1万年堂出版が開催した
読者感想文コンクールの
入賞作品の一部をご紹介します。

銅賞

『子育てハッピーアドバイス』を読んで

西村美和子さん(41歳・熊本県) 一般の部

『子育てハッピーアドバイス』、わが子を一生懸命育てる中、私はこの本を読んだ。

わが子がまだ小さかった頃、私は子育てに悩んだ。「よその子はできるのに、なんでうちの子はできないの」。保育園に通うわが子の成長が「他の子に比べて 遅いのでは」と、何度思ったことだろう。お友達とのトラブルに先生から注意され、「私の育て方がいけないんだ」と、子育てのすべてがわからなくなってい た。

何ページも書かれてある連絡帳、保母さんはアドバイスのつもりでも私にはそれが「余計なお世話」にしか思えなかった。心にグサッときた。傷ついた。周囲のお母さんがよい母親に見えた。

小学校に入学してからは、理解ある先生に恵まれ元気に通い、私もようやく少しはほっとするまでになった。

今、中3の娘と小6の息子に成長し、私も母親歴15年となった。娘はわが家にとって初めての子とあり、一生懸命だった。周囲の人も、先輩お母さんとしていろいろアドバイスしてくれていた。

最近になって「やっとこの子の母親になれた」と思うようになった。それまでの私は周りの子と比べていた。子育ての本をいっぱい買い、マニュアル通りを目 指していた。「いい学校へ通わせたい」、そんな思いもあった。すべてが子供のためでなく、「自分のため、自分さえ理解できればいい」。今思えば、そんな考 えが私にあったからマニュアル通りに育たないわが子にいらだっていたと思う。

息子が1年生の時、カブト虫を学校へ持っていった時に、息子が教室の手前ですべってカブト虫の入れ物を落としてしまった。土がちらばり、私はイライラし て感情を息子にぶつけた。息子は何も言わず片付けていた。今思えば、「息子は傷ついただろうなぁ~」と、カブト虫を見るたびに当時を思い出す。

人は生まれて一歩一歩成長していく。たくさん傷ついて、苦しみや喜びを体験して成長していく。その人らしく、その子らしく。このことに気付いたのが私は 最近だった。「この子は私の子供として生まれて幸せだったのだろうか」「私のような母親に育てられてかわいそう」とさえ思ったこともあった。

すがる思いで私は本を買った。「この子は今のままでいいんだ」「すぅ~」と心が和らいだ。そして「私も私でいいんだ」と思うようになった。

子育てはまさに自分育てだ。合唱コンクールがあった。中3とあって、さすがりっぱな男女のハーモニー。「成長したね」。娘の姿に涙した。受験生でもあ り、いちばん輝く時でもある。好きな男の子もいるみたい。「高校ここに行くけん」と娘。「は~い、行きたいところに行ってね」と私。「合唱コンクール、ビ デオよろしくね」と娘。好きな子の目の前で発表できることに1人ニコニコ笑う姿がかわいく見えた。「この子ったら」。心の中でわが子の成長を喜ぶ私がい た。

介護の仕事で夜勤がある時は、娘が小さなお母さんになり家事をしてくれる。夫と息子は男組。少し頼りなさそう。子育て、子供が大きくなった今、小さかった頃が懐かしく自分自身も必死だった。本を読み、マニュアル通りにならないのが当たり前にも思えた。

「予防接種をしたくないから」と、今からという時期に子供がわざと、おもらしをしたこともあった。保育園の頃で、病院が嫌いな時期だった。そんな娘が小学 校を6年間、無遅刻・無欠席で卒業した時は、親として本当にうれしかった。体も心も強くなり、保育園の頃、よく病気していたのがウソみたいだった。来年 は、高校生、中学生と同時入学だ。楽しみたいと思っている。いい時も、よくない時も、わが子の生命をまるごと受け止めてあげたい。そして、共に喜び、共に 苦しみ、私は私なりの子育てをしていきたい。

望めればのことではあるが、「もう1人、赤ちゃん欲しいな」、そう思えるようになった。私の子育て、それは楽しむことかな。そして、決して100パーセ ントの母親なんてこの世に存在しないことかな。私の子供に生まれてきてくれたふたりに今は、「ありがとうね」でいっぱい。「子育て」という仕事は私の中で 一番輝かせてくれる仕事であり、一番大変な仕事だと思う。そして、一番、感動をくれる仕事だ。人を一人前に育てるのだから大変であり、時には、支えも必要 だと思う。『子育てハッピーアドバイス』を読んだからこそ、私は前向きになれたと思う。「絶対こうしなければいけない」ってことはないのではないだろう か。

誰かが「でけたしこたい」(できた分で十分だよ)と子育ての講演会でアドバイスして下さったことがあった。私もそう思う。毎日、毎日の子育てに「でけたしこたい」と。私の母も言ってたような、「あんたは大変だった」と。
男の子も女の子も、子育ては大きな仕事。だからこそ大きな喜びもある。あと何年後か、わが子が私たち夫婦の手元から離れる時、「この子を育ててよかった」と心から思えるように、これからの子育て、思いっきり楽しみたい。「でけたしこたい」と笑いながら。

わが子へ、「あなたの夢は何?」「得意な科目は何?」「好きな子できてよかったね。お母さん、あなたたちを応援しているよ」「生まれてきてくれて本当にありがとう。大好きだよ」