1. 子育て

「人って何で生きてるの?」子どもの問いに隠された2つの理由とは

ねえママ、人ってなんで生きてるの?

子どもからそんな大人びた質問をされたら、あなたはどう答えますか?

実は、「何のために生きているの?」という問いは、小さな子どもでもふと抱くことがあります。

心療内科医の明橋大二先生が著書『こころがほっとするアドバイス』で語られているように、こうした問いが出るのは「愛を失ったとき」と「死に向かい合ったとき」だといいます。

この記事では、明橋先生のやさしい回答とともに、親子で「生きる意味」を考えるヒントになる書籍、『苦しくともなぜ生きる』をご紹介します。

【相談】娘の「なんで生きてるの?」に言葉が詰まった

    1. 「人って何で生きてるの?」子どもの問いに隠された2つの理由とはの画像1

      5歳の娘が、「どうして生きているんだろう。死んじゃえばどうせおしまいなのに」と寝る前につぶやいたことがあります。
      生きることに喜びがないのかと、とてもショックを受けました

      どう答えてやればよかったでしょうか?

【回答】子どもの問いに隠された、2つの大きな理由

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      ドキッとするような質問で、親御さんも不安になると思いますが、私も子どもからこういう相談を受けることは結構あります。
      このように言ってくる理由に、私はふたつあると思っています。
      ひとつは愛を失ったとき、もうひとつは死に向かい合ったときです。

       

子どもは親の愛情をガソリンに生きている

まず、愛を失ったときというのは、たとえばお母さんが忙しくて、さらに妹や弟が生まれて下の子の世話ばかりしている。

以前は結構、優しいときもあったのに、最近のお母さんはイライラしていて、自分に怒ってばかりいる。

もしかしてお母さんから嫌われたんじゃないか、もう愛されていないんじゃないか、と寂しい思いをしたときに、「何のために生きているかわからない」「生きていても仕方がない」などと言ったりするんですよね。「人って何で生きてるの?」子どもの問いに隠された2つの理由とはの画像3子どもは、親の愛情をガソリンとして生きていますから、ガソリンが切れると、生きるのがつらくなります。

ですから、それはいわゆる哲学的な意味というよりも、「もっとお母さん、私のことを見てよね」「もっと私にかまってよ」と、寂しい気持ちをSOSのサインとして出してきているわけです。

だから、子どもから言われたときは、「そんなもん、生きていかないといけないに決まってるでしょ!」などと返すのではなく、「生きてるのがつらいと思ったんだね」「何か寂しいのかな?」「嫌なことがあったのかな?」と、寂しい思いをしていないか、ちょっと見放されているような気持ちがないか、聞いてみることが大切です。

もしそこで「うん」と言ったら、「悪かったね、今までちょっと下の子にばかり忙しかったからね」と言って、「今日は抱っこしようか」と、ぎゅーっとしたり、一緒に遊んだりすることです。

すると元気で明るい笑顔に戻って、落ち着いていくことがあるんですよね。
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大人になっても、生きている意味がわからないという人の中には、やはり子ども時代に、親が自分の存在を喜んでくれなかった、むしろ逆に、「おまえなんか産まなければよかった」と言われ、虐待を受けて育った人がいます。

そういう人も、自分が生まれてきた意味がわからない、と言ったりします。だけど、そこで求めているのは、一言でいうと、人と人との心のつながりや、愛情なんです。

それが、ひとつ目の愛を失ったときです。

必ず死ぬのに、生きるのは何のため?

もうひとつは、死に向かい合ったとき。たとえば、おじいちゃん、おばあちゃんが亡くなったときなどです。

そういうことは、子どもにとっては非常にショックなわけです。

今まで可愛がってくれたおじいちゃんが白い骨になってしまう。焼き場で焼かれていく。もう写真の中にしかいないとなったとき、「どこに行ったんだろう?」「おじいちゃんの人生って、何だったんだろう?」という思いが出てくるんですよね。

子どもは、小さい頃は、まだ「死」についてピンと来ていないですが、小学校に上がるぐらいから、「死」を理解するようになってきます。

まずは、自分の親がいつかは死ななければならないことがわかって、すごく苦しんだりします。

私も思い出すと、小学1年生の頃、母もいつか死んじゃうんだと思って、毎晩毎晩、泣いていたことがありましたね。

それが、3、4年生ぐらいになってくると、今度は自分がいつか死ななければならないことに気づいて、毎晩死ぬことを想像し、恐れおののいていました。

こういうことを、大きくなるまで考えない子もいますが、考える子は、小学生ぐらいの時期に考え始めます

そうなると、「生きていても必ず死ななきゃならない。どれだけがんばって、つらいことを乗り越えて生きたとしても、結局最後は死ぬだけじゃないか。そんな人生、何のために生きるんだろう」と考えるようになります。「人って何で生きてるの?」子どもの問いに隠された2つの理由とはの画像5

このお子さんは、5歳でそういうことを考えているわけですから、大人びているというか、頭のいいお子さんだなと思います。

親御さん自身がそのことを考えたことがあるなら、そんなにびっくりしないと思います。しかし、親に全然そういう経験がなく、子どもが突然言い出したとなると、この子は変なんじゃないか、おかしくなったんじゃないか、と思ったりするわけです。

だけど、私は決してそうではなく、むしろ深く人生を考える真面目なお子さんだと思うんですよね。

だからこういうことを質問してきても、決しておかしいことじゃないし、ある意味、当然のことだと思います。「人って何で生きてるの?」子どもの問いに隠された2つの理由とはの画像6

この5歳の娘さんは、親子関係でみると、コミュニケーションもとれていますし、そんなに問題はないと思います。

だとすると、死ぬということが言葉に出ていますから、どちらかというと、愛を失ったときではなくて、死を考えたときが原因なんだと思います。

生きている者は、いずれ死ぬべき存在なんだと知ったときに、出てきた疑問じゃないかなと思うんです。

人生を考える機会にもなるので、お子さんからいろいろと話を聞いてみて、対話のきっかけにしたらいいと思います。

すぐに答えが出ないかもしれませんが、まずは、「そういうことを考えるのはとても大切なことなんだよ」「すごくいいところに気がついたね」「これからまた一緒に勉強していこうね」と、そんなふうに声をかけたらいいんじゃないかなと思いますね。

何のために生きるかを考えることは、人間としてすごく大事なことだと思います。
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※イラストは、『子育てハッピーアドバイス』シリーズより引用

【編集部より】親子で考えたい「生きる意味」

子どもからの「どうして生きているの?」という問いに、簡単には答えが出せないかもしれません。

ただ言えることは、人は幸せになるために生きているということ。

親子で一緒に考え、語り合うことは、きっと大切な時間になるのではないでしょうか。

一方で、文豪や哲学者たちも注目してきた名著『歎異抄』の思想を通して、「生きる意味」に向き合うことができる新刊が『苦しくともなぜ生きる』(高森顕徹著)です。

親子での対話のきっかけに、ぜひ手に取ってみてください✨

試し読みはこちら

※左から右へページをめくるようにお読みください。

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