日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #178

  1. 人生

【イソップ物語】ワシとカタツムリ〜知らないことを、「知らない」と言うのは恥ではない

大相撲夏場所は、横綱・照ノ富士(てるのふじ)関が、復活優勝を果たしました。おめでとうございます!
優勝インタビューで「本当に優勝したんだなと」と笑顔を見せた照ノ富士関。
地位が上がると横柄になる人もありますが、「次の場所に向けて、もう1回自分の体と向き合っていきたい」などと語る、照ノ富士関の謙虚な応対はとても素敵でした。

「イソップ物語」には、ワシの謙虚さが描かれた一話がありました。謙虚な心は、世界を広げるようです。
木村耕一さんの意訳でどうぞ。

ワシとカタツムリ

大空を悠々と旋回していたワシが、突然、急降下しました。
獲物を見つけたのです。
捕らえたのは、カタツムリでした。

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腹が減っていたワシは、うれしそうに、
鋭いくちばしでカタツムリの殻を突きます。

ガシッ! ガシッ! ガシッ!

ところが、突いても、突いても、殻が割れません。
この国のカタツムリの殻は、岩のように硬かったのです。

すると、横からカラスが現れて言いました。
「殻の割り方を、ご存じないのでしょうか」

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ワシは、鳥の中では、大空の王者といわれています。
ふだんなら、カラスの言葉などに耳を傾けないでしょう。
しかし、殻の割り方が分からない以上、威張ってみても、腹はふくれません。

このワシは、とても謙虚な心を持っていました。

そのとおりだ。分からなくて、困っているところだ。おまえは、殻の割り方を知っているのか?」

「はい、とても簡単な方法を知っています。私にもカタツムリを分けてくださるならば、教えてさしあげますが……」

「いいとも。おまえの言うとおりにしよう」

カラスは喜んで、
「では、カタツムリを、高い空から落としてください。たちまち殻は砕けるでしょう」
と教えました。

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ワシは、カラスの言うとおりに実行し、空腹を満たすことができたのです。

それだけではありません。

次からは、この技を自分のものとして、工夫していったので、今まで以上に多くの獲物を食べることができるようになったのです。

自分の知らないことを、「知らない」と言うのは、恥ずかしいことではないのです。

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(『月刊なぜ生きる』 令和3年7月号「イソップ物語 人生にこんな場面ありませんか?」 文 木村耕一 絵 黒澤葵 より)

「知らない」と言うのは、恥ずかしいことではない

木村耕一さん、ありがとうございました。

「『知らない』と言うと、相手に馬鹿にされるのではないか」などと気にして、知っているフリをすると、結局、自分が損をするようです。

「知らない」ことは、素直に聞くのがいいのですね。