日本人なら知っておきたい 意訳で楽しむ古典シリーズ #125

  1. 人生

ピンチを切り抜ける秘訣とは? 〜『竜馬がゆく』高杉晋作、『三国志』馬超より

壁にぶつかった時、どう乗り越える?

最近、世の中の変化が激しいなと感じます。
変化してよくなればいいのですが、状況が変わって壁にぶつかることもあります。
壁にぶつかると「困った」「どうしよう」とあたふたしてしまい、なかなか前に進みません。
壁にぶつかった時、先達はどう乗り越えたのでしょうか?
木村耕一さんにお聞きしました。

「困った」「もうダメだ」は、決して言わない

──人生には、壁にぶつかることがあります。その時、どんな心構えを持てば、乗り越えられるのでしょうか?

はい、生きていると、大なり小なり、壁にぶつかることがあると思います。
そんな時、先達はどうしたのか、歴史上の人物に学んでみたいと思います。

まず、『竜馬(りょうま)がゆく』に登場する高杉晋作(たかすぎしんさく)が、実に爽快な言葉を残していますよ。

高杉は、「長州の天才児」「雲に乗った孫悟空」といわれるほど、何度も、絶体絶命のピンチを切り抜けました。その秘訣(ひけつ)は、何だったのでしょうか。

彼は、
「困った、ということを金輪際いわない」
と答えています。

──え!? 私は「困った」を連発していました!

どんなことでも、熟慮してから行動し、後で困らないようにしておきます。
それでも窮地に陥ったならば、後ろ向きな発言をしないようにします。

「必ず乗り越えてみせる」と、前向きな気持ちを持ち続ければ、意外な方向に活路が見えてくるのです。

この現象を、古来、「窮(きゅう)すれば通(つう)ず」といわれてきました。

──「窮すれば通ず」とは、昔からの生きる知恵なんですね。

そうですね。
反対に、「困った」「もうダメだ」などと、後ろ向きな言葉や愚痴(ぐち)を言ったらどうなるのでしょうか。
高杉は断言しています。

「そうなれば窮地が死地になる。活路が見出されなくなる」
「死地におちいればそれでおしまいだ。だからおれは困ったの一言は吐かない」
(司馬遼太郎著『竜馬がゆく』)

──どこまでも、前向きに……。かっこいいですね。

また、吉川英治(よしかわえいじ)の『三国志』にも、こういう場面がありますよ。

西涼(せいりょう)の猛将・馬超(ばちょう)が、魏(ぎ)の曹操(そうそう)軍に包囲され、殲滅(せんめつ)の危機に瀕していました。
敵の矢が無数に降り注ぎ、味方は、次々に倒れていきます。
それでも馬超は、猛牛のように奮戦していました。

しかし、敵の数が圧倒的に多いのです。
さすがの馬超も全身に傷を負い、限界を感じ始めていました。

「ああ、もうダメだ」という思いが、一瞬、脳裏をかすめますが、すぐに振り払いました。
「いかん! あきらめたら最後だ」
自分を叱咤(しった)し、再び立ち上がったのです。

すると間もなく、思いも寄らぬ方角から援軍が現れるではありませんか。間一髪で、一命を取り留めたのでした。

吉川英治は、
「(もう駄目)それをふと、自分の心に出した時が、人生の難関は、いつもそこが最後となる」
と書いています。

もし馬超が、後ろ向きな思いに負けていたら、後に、劉玄徳(りゅうげんとく)に従い、蜀(しょく)の五虎大将軍の一人として活躍することもありませんでした。

絶体絶命のピンチや窮地を、チャンスに転じるか、死地にするかは、心の持ち方ひとつにかかっている、といえますね。

(『新装版 こころの道 〜ものの見方、考え方ひとつで、新しい風が吹いてくる』木村耕一編著より)

ピンチをチャンスに転じる

木村耕一さん、ありがとうございました。
ピンチをチャンスに転じるのは「心の持ち方ひとつ」とお聞きし、元気が出てきます。
しかも、先達の乗り越えた「壁」は、私の「壁」よりも、はるかに高かったです!
そんな「壁」を乗り越えてきた人たちがいた、と知ると、生きる勇気がわいてきました。

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