日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #166

  1. 人生

【清少納言『枕草子』】心きらめく日本の四季「冬は、○○」

この冬は、寒い日が多かったように思います。駅のホームで電車を待っている時に吹いてくる風は、特に冷たく感じました。
しかし季節はだんだんと、春に近づいているようです。

さて、『枕草子』の書き出しは「春はあけぼの」ですが、冬は何でしょうか? 木村耕一さんの意訳でどうぞ。

「冬」は、早朝。

【意訳】

「冬」は、早朝。

ぴーんと張り詰めた寒さがいい。
雪が降った日は、いうまでもありません。霜が降りた日も、そうでなくても、とにかく厳しい寒さの中、朝早くから大急ぎで火をおこし、真っ赤に燃えた炭を、あちこちの部屋へ持っていくのは、いかにも冬らしくて、いいですね。

でも、昼になって寒さが緩んでくると、パチパチ音を立てるくらい真っ赤だった炭が、白い灰をかぶっています。そんな火鉢を見ると、「ああ、変わり果てた姿だこと……」と、ちょっと儚(はかな)い思いがわいてきます。

【原文】

冬はつとめて。雪のふりたるはいうべきにあらず。霜のいとしろきも、またさらでも、いと寒きに、火などいそぎおこして、炭もてわたるもいとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火もしろき灰がちになりて、わろし。(第一段)

【清少納言『枕草子』】心きらめく日本の四季「冬は、○○」の画像1

(『こころきらきら枕草子』より 木村耕一 著 イラスト 黒澤葵)

今しか楽しめないトキメキを

木村耕一さん、ありがとうございました。

「冬の早朝」は私は苦手ですが、清少納言は、厳しい寒さを「冬らしい」と楽しんでいて、ステキだなと思います。

あちこちの部屋へ、炭火を運ぶ女房たちの弾んだ声が、聞こえてくるようですね。

しかし時間が経つと、真っ赤な火が、白い灰になってしまう……。
ここに注目しているのが、清少納言らしい感性だと思います。

赤くて美しい炭火も、興ざめするような姿に変わってしまうからこそ、「今の一瞬を大切にしよう」という心が起きてくるのですね。

寒い朝はなかなか起きたくなくてボーッと過ごしてしまいがちですが、「冬は早朝」を思い出して、今しか楽しめないトキメキを大切にしたいと思います。

意訳とイラストでよくわかる!

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【清少納言『枕草子』】心きらめく日本の四季「冬は、○○」の画像2

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