1万年堂出版が開催した
読者感想文コンクールの
入賞作品の一部をご紹介します。

金賞

『こころの道』を読んで

大畑真依さん(15歳・石川県) 高校生の部

日々生きていると、幾度も壁にぶつかることがある。そんな時に心の支えとなるのが、昔からの教訓。人生の先輩とも呼べる昔の人の格言などは、現代を生きる私にもどこか通じるものがある。この本には、そんな昔からの教訓がたくさん詰まっていて、とても為になった。

数多くある話の中から、特に目を引いたのは、寸陰を惜しんだガーフィールドのお話。

まず、冒頭の「勉強する時間がない」と、嘆いていないだろうか、という言葉からして、心に突き刺さった。まさに、その通りだったからである。私は、今年高校に入ったばかりなのだが、高校は、中学の時に比べて覚える量が遥かに多く、途方に暮れる毎日を送っていた。帰宅時間も遅いため、家に帰ってから勉強しようと思っても、なかなかする時間がない。そんな頃、この話を読み、「一寸の光陰軽んずべからず」という戒めに心を打たれた。時間がないのではなく、私が、ただ時間を無駄にしていただけなのではないか、と気付いたのである。

さらに、この本を読んでいて思い起こされたのだが、実は私は、このガーフィールドと似たような経験を中学時代にしたことがあった。ガーフィールドは、同じ寮の友人にどうしても数学で勝てなかった。その理由は、数分間の勉強の差だったということなのだが、私の場合は、クラスメートのある人との話。私は、自慢ではないが、勉強が得意で、学年でも上位にいた。しかし、クラスメートのある人には、なかなか勝てなかった。毎日頑張って勉強しているのに、どうして勝てないのだろうと不思議に思っていた。ある日、私は、あることに気付いた。その人は、数分の休み時間の間にも、勉強をしていたのである。私は、それを見た時、「負けた」と思った。その後、その人は、私達の中学校で唯一、難関附属高校に進んだ。その人と私の違いは何だったのか。その答えが、「一寸の光陰軽んずべからず」であろう。数分間を大事にしているかどうかが、分かれ目だったのだと実感した。では、今の自分はどうであろう。数分間を大事にしているのだろうか。答えは、否。私は、これからはもっとわずかな時間も大切にしようと思った。高校生活は、確かに辛いものだけれど、わずかな時間を利用すれば、決して乗り切れないものではない。そう気付かされたのであった。

他にも、この本にはイソップ物語などの有名な童話が書かれており、とても興味深かった。特に興味を引いたのが、アリとキリギリス。「分かっている」と言いながら、確実な未来への備えを怠っている私達に対して、注意を呼びかけている。テスト前につい誘惑に負けてしまい、ギリギリになって慌ててしまうことがある私には、これもまた、心に突き刺さるような話だった。アリのようになりたいか、キリギリスのようになりたいか。私はもちろん、言うまでもなくアリだ。それにしても、童話にこんな奥深い戒めが込められているとは、夢にも思っていなかった。童話だからと言って、馬鹿にするのは間違いだとつくづく感じた。

私は、多くの人にこの本を読んでもらいたいと思った。昔の戒めなんてどうでもいい、というのは大間違い。昔の戒めこそが、現代を生きる私達にとって必要なものなのかもしれない。この本が、人の手を渡り、また、今の時代から次の時代へと渡っていけばいいなと思っている。