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参加するだけで積極的に!子どもの「考える力」の伸ばし方|セミナーレポート

11月7日、NPO法人子ども未来研究所によって、子どもの自立を学ぶためのイベント「ワンデイグロース」が開催されました。今回の記事では、こちらのイベントレポートをお届けします。

『勇気の育て方』の著者、柴崎かずたか先生が代表を務めるこちらの団体では、30年以上の間、自立を学ぶための野外キャンプ「グロースセミナー」を行っていました。しかし、コロナウイルス感染拡大の影響によってこの2年間、初めて開催を中止しています。その代わりとなる1日限定のイベントが「ワンデイグロース」です。

子どもの自立とは?どんなことをするの?なんで野外?「ワンデイグロース」のプログラムで、参加したお子さんたちがどのように変わっていったのかを見ていきましょう!


グロースセミナーとは?

「ワンデイグロース」の1日をご紹介する前に、今まで開催されていた「グロースセミナー」について簡単にご説明します。

「グロースセミナー」は4泊5日のキャンプがメインとなっている、自立のための小中学生向けセミナーです。親元を離れて北海道十勝の士幌(しほろ)高原に行き、山登りやマウンテンバイク、テント張り、カレー作りなどを体験します。プログラム自体は通常のキャンプと同じですが、それぞれのプログラムをやるかやらないかは子どもたちの自由。他にやりたいことがあれば自分で選ぶこともできます。

「ワンデイグロース」スタート!

当日は、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターが会場となりました。男の子が8人、女の子が8人で、計16人の参加です。年齢は小学1年生から中学1年生までと幅広く、初めてグロースセミナーを体験する子ばかりでした。

親御さんにくっついて不安そうにしている子や、なんだか嫌そうな顔をしている子も……初めての場所に、みんな緊張しているようです。

「自立」って何だろう?

参加するだけで積極的に!子どもの「考える力」の伸ばし方|セミナーレポートの画像1
お子さんは前列、親御さんは後列に分かれて座り、柴崎先生から「自立」についてのお話がありました。

「自分で決めて、自分で行動して、欲しい結果を自ら創り出す。そして、どんな結果でも自分が創り出した結果だと認める。これが僕の考える「自立」です。自分の成長のために、今日はこのセミナーに取り組んでみてください」

グロースセミナー、そして今回のワンデイグロースでも、「自分で決めて、行動して、結果を創り出す」という自立のプロセスを繰り返し練習します。自分で考えて行動できることは社会で生活する上でとても大切なことです。子どもが自立し、親御さんから離れても生きていけるようになるということが子育ての1つのゴールなのかもしれません。

自己紹介で好きな形を描いてみよう

自己紹介 お絵描き
最初のプログラムは自己紹介です。みんなの前に出て、自分の名前と「好きな色と形」を描いた絵を発表します。「自由に」と言われ、何を描けばいいのか戸惑っている子もいました。ただ白い紙とクレヨンを渡すだけでも、自分について考える時間が生まれたようです。これなら家庭でも実践できそうですよね!

キラキラしたものが好きだから宝石を描いた子、月曜日が好きだから漢字の「月」を描いた子、恥ずかしいから柴崎先生にだけこっそり見せていた子、16人それぞれの個性が表れていました。

グループ決めって難しい!

自己紹介が終わると最初の壁が待っています。外遊びのグループ決めです。

グループ決めの条件

  • 自己紹介を聞いて、自分が一緒に組みたい子を決めること
  • 学年や男女がなるべくバラバラになること
  • 5人、5人、6人の3グループに分かれること

実際にグループを決める前に、どのくらいの時間でグループ決めを行うかを話し合います。時間を決め、「自分の時間」を使っているのを意識することも自立にとって大切なことの1つです。

意見はあがるのですがどうやって決めれば良いのかわからず、なかなか話がまとまりません。親御さんたちは見守ることしかできないので心配そうです。柴崎先生やスタッフの方々は葛藤する子どもたちに感心しながら、笑顔で見守っています。時間を決めるだけでも30分はかかりました。

全員が納得するグループを作るのはとても大変です。意見がまとまらず、時間切れになってしまいました。しかし、大切なことは時間内にグループを作ることではなく、自分の結果を認めることです。話し合いは一度中断し、先生も交えて、どうして上手くいかなかったのか、反対に上手くいったことは何かを振り返ります。できなかったことだけでなく、できたことも含めてありのまま受け止めてあげることで子どもが次の1歩を踏み出せるようになります。

