日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #206

  1. 人生

豊臣秀吉は、どんな仕事にも、イヤな顔をしなかった ~秀吉の成功の秘訣

3月21日は、3、2、1のカウントダウンに見立てて、「はじめようの日」なのだそうです。新たなことにチャレンジするのは、ワクワクしますね。

一方、日々の生活では、やりたいことができる時間は少なくて、誰かに頼まれて、やらなければならない仕事のほうが多いように感じます。それがあまり気の進まない仕事だったら、どうでしょうか。私なら、心の中でブツブツ文句を言いながら、やってしまうと思います。

豊臣秀吉が、織田信長の家臣だった頃、地味で、面倒で、誰もやりたがらない薪奉行(まきぶぎょう)を命じられたことがあったそうです。
その時、秀吉はどうしたのでしょうか?

木村耕一さんにお聞きしました。

秀吉の仕事への向き合い方

織田信長が、まだ尾張(おわり。現在の愛知県西部)の一大名だった時のことです。

家来になって日の浅い秀吉に、

この城の薪や炭の使用については、1年ほど、おまえに任せる。やりたいようにやってみろ」

と薪奉行を命じました。

──薪奉行は、武士としては、あまり気が進まない仕事のように思いますが……。

そうですよね。
ところが秀吉は、さっそく翌日から仕事にかかっています。

──どんなふうに仕事をしたのでしょうか。

まず、自ら火をたいてみて、必要な薪の量の目安をつけます。

そして多くの囲炉裏を調査し、ムダ遣いを減らして効率よく火をたくように注意して回りました。

──秀吉の仕事への向き合い方は、勉強になりますね。

するとどうでしょう。

1年間の薪や炭の経費が、従来の3分の1以下で済んだのでした。

──すぐに成果を出して、さすがは秀吉です。

これには、信長も大変機嫌がよく、

「おまえに薪奉行を命じたのは、足の速い馬に、重い荷車を引かせたようなものだったな。優れた人材を、こんな仕事に使ってしまったことよ」

と笑ったそうです。

──気の進まない仕事や、自分の才能よりも低く思える役割を与えられると、不平、不満の心がわいてきてしまいますが……。

ですが、考えてみてください。

「つまらない」「なんでこんなことを」と、心の中でブツブツ言いながら仕事をしていても、成果が上がるはずがありませんよね。

まして、それが顔や態度に出るようになると、職場の和を乱してしまいます。上司からも信頼されなくなってしまいます。

秀吉は、どんな役目を命じられても、夜昼の区別なく、全力投球したからこそ、信長に抜擢(ばってき)され、歴史上、例を見ないほどの出世を成し遂げたのだと思います。

──どんなことでも、「はい」と喜んで引き受けたら、自分も相手も気持ちがいいですね。

(『新装版 思いやりのこころ』木村耕一編著より)

天下人・秀吉に学ぶ

木村耕一さん、ありがとうございました。
秀吉というと、天下人になって、自分の思いどおりに、ぜいたくで華やかな人生を送ったように思いますが、そこに昇り詰めるまでは、どんなことでもイヤな顔をせず、やるべきことを一生懸命にやっていたんだなと知らされました。
天下人・秀吉に学ぶことは多いですね。私も心がけたいと思います。

今回、ご紹介した木村耕一編著『新装版 思いやりのこころ』は、歴史上の人物の「相手を思いやる心」が表れているエピソードや、おもてなしの心が光る『徒然草』、公募で寄せられた24編の体験談を掲載しています。
詳しくは、こちらからどうぞ。

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漫画動画ができました

今回ご紹介した秀吉のエピソードが漫画動画になりました。
こちらから、ごらんいただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=jdrjCiyorr8