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遺産相続のトラブルを避けるために…これだけはおさえたい5つのポイント

「『相続』は『争族』かと思われるようなケースが、ままあります」

金沢で弁護士を務める二木克明氏は、そう語ります。

今回は、次の質問から、遺産相続で失敗しないためのノウハウを、教えていただきました。

【質問】
親が高齢になり、このままでは認知症になるのではないか、と心配です。

元気なうちに、相続で困らないようにしたいのですが、どんなことに気をつけたらよいでしょうか。

ふだん仲の良かった兄弟姉妹なのに、親の遺産を前にすると、激しい争いを繰り広げる…
親族同士、それまで特別問題のなかった仲なのに、相続になると争いだす…

弁護士をしていると、争いになったケースばかりが持ち込まれるため、その事例には枚挙にいとまがありません。

子孫に美田を残したお父さんの遺族の場合

父は、時価合計1億1000万円の不動産85筆を残し、それ以外には、預貯金50万円を残して死亡しました。
妻と女ばかり3人の子どもが残されました。
遺言書はありませんでした。

この場合の法定相続分は、母親は2分の1、子どもは1人あたり6分の1です。

遺産のほとんどは不動産なのですが、そのうち、宅地は4筆(よんひつ)、居宅2棟(それぞれ宅地の上にあります)、農地10筆、残りは山林でした。
※土地を数える場合は、1筆(いっぴつ)、2筆(にひつ)と数えます。

価値の高いのは中部地方の都市であるA市にある宅地2筆でしたが、郊外にある宅地2筆もそこそこ価値がありました。

お金になりそうなのはその宅地4筆でしたが、数はありましたし、法定相続分で分ける、ということまでは話がついているようでした。

その状況のもと、長女から依頼があり、最終調整をして、遺産分割の話をまとめ、手続をしてほしい、とのことでした。

長女は関東に、次女は関西に、三女は母と一緒にA市に住んでいました。全員結婚歴がありましたが、三女は離婚して、母と2人で暮らしていました。

そこで、遺産目録を作成し、事前に予告して、当日集まってもらいました。不動産の数が多いので、金額に見合うものを分け合えば調整できるだろう、と思っておりました。

当日に次女と三女が言い争いに…

ところが当日、もめにもめてしまいました。
三女が途中でキレて大声を上げ、次女と言い合いになり、やがて罵声を浴びせて、席を立って出て行ってしまったのです。

トラブルの原因は、4筆のうち、2筆はA市にあって価値が高く、残り2筆は評価も低いことで、調整がつかなかったことによります。

母はA市の宅地2筆を取得し、長女と次女は郊外の宅地を1つずつ希望しました。

三女は、母が取得するA市の宅地の一部を取得したい、と言っておりました。それについて、他の相続人からクレームが出たのです。

三女と同居していた母は、もう年老いていたこともあって、三女の言われるとおりにするほかなく、三女は母親を意のままに操っていました。

他の姉妹から見れば、母と共有にして、その後、母の持ち分を自分の物にしてしまおうという魂胆だと疑って、激しい言い合いになってしまったものでした。

その背景には、「長女と次女は配偶者と円満な家庭を築いている一方で、自分は離婚して将来の収入に不安がある」という三女のねたみの心があったように思われました。

どうすれば、もめ事を最小限にできたのか

その後、何回か話し合いを設け、電話でも調整したのですが、数カ月間、調整がつきませんでした。

その後、ようやく話はついたものの、強引な三女の要求を、最後は次女が投げやりな態度で受け入れるなど、後味の悪さが残りました。

このような争いが起こらないように、私がお勧めすることは、遺言書の作成です

遺言書を作成して残しておけば、トラブル回避が可能になります。

では、遺言書について、意外に皆さんがご存じないことについて、説明したいと思います。

意外に知らない遺言書のポイント

誰に、何を相続させるかを決める

遺言書では、どの遺産を長男に、どれを二男に、というように、誰に何を相続させるかを決めることができます。

遺言書で決めたことは、死後効力を発揮しますので、誰がどれを取得するか、ということでもめることはなくなります。

作成した後も変更・撤回ができる

また遺言書は、自分が死亡するまで効力は生じませんから、その間、気が変われば自由に変更や撤回ができます。

長男にこれを渡そうと思ったが、その後の親に対する態度がよくないので変更する、ということもできます。

必ず文書にする

遺言書は、それを作成しておかなければ、いくら口頭で、「この家はお前にやるぞ」と繰り返し言っていても、何の効力も生じません。
文書にすることが必要です。

相続人全員が納得できるものを

さらに、遺言書の内容についても、なるべく相続人全員が納得できるような落ち着きのよいものにすべきです。

さもないと、せっかく作ったとしても、相続人の一部に不満が残るようなことになります。片手落ちの遺言書では、また争いのタネとなりかねないからです。

遺言書の信頼性を高めるには

また、弁護士などを遺言執行者にして保管してもらえば、遺言書の信頼性も高まります。
より確実に遺言書のとおりに執行してもらうことができるでしょう。

 

その他詳しいことは、お気軽に、弁護士等の専門家に一度相談されることをお勧めします。
無料相談も行われております。