ドイツの哲学者ヘーゲルは、自分の身に起こることはすべて、自らが生み出したものだと考える大切さを説きました。
不満や怒りは、起きてから対処するよりも、「乱れない心」を身につけた方が自分へのダメージを減らすことができます。
これまでに傷ついた心を癒やし、これからの日々を穏やかに過ごすため、哲学者の知恵に迫りましょう。
※この記事では、来年1月下旬に発売予定の新刊『幸せへの一歩は運のせいにしないことから』(伊藤健太郎 著)を特別にお読みいただけます。
運命は自分がつくる
なぜ男たちの歴史から、高嶺の花に告白して自滅する愚行が消えないのでしょう。
それは人間が、よくいえば楽観的、悪くいえば自信過剰で自分を甘く採点し、身の丈以上の夢を見るからです。
『孫子』の「彼を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」は、恋愛にも通じます。
人間は自惚れ強いもので、社会心理学の研究によると、ほとんどの人が、「災いは他人に、幸せは自分に来る」という幻想(ポジティブ・イリュージョン)を抱いています。
自分が事故や災害に遭ったり、重病にかかったりするようなことは、まずないと信ずる一方、幸福は人一倍やってくると期待しているのです。

また、なにかにつけ自分は「普通の人より上」と自惚れる傾向があり、「平均以上効果」と呼ばれています。
私たちは、「自分は平均より有能かつ正直で、心も広い」と、過大評価しがちなのです。
その結果、成功は自分の技能のおかげ、失敗は運が悪かったからと考えるようになります。
試験や仕事がうまくいった時、多くの人は、それは自分の努力(因)の成果(善因善果)だと考えるでしょう。恵まれた環境(縁)のおかげと感謝することは、少ないのではないでしょうか。
ところが結果が悪かった時は、他人や条件(縁)に責任をなすりつけがちです。
幸福は自分の行為(因)が作ったもので、不幸は環境(縁)が引き起こしたと考えるのは、虫がよすぎます。

ヘーゲルは、古いことわざに「運は自分の作るもの」とあるとおり、自分の身に起こることは全て、自分が生み出したものだと考えることが、極めて大切だと説きました(『小論理学』)。
この自業自得と反対の見方をする人には、不満が噴き上がるだけです。
そして、他人のせいで不当に苦しんでいるという誤った考えのために、多くの間違いを犯し、悪循環になると忠告しています。
「運は自分の作るもの」と聞くと、何の慰めもない見方だと思われるかもしれません。
確かに、怒りに我を忘れている人には、「あなたは何も悪くない。悪いのは全部あの人」と、同意するしかないでしょう。
しかし、それでは一時の気休めにしかならないのではないでしょうか。
「自業自得」の道理には、「あなたは悪くないんだよ」という、聞こえのよい慰めはありません。
しかしヘーゲルによれば、自業自得を認める人には、慰めなど要らないのです。
全て自分に原因があると見る人は、たとえ不幸がやってきても、それは自分の悪いタネまきの結果であり、少しも不当ではないと分かっています。
だから他者を恨む心は起きず、どんな苦難にも、魂の平穏をかき乱されることはないのです。
(本記事は2月下旬発売の新刊『幸せへの一歩は運のせいにしないことから』の第2章(1)の前半を抜粋しました。)
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「因果の道理が分かれば、心が変わります。心が変わってこそ、現実が変わるのです」。
理不尽とも思える“人生のしくみ”をやさしく解き明かし、読者からは「運命は自分で切り開いていくものだと分かった」「ずるい人が得をする世の中で、信念を持って生きられそうです」など、多くの感動の声が寄せられています。
不運は、嘆くものではありません。理解し、乗り越えていくものです。
『幸せへの一歩は運のせいにしないことから』──。
一歩、また一歩と踏み出した人には、輝く未来が広がっているにちがいありません。
※本書は、平成27年に刊行された『運命を切り開く因果の法則』を加筆修正して、再編集いたしました。
