい」

のような、相手の気持ちを想像すると、自分の態度や言動も変わってくるでしょう。

「結果ばかりに目がいっていたけれど、ここまでのプロセスにも注目しよう」
「指摘する前に、せめてひと言、労いの言葉をかけよう」

という言葉が思い浮かんでくるのではないでしょうか。

ハーバード・ビジネス・レビューの人気ブロガー 、ピーター・ブレグマン氏は、指摘したくなる衝動が起きたとき、4秒(ひと呼吸する時間)を確保すれば、反射的な反応を、もっと適切な反応に変えられる、といわれています。

たった4秒で、長きにわたる関係をよくできるとなれば、ぜひ取り入れてみたくなりますね。

勇気づけの方法を日常で使い、関係の改善、向上に役立てば幸いです。

 

【参考文献】
「勇気づけの方法 アドラー心理学を語る4」(野田俊作著  創元社)
「魔法の4秒」(ピーター・ブレグマン著 山本泉訳 きこ書房)

シリーズ|自己肯定感を育むアドラー心理学の「勇気づけ」