時間を決める所からやり直し、ようやくグループが決まった時には1時間半が経っていました。

「このグループは誰が決めたの?」
「じぶーん!」

「誰が決めたの?」グロースでは、この問いかけが何度も繰り返されます。最初はどう答えればわからなかった子どもたちも、少しずつ自分で決めたことを意識し始めます。グループを決めた時には、大きな声で強く「じぶん!」と返事をしていました。グロースでは、結果を創り出した自分を認める時、みんなで拍手をします。拍手をする子どもたちの嬉しそうな表情が印象的でした。

外遊びで身に付く3つの力

ここからは親子で分かれ、保護者の方は柴崎先生の講演会、子どもたちはインストラクターさんと外遊びを行いました。全力で身体を動かした子どもたちは、遊びを通して初対面とは思えないほど仲良くなっていました。

どのような遊びをしていたのか、工夫がいっぱいのネイチャーゲームについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。


国立青少年教育振興機構の研究では、子どもの時に外遊びやキャンプなどの自然体験を多く経験することで次の3つの力が身に付くという結果が出ています。
参考:「青少年の体験活動等に関する意識調査(令和元年度調査)」

①自立的行動習慣

グロースの活動とも共通する「自分で考え、行動する力」です。全部で12個の指標が〈自律性〉〈積極性〉〈協調性〉の3つに分けられていますが、そのどれもが自然体験によって高まることがわかっています。

②自己肯定感

「自分をありのまま受け入れ、好きになる力」です。自信を持って物事に挑戦できるようになり、他人のことも大切に想うことができるようになります。

③探求力

新しいことに興味を持ったり、自分から学ぼうとする力です。小学校入学前からたくさん外で遊んでいた子ほど、色々なことに感心を持ち、調べたり考えたりする傾向が強いと言われています。

2回目の話し合い、積極的になった子どもたち

話し合い2回目
お昼休憩を挟み、2回目の話し合いの時間です。テーマは「夢や将来なりたい自分を叶えるために大事にしたい3つのこと」。このプログラムは4泊5日の「グロースセミナー」でも、実際に行われています。諦めない、努力する、本気で向き合うなどなど、本当にたくさんの意見が挙がりました。もちろん、このテーマに答えはありません。柴崎先生は最後に「この話し合いで自分は何ができた?」「自分はどう思った?」と問いかけるだけです。

ここで驚いたのは、子どもたちの成長です。グループ決めでは静かに見ていただけの子もそっと手を挙げてしっかり参加し、逆にたくさん発言していた子たちは「○○ちゃんが手挙げてるよ!」「○○君はどう思う?」などと声をかけて、自分だけでなく他の子の意見に注目するようになっていました。親御さんの中でも自分の子の成長を感じることができたのか、この話し合いは時に頷きながら笑顔で見守っている人が増えています。

修了式で1日頑張った自分を認める

最後は子どもたち1人ずつに、お手製の修了証書が渡されました。いつもよりたくさん考え、たくさん決め、結果を創り出した自分自身を認めてあげる時間です。自己紹介の時にみんなの前に立った時とはなんだか違う表情です。恥ずかしいようなでも誇らしいような表情で、修了証書を受け取っていました。

参加された親御さんからは、「家とはちがう一面が見えた」「子どもが積極的になれていて嬉しかった」「柴崎先生の子どもたちへの接し方が勉強になった」「子どもを”見守る”ということを改めて意識した」と、様々な意見をお聞きしました。たった1日だけでも、物事の考え方や取り組み方を変える貴重な経験になったのではないでしょうか。

まとめ

子どもたちが「ワンデイグロース」で体験した話し合いの時間や自然体験は、4泊5日の「グロースセミナー」に比べればほんのわずかなものです。しかし、それだけでも参加する前とは変化がありました。「なんで?」「どうして?」「誰が決めたの?」柴崎先生からのたくさんの問いかけが子どもを成長させたのだと思います。

中止が続いていた「グロースセミナー」ですが、今のところ2022年は開催する予定です!今回参加されていたお子さんからは、早くキャンプに行きたいという声がたくさんあがっていました。
来年の夏に向けてもっとグロースを知りたい、子どもが変わる所を見てみたいという方は、柴崎先生の著書『勇気の育て方』をぜひチェックしてみてください。「グロースセミナー」のエピソードはもちろん、家庭での声かけや、親子の関わり方についても詳しく解説されています。